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骨太の方針で社会人の学び直し、リカレント教育、そして週休3日制

余剰人員の大移動

声は上がっていてもなかなか進まない『社会人の学び直し』について、ようやく政府も本腰を上げ始めたようです。(読売新聞記事より一部引用)
4月13日、首相官邸で開かれた経済財政諮問会議にて、社会人のリカレント教育への支援を強化する方針が打ち出されました。(ロイター通信記事)
具体的には6月にも決定する「経済財政運営と改革の方針」(骨太の方針)にて、リカレント旧育強化に向けた具体策を盛り込むようです。
読売新聞の記事によると、「コロナ禍でも成長を続ける企業はある。新たな職場に映るためのスキルを身につけるチャンスを拡大する」と述べたとあります。

背景としてあるのは、新型コロナウィルスの影響を受けた需要の落ち込みからくる企業の業績不振による『余剰人員の拡大』です。
企業の余剰人員238万人 成長分野へ「移動必要」―ミニ経済白書」(jiji.com)の記事にもあるように、内閣府が発表した「日本経済2020―21」(ミニ経済白書)では、企業の雇用者数が実際の生産活動に最適なレベルを上回る余剰人員は、10~12月期の238万人は完全失業者数(昨年12月は194万人)を上回っています。

現在、国として雇用調整助成金などを支援していますが未来永劫続くわけではなく、簡単に言えば、企業に対して
「苦しいからと言ったて早期希望退職という安易な手に走るのではなく、自前で色々と教育して、他分野、他業界で活躍できる人材を育成しときなさい!!」
「終身で雇用する前提ではなく、社員のキャリア開発、スキルアップの為のリカレント教育、あるいは副業などで、転職しやすい環境を用意しなさい!!」
といった感じでしょうか。
現在アフターコロナを見据えた業態転換など大きな舵取りを余儀なくされている企業にとっては、「そんな事言われても解ってはいるが、直ぐには、、」「とりあえずは目前の黒字化」と言う企業もあると思います。ですが、例によって同業他社や全体の様子見ばかり行い、後回しにしては、変化に置いていかれ気づいた時には遅いという、日本企業に多いお馴染みの状況を生むかもしれません。

新卒学生、若手社員の多くが終身まで雇用されるつもりはなく、自らのステップアップのために次々に転職することや起業も考えている現状にあって、社員の自己啓発やリカレント教育、学び直しを推奨したり、他業界への転身や自社へのフィードバックを前提とした副業解禁を積極的に行い始めた一部の企業と、未だ旧来の日本型経営に固執しメンバーシップ型雇用や年功序列人事制度を変えられない企業では、10年、いや数年後にあらゆる面で差が出てくると思います。そしてこれは大手に限らず中小企業でも同じです。

いわゆる余剰人員に限らず、自社の社員に対し、自らのキャリ開発、ステップアップ、あるいは社員の自立や転職を支援できる会社は、結果的に他でスキルアップした優秀な人材を獲得できることにも繋がります。
個人個人は一社に長く勤め昇給昇格していくキャリアプランから、転職や起業、エキスパート採用、専門管理職、役員としての雇用や地方移住など、個人のキャリアの選択肢が広がり、同時に企業としても「必要なときに必要な人材を確保し成長を持続する」ことができる状態を実現できます。
社会人の学び直し、リカレント教育は個人にとっても企業にとってもメリットの大きいものなのです。

週休3日制の推進と課題

同日の諮問会議では同時に『選択的週休3日制』議論されています。
学び直しや副業などに時間を設けやすく、幅広い仕事の選択肢を用意できることと、介護育児などワークライフバランスをより上手く取っていくために、休日を一日多くするというもの。
選択的と付くのは、強制の制度ではなくあくまで希望する社員のみ適用できるという発想からです。

当サイト「週休4日、副業解禁の背景にあるもの」でも紹介したように、既にヤフー、みずほファイナンシャルグループなどでは週休3日制が始まっており、この流れもまた徐々にですが広がっていくのではと思います。

その昔、高度経済成長時代、昭和の時代には「半ドン」と言う言葉があったように、土曜日の午前中勤務も当たり前でした。勤務時間帯も9時から5時までで、小中高教育機関も同時に土曜日は午前中授業がありました。
その後、週休2日や10時始業などに大きく変わり、現在のワークスタイルの定番となっています。(メーカーの工場、公的機関は今も時9時が多いですが) いずれも一社長期就労を前提としたものでした。
もともと『週休』の名の通り、労働日に対しての休日(休む日)と言う概念ですが、今回の週休3日制は、休む日と言う概念とはちょっと違います。
会社の就業規則の改訂と言うより、個人のワークライフバランスを前提とした多様性ある働き方に基づくものです。
さらに副業・兼業解禁ということであれば、一社長期就労を前提としたものではなくなるでしょう。
企業側も「定年まで雇用する」と言う考え方から、「社員個人個人の考えるキャリアに自社を上手く活用してもらう」「成果と報酬 Win&Winの関係」と言った考え方に変わっていきます。

ただ週休3日制導入に関しては、課題も出て来ます。
まず現在の労基法との兼ね合いの問題です。週40時間労働、時間外労働の報酬、36協定などは、週5日×8時間勤務を前提としたものです。
週休3日は1日10時間労働にするのか、給与額はどうすのか、あるいは別報酬の形の雇用契約にするのかなど制度の改訂も余儀なくされます。

そして一番の課題は、週休3日に対応できる職種かどうかなど、仕事内容との兼ね合いです。
現状のテレワークでさえも対応できる職種とそうでない職種の選別問題や、対応できるのにしていない会社への不満などかあらわになっており、週休3日制においても、育児や介護が必要という社員の仕事が選択制の対象になるか、シフト、ローテーションなど現場の仕事をどのように効率的に回していくかなど、制度導入に当っての課題は残ります。

テレワーク同様、学び直し、リカレント教育など、自身のキャリア開発やステップアップを目指そうと考える社員に不満を抱かせる「名ばかりの週休3日」にならないことを願いたいです。