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金融業界と理系人材

理系出身の経営層

超低金利やデジタル化の波を受け、その収益構造の改革を余儀なくされ、固定費削減などに走るメガバンク。
数年をかけた大幅な店舗縮小など大規模な構造改革と大量のリストラを打ち出し、大転換期を迎えているのはご存知の通りです。

一方でフィンテックなどを活用した新ビジネスに力を入れて、理系人材を積極的に採用し始めており、みずほフィナンシャルグループは昨年より新卒採用で理系人材の比率を前期比2倍に引き上げたり、同様に三井住友銀行も金融工学や統計学を学んだ理系人材採用を導入するなど、収益構造の改革路線から採用の総数は減るものの、理系人材の採用は積極的です。

そんな中、ついに経営トップに理系人材をと言うニュースが流れました。
三菱UFJ、社長兼CEOに亀沢氏 メガ銀で初の理系出身(日本経済新聞)

亀沢社長は、デジタル・トランスフォーメーションと金融の取り組みに関する専門家でデジタル戦略を推進していた人物。今回はメガバンクが新卒や中途ではなく経営トップに初の理系出身者がなったことで大きなニュースになっています。
三毛頭取が昨年より社長を兼務する体制でしたので、1年でトップ交代です。改革のスピードをより優先するための人事という事なのでしょうか。

金融業界と言えば昔から、法学部、経済学部など文系出身の経営層が多いのが当たり前でしたが、近年では理系出身の経営層も増えてきています。
既に日本生命保険、東京海上ホールディングス、明治安田生命保険のトップは既に理系出身ですし、三井住友FGの経営層にも理系人材がいます。
業界ではヤフーとLINEの経営統合の話題など、多数の顧客を抱えるネット企業がITを活用した新たな金融サービスを打ち出してくると言う話題が多く、最新の技術に対し理解ある経営陣が重要だと言う判断なのかもしれません。

少し前になりますが、三井住友FG内で最年少37歳社長の話が誕生したことがニュースになりました。
三井住友FG内で「最年少37歳社長」誕生、銀行の保守的人事に異変(DIAMOND ONLINE)

新会社のSMBCクラウドサインの三嶋社長は、IT業界でクラウドビジネスの立ち上げなどに携わった中途入社組です。しかも入社一年で新会社の社長に就任しています。
このように今まで続いてきた金融業の形は終焉を迎え、新たな金融サービスの時代へと変化していく中でその中核を担う人材は、従来の業界内常識を超えた形で登場してくることでしょう。

理系人材と言う呼び方

文科系からではなく理科系からメガバンクの経営トップが誕生したことでニュースになっているのですが、そもそも「理系・文系」と言う分け方は世界では日本だけです。
先進国各国の若者は高校生の時点で「どんな職業に就きたいか、そのために何を専攻をするか、どこの学校で学ぶかを決めている」と言われ、社会に出る時点で即戦力という人材も多くいます。

さらに文理関係なく大学を出て入行したら、支店の配属になり現場(顧客営業)から始めさせる日本特有のスタイルが、これから時代に合う人材活用なのは甚だ疑問です。
メンバーシップ型採用と定期的ジョブローテーションにより、専門性の低いゼネラリストを多数生み出し結果的に大きな人件費として経営を圧迫してきたことは明確なのですから、これからは専門的知識、スキルを前提としたジョブ型採用にシフトせざるを得ないでしょう。

送り出す側の大学もAIなどテクノロジーへの対応やグローバルな人材育成を念頭に置いた「文理融合」学部の創設が国立大学中心に進んでおり、国際的な競争が激化している高等教育の在り方が根本的な変わってくるかもしれません。

そして理系の学部を出たから、何らかのテクニカルスキルがあるから理系人材という事ではなく、「最新の技術やITに関する理解度や興味の持ち方が違う人材」だと言われています。
現に亀沢社長を始めとする理系出身の経営陣は、自身は技術者ではありません。
ただ、最新技術と今後の事業の融合に関して前向きであり、競合への強い危機感を持ちながらも、スピードある経営を推進できる存在です。数字に強くロジカルな考え方も強みの一つだと言う声もあります。高度経済成長期に日本を支えたモノづくり技術経営者(ホンダ、ソニーなど)とは少し違うのかもしれません。

そのうち大企業が求める「理系人材」と言う呼び方は無くなって、
「ITやAIなど最新の技術を活用した自社の新たな価値、事業を生みだせる人材」と「それを理解しいち早く判断できる経営層」という事になってくるのでしょう。

ちなみに現在、30代40代でプログラムのスクールに通う総合職のビジネスマンが増え始めているようですが、これらのことと全く関係ないとは言えないかもしれません。

(編集部)

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