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大手企業からの転職者に中小企業経営者が求めるもの

このコーナー「中高年の転職、再就職事情」では、特に大手企業の中高年の転職希望者に対し心構えや重要なこと、注意点などを解説してきましたが、
今回のテーマは中小企業への転職を考えている方に対し中小企業経営者が大手企業からの転職者に「具体的に求めるもの」についてです。

前回の記事「事業承継問題を抱える中小企業に大手企業出身者が転職」では、何十万と言う中小企業経営者が、経営の承継や次期経営者のアドバイザーとして大手企業出身者を求め始めていると紹介しましたが、事業承継の課題に限らず、今後の事業展開や成長に関してビジネスを知る貴重な戦力として期待するところが大きいのは確かです。
その為に中小企業への転職希望の方(特に経営層として)は、何を求められるかを強く認識する必要があります。

転職先企業の掌握、速さと精度

転職先の中小企業については、まず扱っている製品・商品・サービス、生産製造の仕組み、販売、流通、営業と言った事業内容、構造、組織などを理解するのは当然のことですが、その概要だけでなく、事業が実際にどのように動いているのかを正確に知る必要があります。

当然のことながら社内でオフィスで仕事をしているメンバー達 = 会社ではありません。

「日々どのようにそれが展開されているのか」と言うビジネススキームとその連動をいち早く理解すること。さらに、
「どのようなメンバーがどの部分で携わっているのか」=人、そして「顧客の評価はどうなのか、競合優位性はどこにあるのか」=市場価値
を出来るだけ正確に、さらに客観的に掌握する必要があります。

企業はある程度年数がたつと、規模の大小に関係なく主観的判断(これでいい)が蔓延している場合があります。
それらを客観的な視点で見る目が求められるのです。
その上で、その事業の進め方や商品、製品、それらに携わる社員の体制など、細かなところに自分の経験から疑問に思う事などをベースに「課題として抽出」し、ベストな解決策を起案する能力が求められます
業務の進め方などの社内の改善、体制の変更などは当然のこと。
新たな外部協力会社の紹介、取引先候補のルート拡大提案など大手企業にいたからこそ広げていける部分があるのです。

そして、その全体掌握と課題解決は出来るだけ早くやることが求められます。
業績が頭打ちで何とか打開したい企業にとっては、三年も五年も待ってくれません。
入社前に、それらの話を直接経営者と膝を割って話すことが重要です。

大手企業から中小企業へ転職

メンバーの把握

事業全体の把握と課題解決と同様に、社内メンバーの把握も重要です。
むしろこちらの方が比重は大きいかもしれません。

その際、上記の全体掌握の中の「どのようなメンバーがどの部分で携わっているのか」と言う人の把握に於いて、
「××さんが〇〇を担当している」と言う人メインの発想から、
「〇〇の業務を担当しているのが××さん」と言う仕事メインの発想
冷静に見ることが肝要となります。
中小企業と言えども大手企業と同様に、一部の優秀な社員、普通の社員、少々問題のある社員など、2 : 6 : 2 の法則は存在します。さらに経営者の視点での社員評価と現場からの評価に差異が生じている場合も多々あります。
「何々の仕事は××さんに限る」「〇〇さんは△△は苦手だ」
中小企業にありがちな、人を大事にすると言うことの誤った面から、キャリアアップや昇格、キャリアチェンジをせず長年居座るベテラン社員が成長を妨げる要因になっていることも多々あるのです。

転職者に求められるのは、そのような社員達の客観的視点からの再評価による体制や人事の変更です。
もちろん、事前に経営者と「人事と評価」に関する裁量について話し合うことは重要ですが、若手、中堅、ベテラン社員達の今後のキャリアパスや大体なシフトなどを積極的に提言していくことが求められます。
大手企業にいた方ならメンバーシップ型採用の功もあり、色々な社員を見てきています。問題意識が高い人材、新しいことにチャレンジしていくタイプ、ルーチンワークをきっちりやるタイプ、外交向きな人材など、短いローテーションスパンで多くの社員を見てきているはずです。それこそ、「人メインの発想」ではなく「仕事メインの発想」で役割ポジションを決めていたはずです。
さらに大手企業にありがちな縦割り組織の弊害により、適性な能力を発揮できないケース、新しいことにチャレンジ出来ないケース、などの悪い組織風土も知っています。
だからこそ、客観的な視点からの人材の育成、評価と体制づくりに大きな期待が向けられるのです。
適材適所で皆が能力を発揮できる体制づくりは、中小企業だからこそ可能なのです。
これらは中小企業経営者が一番求めているものと言っても過言ではないでしょう。

それをどのぐらいの期間でやれるか。
企業によっては、その期間(何年かかるか)を前提に採用する大手企業出身者の年齢を見ると言う所もあるようです。

就職が決まったからと呑気にしていられません。
事業全体の把握とともに、経営課題の抽出と解決策、それらの推進を可能にする人材の育成、マネジメント。
正確に、しかも客観的に。
狭い担当部門しかできない一介の中間管理職など、どの会社も必要としないでしょう。

経営層で転職するなら、それらを一手に担うぐらいの覚悟が必要なのです。

(編集部)

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