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みずほFGのシステム障害に見る大企業病の弊害

大企業病がもたらした障害

みずほフィナンシャルグループ(FG)が15日、2021年2~3月にかけて発生したシステム障害について第三者委員会の調査報告書を受領したと発表し、主なニュースで一斉に流れました。
参照: ■みずほシステム障害は人為的要因 第三者委が調査報告書(Yhaoo news) 
みずほ障害「運用に弱さ」 第三者委が調査報告書を公表(Sankei biz)
「過去指摘された問題が依然存続」、みずほ銀行システム障害で第三者委員会が報告書(日経クロステック)
ヤフーの共同通信のニュースでは「システム自体に欠陥はなく、運用する人為的側面に要因があった」とあり、
産経の記事では「有事に自分の責任問題となるリスクを避けるため、積極的に声を上げることをためらいがちな企業風土も問題視」。
日経の記事では「危機事象に対応する組織力の弱さ」「ITシステム統制力の弱さ」「顧客目線の弱さ」の3点を挙げ、さらにその根底に企業風土の問題がある
と言及しています。
いずれもシステム云々ではなく、「人」「組織」「風土」が一番の要因であると結論付けているのが特長です。
今回のような大企業の障害、事故、また不祥事などは、そこで働く人や企業風土がもたらすものが多いです。
近年で有名なのは『日本郵政 かんぽ生命 不適切販売問題』などは、まさに中の人、風土がもたらした事件です。当サイトの「日本郵政グループの1万人リストラ 対象はどの層なのか」の記事にも多くの反響を頂きました。

そして、それらはいわゆる企業が大きくなって起こる『大企業病』が原因なのも共通しています。

今回のみずほ銀行の障害について第三者委員会の報告書の要旨(読売新聞より)では次のポイントがあげられています。

●他部署からの情報を把握する「横の連携」、経営陣への報告など「縦の連携」が機能していなかったこと。
これに関しては「中高年の再就職を難しくしている大企業病 Part 2」で述べたように、縦割りの組織とその配下にあるさらに細分化された専門のユニットで長年働くと、自分の担当する仕事にのみ目が行きがちで、事業全体を客観的に見るという習慣がつかなくなること。そして、他の部門の人間が関与することを嫌い、組織全体の利益・効率性を無視して自分たちの都合ばかりを優先するというもの、いわゆる「割拠主義」と呼ばれる現象がおきます。
みずほ銀行のシステム障害について頭取は事故発生後のニュースで知ったと言います。
ATMの障害はシステム部門の話で、我関せずの部門の人、内々で処理しようと報告義務を怠った人が多かったのではないでしょうか。

過去数回にわたり、通帳・カードの取り込み障害で顧客に迷惑を賭けたにもかかわらず、顧客目線での積極的行動を評価されてこなかった。顔の見えないリテールの顧客より、資産運用やローンなどの収益の大きい取引客への行動に偏っていたこと。
これに関しても同様に大企業病で起きうる事象です。
縦割り組織での細分化された業務、銀行のようなルーチン業務が多い企業では、仕事を通して事業全体のこと、業績、マーケット、顧客、サービス、今後など全体を客観的に見るということが欠けてきます。
百貨店や商業施設が、ウィンドウショッピングだけの買い物をしない客を大事にせず、客足が落ちたり、ネット会員ビジネスなどで、無料会員を無碍に扱い、結果的に会員が減っていくビジネスにも似ています。

●システム稼働後、IT人材の人員減少、異動によりシステム全体を把握できるスキルある人材が減少していたこと。
これも「大企業あるある」かもしれません。ソフトウェア子会社や外部を使い、いわゆる「作って終わり」的な考えでシステムを見ています。予算もシステム構築に多額を投資し、運用・保守・メンテにそれほどかけない企業は多いのです。特に総合職、営業職中心で成長してきた会社の多くが、システム部門などの専門性の高い技術人材に対する考え方や、IT、DXなどへの投資に対する考え方が弱く、技術者の意見を経営に上手く反映させないところが多いのです。結果的に今回のようなシステム障害や、新たな技術を取り入れることが後手後手に回ってしまっています。

●有事に「失点を恐れて積極的・自発的な行動をとらない傾向を促進する企業風土が根底にあるとした。
これに関しては、今回の障害の全てを物語っているのかもしれません。
強い問題意識を持つ人材、経営の提言を出来る人材を良しとせず、減点主義、事なかれ主義が無事平穏と考える社員ばかりに育ててきた企業の責任は大きいです。

課題の解決は経営層の意識と本気度

みずほフィナンシャルグループは今回の障害を受け、経営トップの11人の減給という社内処分。そして再発防止に向けては、外部人材の登用により企業風土の変革を促すこと。システム担当者の増員などの再発防止策を公表してます。

はたして経営層の減給、外部人材の登用、システム担当者の増員が本当の解決策なのでしょうか?
くしくも大手銀行の人材を地方の中小企業の事業再生に派遣する話が出ています。上記のような大企業病に浸かった人材を中小企業が受け入れたいと思うでしょうか。

まずは、本気で企業風土の改革を実験するために、旧日本型経営での成功体験からくる意識、思い込みを捨て、そしてフィンテック台頭の世にあって、なかなか変われない銀行、業務の見直し、IT化、転勤、昇給昇格、人事制度を時代に合わせることに意識を強く持つこと。
そうすれば組織は柔軟になり、優秀な人材は集まり、新卒の人気も回復。結果的に顧客の信頼も上がるのではないでしょうか。そうなれば中小企業も人材を派遣して欲しいでしょう。

まずは経営層、管理職層の意識改革と、変われない人材の整理が一番重要ではないでしょうか。
そしてこれらは全ての大企業に共通することだと思います。