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企業の働き方見直しと個人のキャリア開発

多くの企業で進む働き方の見直し

現在多くの企業が事業、人材の再編に取組んでおり、その施策の一つとして早期希望退職者の募集や、他業種への出向なども同時に行われています。
背景としてあるのは、成長拡大を続けた多くの企業の平成不況における事業の大幅な見直しと、昨年来の新型コロナ感染の影響からくる想定外の経営環境の変化や業績悪化です。

早期希望退職者募集は、重い人件費の削減、リストラと言うネガティブなイメージもありますが、縦割り組織、序列型経営で拡大してきた企業にとって、未来永劫の確実な成長が見込まれない現代にあっては、以前より必ず問題になると言われており、一部の大企業では『黒字リストラ』と呼ばれる人材再編が行われてきてのはご存知の通りです。

新たな事業の構築のために、余剰人員を整理し、事業再編成、再生していく多くの企業が現在取組んでいるのが、従来の経営を支えてきた各種制度、企業としての古い常識の大幅な見直しです。
例えば話題になり、当サイトでも数々取り上げましたが
 ◇メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への転換
 ◇複線型人事制度の導入
 など、雇用、人事制度に関する大きな改革と
 ◇テレワーク、在宅勤務の導入
 ◇週休3日制の導入
 など、社員の働き方に対する対応。さらに働く場所に関しても
 ◇転勤制度の廃止、地域社員の雇用、本社移転、縮小、売却
 ◇コワーキングスペースの拡大
 その他、様々な制度改革を実施しながら事業の再構築、多角化に進んでいます。

これらはあくまでも制度的なものであり、社員にとって所属する会社のルール変更と言う認識で捉えられているところも少なくありません。
改革の根本にある考え方が、社員に浸透していない状況で制度だけ変更しても、「給与、待遇、手当はどうなる?」「マネジメントはどうする?」「評価は?」といったといった疑問や不安が出るのは当然です。

何故、企業は社員働き方を見直すのか?
これから企業と社員はどういう関係で行くのか?
根本的な考え方を全社員に理解、共有していくことがまず先決なのです。

重要なのは自主的なキャリア開発意識

今、一番需要なのは
『企業が社員に対し、自身のキャリアを見つめ直し、その為に企業としてキャリ自立の支援を行う』と言う考え方を伝え、社員に共有させることです。
「会社側は、働く社員のキャリアについてどう捉えているのか」
「社員にどのような専門性、役割、成果を求めているのか」
そして「その為に会社はどういう支援しようとしているのか」
を経営課題の大きな要素として明確に打ち出し、理解共有させることなのです。

その為にまず、働く社員達に『個人のキャリア、キャリア開発』について、会社依存ではない自立した考えを持つこと(キャリアオーナーシップ)を促さなければなりません。
実際に、外部のキャリリアコンサルタントを活用した面談や、年代を限定しないキャリア開発の研修を実施している会社が出てきています。

さらに、社員個々のキャリア開発の為の機会・場を提供すること
例えば『社内外の学びの場』の提供や、専門性をより高めるための外部との交流、出向、社会活動などの機会を設ける事です。

副業解禁の企業が増えていますが、根本の部分での社員のキャリア開発意識が醸成されていなければ、「何をすればいいのか?」と言う声が多く出てきます。
自身のキャリアに対する問題意識、キャリア開発への意欲が出て初めて、専門性の追求、副業など自分の仕事のポートフォリオを形成する動きが出てくるのです。

学びについても、とかく日本人は、学校、研修などで受け身の学びに慣れており、講座や研修を用意しないと学ばない習慣があります。
そういう点も、自主的に興味ある分野を学ぶ姿勢を意識的に変えていかなければいけません。

現在、厚生労働省は従業員の自律的なキャリア形成支援に取り組む企業を「グッドキャリア企業アワード 2020」の受賞企業として表彰しています。
グッドキャリア企業アワード(厚生労働省) 
受賞企業に共通しているのは「自立した個人のキャリアの支援」と言う角度です。
企業の中にあっても、自分のキャリアを自発的に考え、開発していく個人を支援をしているのです。そして社員個人に対する強い意識付け、気づきが根底にあります。

思い起こせば、かつてあった職種が消え、それまで無かった職種が当たり前のように出てきています。
AIの出現で無くなる仕事が出てくると言われています。
一方で、AIの出現で新たな生まれる仕事が増えるとも言われます。

そのような中、自分はどういうキャリアで行きたいか。
その為には何が必要か。何を学べばよいか。
他人事ではない、自身の問題として考えていく必要があると思います。

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