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地銀再編 役割と人材

地銀再編

大手メガバンクは、以前より支店の統廃合、早期希望退職者制度による大規模な人員削減が“黒字リストラ”と呼ばれるなど話題でしたが、加えて
成果主義による賃金制度の導入(当サイト記事:メガバンクの課題)」や
トップの理系人材、他業界の人材活用(当サイト記事:金融業界と理系人材)」、
更には新型コロナウィルスの影響のもと、
週休3~4日制の導入(当サイト記事:週休4日、副業解禁の背景にあるもの)」など、
生き残りをかけた様々な改革を推進してきています。

ご存知のように、金利の大規模金融緩和による低下と言う背景に加え、フィンテックなど他業界から参入、利用者にとって金融サービス自体の在り方の近年の大きな変化を受け、抜本的な事業構造、コスト、人材活用の改革に取り組まざるを得ない状況です。

そこに来て、現在政府も課題としているのが、多すぎると言われる「地銀の再編」です。
そしてニュースが。
日銀、地銀再編へ資金支援 当座預金にプラス金利(日経)
日銀、地銀に再編促す異例の政策…当座預金の金利上乗せ(読売新聞) 
「日銀に預けている当座預金の金利を上げるから、積極的に経営統合しましょう」と言う、日銀自ら地銀再編を促している何とも直接的な施策のようです。
ここ何年か地銀の経営環境はメガバンク同様に厳しい状況でしたが、新型コロナウィルスの影響がさらに追い打ちをかけ、取り引き先の経営が悪化し貸し倒れに備えた費用が膨らんだことなどから、78の地方銀行の4月~6月の3か月間の決算では全体の6割に当たる46の銀行で減益となりさらに2つの銀行は赤字と言う状況です。
今後、中小企業の経営悪化や倒産はまだまだ続くと予想されており、地方銀行の更なる経営危機は続くと予想されています。

上記のニュースでは、合併・経営統合・連結子会社化による当座預金金利上乗せの条件として「経費削減」を条件としています。しかもその経費削減は、粗利益に占める人件費などの割合である経費率か、経費総額の減少率が基準となり、その期限は2023年までにとなっています。
検討している地銀がどのような合併、経営統合の形になるかは解りませんが、間違いなく同時に経費も増えることから、店舗の統廃合だけでなく最も削減が読める「人件費」に手を付けるのではないでしょうか。
これから三年の間、メガバンク同様、地銀の「早期希望退職者募集」の話題は増えることが予想されます。

地銀再編

これからの人材

銀行のビジネスモデルは預貸業務を中心としてきましたが、キャッシュレス社会やフィンテックなど他業界の参入もあり、預貸業務の専門家集団だけでは生き残っていけない時代になっています。
既にメガバンクでは店舗の窓口業務を廃止し、資産運用の専門家を配置した店舗に変える動きが出て来ており、企業の経理業務もIT化し、オンラインによる銀行口座管理など銀行の持つ役割が大きく変わります。
こからの金融に求められるのは、「利用者のライフスタイルに合わせた金融サービスの利用」に如何に対応するか、それらを実現できる人材をどうするかと言う点が大きく、メガバンクでは技術系人材、特定の技能を有する高度人材の獲得に走っています。

地銀においても同様です。
地銀の主要取引先である中小企業、地方の企業の多くは、現在新型コロナウィルスの影響による業績悪化の中、事業の存続、新たな事業やビジネススキーム(ニューノーマルに対応したビジネス)を模索しています。
さらに、大きな問題として、経営者高齢化による事業承継など、黒字でも存続できない企業が出てきています。
地銀は、地域産業の今後を踏まえ、そのような企業に対し、融資、預貸業務だけでなく、企業間のマッチング、販路拡大、IT・DX支援、人材確保など、付加価値の高い総合的な支援が求められ、企業経営に、より踏み込んだ提案とそれが出来る人材の育成確保が重要となります。
それがこれからの地銀の地域企業に対する存在意義でもあるのです。

「これから何を学び、どう行動していくか」
「企業とどう向き合うのか」
地銀の行員の方は、これから来るであろう時代に向けて、金融だけでない経営に対する専門家、一歩踏み込んだアドバイザーとしての役割を強く求められると思います。