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業態転換の方向性 ソニー、旅行関連、日本郵政グループ 

次々に発表される大手企業のニュービジネスと人材

コロナ禍において、大手企業のリストラ、早期希望退職者募集の話が増える中、新規事業分野へのいち早い取り組みや既存事業の業態転換が次々と発表されています。
最近の話題で言えば、注目を浴びたのが『ソニーのEV開発』の話です。
参考:■ソニーのEV 国内初の一般公開(YAHOOニュース)
Sony Japan | VISION-S | PLATFORM(オフィシャル)

ソニーはEVの開発を通じてセンサーの技術を高めたいとしており、本格的な事業参入は無いとしていますが、今や世界的なテスラや既に参入を発表しているgoogle、さらには台湾のホンハイやアップルなどもEV参入のうわさがあり、今後EV市場は間違いなく成長し、自動車メーカーと新規参入異業種でのモビリティ競争はさらに激しくなるものと思われます。
ソニーと言えばエロくトロ二クスはもとより、ゲーム関連、音楽、映画や金融関係までその事業は多岐にわたり、時代に合わせた事業と業態の転換を続けている代表的な企業です。そして各分野とも専門的人材を採用し、幅広く活躍していると言われます。以前からの主力であるハード、半導体、センサー、機器なども当然ながら、ソフト、ネットを介した各種デジタルコンテンツのビジネスモデルへ段階的に転換しており、金融も含めて今後も更に新事業、業態が生まれてくるのではないでしょうか。

その他にも大手企業のニュービジネスのニュースは日々流れています。ミスミの3D設計データによる即時見積もり・即日出荷を実現するWebサービス「meviy」や、帝人の老化を防ぐサプリメント開発、製造販売事業、凸版印刷のAIカメラを活用した店頭サイネージから最適なコンテンツを配信するシステム「AI販促」、JALの海外の空港での配車サービスやフードデリバリーサービスの「JALアプリ」など大手企業において新たなサービス、ビジネスモデルを展開し始めています。
また、コロナの打撃を直接受けている宿泊業においても、大手のホテルチェーンなどでは、一部でホテルのビジネスオフィスへの全面改装、IT化されたコワーキングスペースとして業態転換がスタートしています。
既存事業から派生する『ターゲットを広げた付加価値の高いサービス』、『ウィズコロナ、アフターコロナを見据えた新たな生活様式』への対応からデジタル化やAI活用などの大手企業の新事業はさらに加速していくでしょう。

そしてそこで重要なのが新規事業に関する人材です。
従来、大手企業の新規事業と言えば、公募や移動などの社内登用が多かったのですが、ここにきてベンチャーとの協業はもちろんのこと、社外からの事業立ち上げ経験者の招へい、高度な専門知識を持つ人材の中途採用、新卒採用など、今までとは異なる人材戦略と確保に動いています。
かつてNTTが移動体通信事業に、全くは違う畑の外部人材を積極的に採用し、iモードを立ち上げた話は有名ですし、。そういう意味では現在のNTTドコモもNTTの新規事業、社内ベンチャーであり、全国ドコモショップ展開は新たな業態転換の一例でしょう。
外からの人材登用の背景には、社会の変化スビートや新たなテクノロジーへの対応が急務であり、いち早く立ち上げることを求められていることがあります。
また中途採用による外部からの刺激、既存社員のモチベーションアップや活性化も副次的な相乗効果として上げられます。
今後、大手企業の新規事業や業態転換においては、今まで以上に人材のが流動化はさらに進むことでしょう。

人材面で大きな課題

積極的な事業転換、新規事業推進が進む中で、今後の事業に多く課題が残る企業もあります。例えば、店舗展開で顧客への直接対面中心で営業をしていた業種です。
当サイト「金融業界と理系人材」「地銀再編 役割と人材」でも触れたように、既に金融業界では店舗中心の個別顧客対応から個人向け資産運用、企業向けコンサルティングに大きくシフトしていこうとしており、業界全体では何百と言う店舗の閉鎖と何万人もの早期希望退職者募集を数年がかりで実施しています。人材の方も、ファイナンシャルや経営コンサルに特化した人材の登用、育成を急務で行っており、銀行の持つ役割は大きく変わろうとしています。

同じように店舗中心の顧客対応の業態では、今回の新型コロナウィルスの影響を直接受けた業種に旅行業があり、業界大手JTBグループは大幅な店舗縮小、リストラを発表しています。
JTBグループ6500人削減、115店閉鎖 デジタル化急務(日経)

コロナ禍により旅行自粛は影響大だと思いますが、何よりネットの活用が後手に回ったことは否めないでしょう。
かなり前から、旅行予約はネットが便利との声もあり、楽天やヤフー、リクルートのじゃらんなどが次々にポータルサイトを立ち上げ、さらに比較サイトや格安サイトなどの登場もあって競争が始まった中、利便性の高いネット予約の分野で遅れをとったことは否めないでしょう。かつて直営店、百貨店販売にこだわった洋服のブランド各社ががZOZOタウンに後れを取ったことに似ています。
ご存知のようにネット予約販売の業態は現在では、多様化した電子マネー決済対応や独自ポイントの付与など、ユーザーの囲い込みが当たり前です。紙のパンフレット中心の来店を期待する『待ちの営業スタイル』では到底太刀打ちできません。
JTBはデジタル化が急務としていますが、競合他社より付加価値の高いサービスをどれだけ提供できるか課題は多いと思います。
そして6500人と言う大型の希望退職での人員調整だけでなく、外からの新たなデジタル化、マーケテイング、ネットビジネスなどの専門的人材の採用がキーとなるのは間違いないでしょう。

そして何と言っても注目なのが、一万人の郵便局員をかんぽ生命に出向させることで話題となった日本郵政グループです。
参考■郵便局員1万人、かんぽ生命に出向へ 保険不正の再発防止(日経)

一連の不祥事から、より専門的な人材育成、営業マネジメントを行う狙いがあると思われますが、郵便局員にどれだけ営業が出来るのか、JTB同様窓口の『待ちの営業』中心でどれほど成果が出るかは、しばらく様子見と言う感じでしょうか。
さらに保険と言う商品そのもののマーケットが少子化で縮小していくのは間違いなく、商品のバリエーションも他社と差別化しにくく、さらにネット保険など新たな営業スタイルの競合とどう戦っていくかなど課題は多いと思います。
一方で明るいニュースとして楽天との業務提携がありすが、ネット通販の物流業務のIT化、生産性アップや効率化、モバイル基地、販売など郵便局の拠点を活かしたビジネスのようです。
参考■楽天と日本郵便、物流領域で戦略的提携–金融やモバイル分野でも連携目指す(CNET JAPAN)
今後は郵便業務中心の従来の局員が、大手生保の外交員並みの営業力や、携帯ショップの店員並みの知識が求められるのかもしれません。
銀行同様に郵便局の役割りがどう変わっていくのか楽しみですし、地元密着の局員の方には是非とも頑張っていただきたいですが、指導、育成、マネジメント側の人材は他業界同様、内輪ではなく是非とも外からの人材の積極的採用を展開して欲しいと思います。

『人が余っているから移動させる、違う場所で使う』と言う出向、転籍などの古いやり方は、移動させられる社員にも、その企業にも、結果的に両者に良い結果はあまりないケースが多いです。
これからは必要な能力、スキルある人材を早く育成するか、外から迎えるか、そういう時代になっていきます。