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骨太の方針『1万人移住で地方創生』とその人材

1万人移住で地方創生

一昨日出された政府の「骨太の方針」の原案。
経済成長を基軸とし、様々な分野で新たな方針が出されていますが、特に目を引いたのが、『1万人移住で地方創生』という項目です。
1万人移住で地方創生、骨太原案(共同通信)

方針には
地域経済活性化支援機構の人材リストを早期に1万人規模へ拡充しつつ、地銀等の人材仲介機能を強化し、地域活性化起業人制度等と連携するようで、
地方の中小企業への就業を促進させるため、1万人の移住人材リストを作り
「新たな地方創生を展開し、東京一極集中を是正する」と明記されています。

昨年末に政府が、大手銀行の人材を地方の中小企業に派遣するニュースが流れましたが、その積極的な拡大策といった感じかもしれません。
大手銀人材を地方へ 中小企業支援―政府(jiji.com)
当時は大手銀行の人材を地方の中小企業に派遣し、経営強化につなげる制度を設けることで新型コロナウイルスの感染拡大で、長期化する中小企業の苦境に対し、存続に向けての業態転換や事業再構築に支援するということでしたが、今回の骨太方針では、大手銀行だけでなく地銀等の人材仲介機能を強化とあり、いずれにしても金融関係の人材の派遣の拡大という流れのようです。
派遣の主体は、地域経済活性化支援機構(REVIC)が行うようです。

ご存知のように、メガバンク大手銀行の多くは、数年前より低金利やフィンテックの台頭により、従来の店舗窓口型ビジネスの事業転換を余儀なくされており、
店舗の閉鎖や大型の人員の整理など次々に改革に手を付けています。
例えば三菱UFJでは23年度までに窓口の無い簡素化した店舗を過半数に。
三井住友でし22年度までに店舗の7割を資産運用関連業に。
みずほでも同じく首都圏関西圏の260店舗を個人業務に特化した店舗に変えようと動いています。

そして再編などで話題の地銀でも、ついに早期希望退職のニュースが流れました。
第二地銀の中京銀行、希望退職を募集…金融庁「近年例がない」(読売オンライン)
当サイトでは、メガバンクや地銀の人材に関して、いくつか言及してきました。
メガバンクの課題」では、年功序列型人事、評価制度から成果をメインに評価する制度への変更に関して。
金融業界と理系人材」では、これからの銀行に求められる人材について。
地銀再編 役割と人材」では、再編を余儀なくされる地銀にこれから必要な人材にについて。
ビジネスの範囲の拡大と銀行員のイメージ」では、新たなビジネスに向けて従来の銀行員のイメージを変えられるかどうかについて。

このようにメガバンク、地銀などの金融機関では、事業再構築、転換の為に必要な人材の獲得、強化と、従来型の銀行業務に携わる余剰人員の整理が課題となっているのです。

その状況にあって、地方の中小企業への就業を促進させるため、1万人の移住人材リスト作成と言う話が出ています。

1万人の移住人材とは

地方で苦境に立つ中小企業の経営支援、事業再生のノウハウを持ち、地方移住を希望している人材ということらしいですが、果たしてそんな人材がたくさんいるのでしょうか?

確かに、銀行や地銀など金融人材は、融資など中小企業の資金的な面でのアドバイザーとしての実績がある方は多いことでしょう。ただ、会社の財務という事になれば、税理士、会計士の方が精通していますし、人事労務面では社労士、経営課題においては中小企業診断士がすでに活動しています。
従って、金融知識云々ではなく、事業再生、業態転換への推進力となる人材ということになりますが、自ら中小企業に入り一緒になって成長させていく気概と原動力があり、中小企業の事業マネジメント、メンバーマネジメントが出来なくてはなりません。
新規事業の起案はもちろん、新規の外部との交渉や営業、そして沈滞した組織風土を活性化させることのできる人材。
地方の中小企業が求めているのは、専門家としてアドバイスし、時期か来たら帰ってしまうような派遣ではなく、自らリーダーとして中に入り、動いてくれるそのような人材なのです。

このサイト「大手企業からの転職者に中小企業経営者が求めるもの」でも触れましたが、大手からの人材には多くの課題解決力を求めています。
また、現実的には大手からの転職者に対し、「使えない」「馴染まない」と言う声が多いのも事実です。
大手企業から中小企業への転職者がつまずく些細なこと」でも書きましたが、部門全体を見る力や汎用性の高い企業内IT活用の経験値を求められています。

政府発表の骨太の方針。
1万人移住で地方創生の実現に向けては、その1万人の人材の実務知識や経験値はもちろかのこと、自ら事業を引っ張るノウハウと、都銀、地銀にいたプライドを捨て、地方の中小企業と共に協力していくと言う「意識」「姿勢」が一番重要だと思います。