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転勤制度の見直しで変わる働き方

転勤制度の廃止が増えていく

今から一年ちょっと前に、企業による社員の転勤が無くなっていくのではないかということを書きました。
変わる経営観 転勤は無くなる?(コロナ終息後に変わる働き方part2)」(202004)

これから終身雇用が当たり前で無くなり、メンバーシップ型からジョブ型雇用に変わっていく中で、『転勤』そのものの強みが活かされる機会は少なくなるのではないか、雇用も現地で行え、さらにIT活用により本社と拠点の距離と時間が克服されるだろうと予想していましたが、実際に転勤の廃止に取り組む企業が出てきています。

以前、転勤廃止で話題になったのが外資金融大手のAIG損害保険。
2018年に転勤制度の見直しを発表し、2019年1月より運用が開始されています。
金融業界といえば転勤が当たり前で、メガバンクは全国拠点での転勤、地方銀行でもエリア内支店を転勤するのが常識のようなものでした。
そんに金融業界にあって「転勤というもの、そのものの見直し」を始めたAIG損保の発表は業界に衝撃を与えたものでした。

さらにAIG損保では、2021年1月から東京居住が前提だった管理部門の社員も、東京に限らず希望する勤務地で、今の仕事を続けることを認めると明らかにしています。
《独自》AIG損保、管理部門を完全在宅勤務へ、来年度にも(産経)

管理部門の勤務地に関しては新型コロナウィルスの影響からくる在宅勤務やテレワークの影響が大きく、東京の本社勤務の意味自体に疑問がつき、制度見直しとなったよゔです。
AIG損保では希望しないエリアへの転勤の廃止よって結果的に新卒採用への応募が10倍になったと言います。
さらに管理業務の社員の東京本社勤務を見直し、在宅にしていくことで、優秀な人材の採用や、子育て介護などによる離職を防ぎ、結果的にメリットのほうが多きいと思います。

また、転勤に関する制度改革の取り組みでは飲料大手のキリンでは「転勤を最大で5年間猶予される」という仕組みを導入しました。
ダイバーシティ|キャリアと働く環境|KIRIN RECRUIT 2022
同じく飲料大手のサントリーでは「5年から10年先の転勤希望について、上司と部下が毎年話し合う制度」が導入されています。(NHK クローズアップ現代より)

キリン、サントリーともに転勤に関して社員の意向をかなり重視する制度ですが、廃止したわけではないので、AIG損保の廃止は、より大きな改革だと言えます。

そして、昨日 国内旅行業大手JTBの転勤に関する新たな制度が日経に取り上げられています。
さらば単身赴任 JTB、転居なしの「転勤」制度(日経)

昨年10月に「ふるさとワーク制度」を導入し、転勤が前提の働き方を見直しています。
この制度は「自分の希望する場所に住みながら、遠隔地の部署の仕事に就ける」という従来にない発想です。
まさに転居のない転勤といった感じかもしれません。

このように今後は、『仕事内容と働く場所の関連性』は、多くの企業で課題として検討され、場所を問わない勤務制度が次々生まれてくると思います。

ライフワークバランス重視にどう合わせていくか

転勤制度の見直しと言っても、これまで転勤が当たり前であった会社が急に廃止するのは難しいでしょう。
様々な職場、エリア、顧客との接点など転勤によるメリットもあり、社員たちの「働く場所」「転勤」に関する声をうまく反映させながら制度の見直しを図っていく必要がありますし、転勤や単身赴任に関わる手当などの給与制度も同時に見直すことになります。
また金融機関に代表される「転勤=キャリアパス」つまり「転勤を断ったら出世に響のでは」と言った従来の考え方を大きく変える必要があります。

社員が自身の希望勤務地で働き続けられるメリットは、社員、企業両方に大きなものです。
例えば、
大都市圏でのビジネス、地元志向で地域密着のビジネスを志向する社員。
特定の部門、場所で職種でのキャリアアップを目指す社員。
もちろん転勤をキャリアアップと捉え、自ら希望する社員。
リモートワーク、在宅での仕事を希望する社員。
など社員個々の働き方の希望に柔軟に対応できる制度を持つことで、採用力アップや離職率低下だけでなく、専門職へのキャリアアップ、スキルアップの戦力化など様々なメリットが考えられます。

そして何と言っても、社員個人のワークライフバランスを大切にし、単身赴任、子育てや学校、親の介護といった生活面での不安要素を少なくしていくことが、結果的に企業の業績や成長に繋がっていくのだと思います。