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本業先細り 事業多角化と専門人材のキャリア採用

専業では生き残れない時代に

新型コロナウィルスの影響から業績が悪化し様々な企業が経営危機に陥り、大手航空、運輸、百貨店、スーパー、外食、旅行宿泊関連など多くの企業が赤字決算を発表しました。
一方で、ステイホーム、新しい生活様式の影響から室内需要が増え、ネット物販、運送、白物家電、インナー向けアパレルや自宅向けオフィス用品、テイクアウト業種などは好調です。もちろん戦略的に事業の方向性、サービス、商品を転換したと言うより、結果的に売り上げが伸びたと言う業種も多いのではないでしょうか。

前回の記事「事業の方向転換、業態転換と新たな人材」では、大中小その規模に関係なく多くの企業で、事業の方向転換、業態転換、多角化が進められていると紹介しました。
事業の多角化については既に、航空大手では会員向けのネットを活用したビジネス、銀行などは店舗営業を圧縮し、個人向け資産運用や高齢者サービスの分野へ舵を切り、宿泊業が多目的スペース賃貸事業に進出したり、当サイト「業態転換の方向性 ソニー、旅行関連、日本郵政グループ」でも取り上げたように、郵便局では楽天の携帯基地、shopとの連動なども計画されています。

コロナ禍で無くとも、一つの事業やサービスで成長を続ければ、必ずと言っていいほどマーケットの成熟や衰退、競合との競争など常にさらされ、経営環境は変化していきます。
以前は「企業30年説」というのもあり、会社が一つの事業で成長し続けられるのは30年が限界とも言われていました。
企業が複数の業態・業種を経営すること、つまり事業の多角化経営は経営基盤の安定性を確保するために昔から行われてきたことです。

多角化のメリットで良く言われるのが今回のような予期せぬ事態にリスクを回避できる『経営の安定化』です。複数の事業を同時経営していることで、事業シフト変更によるバランスをとることができ、社内人材の有効活用もしやすい組織力が出来ます。
そして、『多角化によるビジネスの広がり』で、商品やサービス、ユーザーや販路の拡大などが見込める事。また複数事業がもたらす『シナジー効果』などが上げられます。

これから、アフターコロナの新たな生活様式を皮切りに、更なるITなどの技術進歩、環境問題などで企業を取り巻く経営環境は大きく変わります。
企業はもはや専業では生き残り時代になり、自ずと時代に合わせた事業転換、生き残りの為の多角化を求められることでしょう。

多角化のために必要なものは人材

技術の進歩で話題なのは『5G』です。ご存知の方も多いでしょう。
第5世代移動通信システム5Gは高速・大容量に加え、多接続、低遅延(リアルタイム)が実現され、多岐にわたるデバイスからIoTまで、幅広い活用が期待されています。
参考:■5Gとは(NTTドコモ)

5Gと言えばすぐに思いつくのが携帯電話会社。
携帯電話会社各社では、契約台数の頭打ちや通信料の制約(政府からも)などの要因から本業の先細りは否めなく、各社各様に5Gを軸にした事業の多角化を打ち出しています。

話題になったケースで言えば、NTTドコモは5Gを活用した遠隔医療分野に進出。遠隔操作による高度な外科手術の実現に向けて動き出しています。
5Gで医療はどう変わるのか? ドコモが進める「遠隔医療」の取り組みを聞く(ITMEDIA) 
ご存知のようにドコモでは既に様々なコンテンツや金融、決済などスマートライフ事業を推進しています。

一方で、住宅クローンなど金融事業も手掛けているKDDIは、仮想空間イベントを推進。自宅からスマートフォンやPC、VRデバイスを使ってリアルに再現された街を自分のアバターを操作して自由に動き回ることができる「バーチャル渋谷」などの配信プラットフォーム事業を進めています。
5Gビジネスの開発拠点「KDDI DIGITAL GATE」、バーチャル空間を活用した体験ツアーを開始(KDDI)

そしてソフトバンクは自動車メーカーと共同で自動運転の実現化に進んでおり、既にBOLDLY(ボードリー)と言う自動運転バスは毎日運行されています。
BOLDLY(ソフトバンク)

いずれも技術の進歩を受けた他業種とのコラボ、新たなマーケットへの進出ですが、これらを可能にするのも「新たな人材」であることは間違いありません。
現にドコモではスマートライフ関連の人材を二年後に最低でも2500名体制にする方針のようです。
KDDIでは、イノベーション人材採用として0→1で新規事業の創出に挑むアントレプレナーシップを持った人材を世界から集めており、ソフトバンクでは、Beyond Carrier(ビヨンドキャリア)を掲げ、新たな事業領域へのキャリア採用を始めています。

進出する分野に精通した人材、新たな技術を司る高度人材、そしてクリエィティブに長けた人材。
DXなど最新テクノロジーを駆使した幅広いこれからの事業展開、多角化において、新たな人材の採用戦略は不可欠です。
今後事業多角化を推し進める企業は、既存人材の配置転換だけでなく、専門性の高い人材のキャリア採用をどこまでやれるかが鍵です。
そして働く側も一社に長く勤め、その会社におけるスキルを磨くだけでなく、自分で自身の専門生を高め、求められる会社に次々に転職していく。そんな時代に突入しています。