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事業の方向転換、業態転換と新たな人材

事業転換 三つの大きな流れ

現在コロナ禍において、大中小その規模に関係なく多くの企業で、事業の方向転換、業態転換が進められています。大きくは次の三つの要因からです。

ひとつは、昨今の新型コロナウィルス感染拡大の影響からくる業績不振からです。
従来の事業ではこれからのスタンダートになるであろう新たな生活様式へ対応できないと言う危機感から商品、製品、サービスと提供するビジネスモデルの見直しが図られています。
例えば、百貨店、飲食チェーン、旅行業、宿泊関連など、直接的に新型コロナウィルスの影響を受けた業種では、事業そのものの在り方を再考し、販売や顧客への提供の手法、所有する場の多角的な活用など新たな動きが出てきています。
またBtoCビジネスだけではなく、メーカーのBtoBビジネス企業間取引においても、従来の需要と供給の関係が維持できず、自社技術を異なる用途へ展開したり、製品の販路を拡大する動きが活発になってきています。

そして二つ目は、気候問題など世界的な動きからくるものです。
脱炭素、環境問題への対応やSDGsの動きに対応した企業の取り組みに、その評価や投資(ESG投資)が変わると言う世界的な大きな流れです。特にメーカーは、この流れにいち早い対応を求められており、廃棄物、リサイクル、自家電力などの動きが出てきています。
そしてご存知のようにトヨタをはじめとする自動車産業がEVにシフトする動きは年々加速しており、関連するメーカーの多くもその流れに沿って事業転換を始めています。

三つめは、インターネットの拡大による影響からくるものです。
平成の半ばより言われていた『インターネットの時代への対応』に上手く対応できずにいた業種、業態が、コロナの影響も相まって一気に方向転換を余儀なくされています。
銀行、証券などの金融はもとより、生保などの対面型のサービスがネットバンク、ネット証券、ネット保険の台頭により、その存在意義を見直さざるを得ない状況にあり、また書籍、出版、新聞、印刷など紙メディア中心の事業がインターネットを活用したビジネスへの大きな転換を求められてきています。
またIot技術を搭載した製品開発のなど、メーカーも開発の方向性を変えていきます。
インターネット、IT、AIなど技術革新と、それらがもたらす生活様式の大きな変化は、企業にとって今後の成長の鍵となる大きな要因となるのです。

そして、これらの大きな事業転換、業態転換において最も重要なのが『新たな人材』です。

企業にとって必要な人材が変わる

従来の日本型経営では、メンバーシップ型雇用がベースとなり、新卒を様々に部署に配属、時間をかけて育成する方法が採られていましたが、当サイト「オリンパスの早期退職募集に見る事業分野選択と人材」でも触れたように、事業転換や新分野へのシフトには、人材の教育、適材適所の移動や配属、専門職の新規採用、そして新たなマネジメント体制の強化など様々な人材戦略が必要ですが、現在のようにいち早くスピードを求められる状況においては、事業の立ち上げや新たな技術やアイデアなどに、従来の社員を配置転換し時間をかけて育成する時間も余裕もなく、新たな専門的な知識、スキルを持った人材の採用、即戦力化が求められます

例えばトヨタ自動車では、来年から技術職の新卒採用に占めるソフトウェア系人材の比率を、今年入社の約2倍に増やすと発表しました。
参照:【独自】トヨタ、ソフトウェア系人材の採用倍増…中途の割合を5割まで引き上げへ(読売新聞)

さらに年間の入社人数に占める中途採用者の割合も、現状の約3割から、段階的に約5割まで引き上げるとしています。
これからの自動車に必要な、ソフトウェアや人工知能(AI)の知識を持つ人材の確保が急務であるという考えからで、テスラに見られるように、クルマはハードウェアではなくソフトウェアファーストなものになりつつあります。脱自動車製造と言う流れなのかもしれません。
同様に、パソコン、家電などの機器も、スマートフォンのように、アプリ、ソフトウェアによる多様なサービスに合わせたハードウェア開発(ソフトウェアファースト)に向き、その為に必要な人材は機械、機器関連よりもソフトウェア、AI関連にシフト行くのでしょう。

また金融がユーザー向けサービスのIT化を踏まえ理系人材を採用していますが、上記の環境問題への対応企業への投資などが進めば、環境専門の科学者などを採用することになるかもしれません。
ちょっと余談になりますが、金融業界と言えば、大手銀行で地域の中小企業への転職に関心を持つ人材をリストに登録し紹介する新制度を創設する方針を金融庁が発表しています。
金融庁、銀行人材を中小企業に紹介 橋渡しで成長支援(産経)

大企業から中小企業に転職した場合、収入が減るケースが多く、大企業並みの賃金を支払うことは大きな負担となるため、地域経済活性化支援機構が差額の一定額を補助すると言う、国が後押しする出向みたいな感じですが、今後地域の中小企業が必要とする人材は、果たして銀行出身者なのかどうか疑問です。

事業、業態転換をスピードをもって進めていくために必要な新たな人材は、トヨタのように専門の新卒、中途採用だけでなく、副業人材を外部ブレーンとして活用する、国内様々な処からのリモートでの事業参加人材など色々な方法はあります。
事業転換を急ぐ多くの企業。
今後色々な方法で、新たな専門人材の争奪戦が始まっていくことでしょう。