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中高年の転職 問われる「専門性」ということの本質

本サイトの企業の動きコーナーで「ゼネラリストではなくスペシャリストと言うけど」の記事でも触れましたが、多くの大手企業が今後はゼネラリストからスペシャリストの育成、採用にシフトし、中高年の転職市場でも本人の「専門性」が問われる時代になりました。

ではその「専門性」とはいったい何のことでしょうか?

大手企業の早期退職を手掛ける人材コンサルタントや、実際に中小企業に転職された方、受け入れ側の中小企業の経営者の方々のお話から、求められる専門性の本質がいくつかうかがえます。

専門性は単なる知識、スキル、資格ではない

専門性と言う言葉を聞けば、何らかの分野に特化した知識やスキルをイメージしがちです。
確かに特定の分野で専門的な知識があることは強みではありますが、そもそもその知識が他社でどのように役立つのかを客観的に考える必要があります。
仮に業界内で重宝されるほどの特化した専門知識であれば、競合などからヘッドハンティングされるでしょう。現在何かと話題になっている韓国の半導体業界も、かつては日本の半導体関連の技術者の大量引き抜きから発展した話は有名です。

そのような一部の専門知識層や研究者は別にして、大半の中高年層が今までの経験から持つ知識は以下のようなものでしょう。
例えば

  • 商品関連知識 : 自社商品、製品、サービスの知識、競合優位性、他社情報他
  • 業界関連知識 : 業界動向、マーケット、ユーザーニーズ他
  • 技術関連知識 : 自社開発技術、同分野先端技術、社内活用技術他

など、その企業に在籍していることで価値を発揮するものが中心です。もちろんそのように教育され経験してきたから当然と言えば当然です。

人材コンサルタントが面談で良く行う、「過去の仕事の棚卸し」とは、本人の社内経歴からこれらの要素を整理し、その中から強みを見出していく作業に近いのです。

しかしながら、なかなかその強みが見出せないケースが多く、敢えて強みとして出したPR要素も、転職候補企業に受け入れられなかったり、運よく入社しても、全く役に立たず、活躍できないどころか再度転職活動を余儀なくされるケースが多々あるのです。

そしてスキル、テクニックの面でも同様に、その企業でしか通用しないもの、例えば自社内活用の技術や社内プロダクト管理、自社製品のセールステクニックやスケジューリング、資料作成などの事務的なものまで、その会社にあって初めて効果を発揮するもので、他の会社、他業界ではなかなか通用しないものです。

また、先々の転職を踏まえ、在籍中から専門性を高めるために資格を取得する方もいます。
それ自体は評価されることですが、資格は持っているだけでは何の役にも立ちません。
人材コンサルタント、転職コーディネーターの話でも、資格は持っているだけでは明確な強みにはならないと言います。(※参照 40代50代中高年サラリーマンの転職の為の資格取得について)

専門性を考えるうえで重要なこと

求められる専門性に於いて一番重要なことは、ベースとなる基礎的な知識を元にした「応用力、汎用性」と言ったものです。

自社の製品、サービスを営業するために、社内技術を開発する為に、何をしたか、どのように学んだのかなど、その思考プロセスや方法論がコアとなり、異なる分野や会社でも応用していける部分だからです。
たとえ全く知らない業界にあっても、マーケットの分析や新商品開発の手法、セールス技法の確立、課題解決型の技術開発、製品評価や効果測定の考え方など今まで培ったやり方、仕事の仕方、進め方、そして考え方を元に新たに構築していくこと。
これらが経験者に一番求められるものでしょう。

そしてそれらを遂行していくために一番重要なのが、メンバーとのコミニュケーションとマネジメント。
転職後の新たなステージでは、知識やスキルで言えば、自分より秀でた人材は沢山いるでしょう。それらのメンバーから信頼を勝ち取りリードしていくためには、彼らが知らない課題解決手法や考え方を見せていくことが早道なのです。

例えば

  • 営業面では顧客にプラスアルファの質問を投げかけ、新たな商談へ導く。
  • プロジェクト管理、スケジューリングの仕方、会議、ミーティングの方法の変更。
  • 従来の技術、製造の中から課題を見つけ、より効率的な体制を提案する。
  • 旧態依然とした古い組織風土を活性化し、若手の登用など人事評価を一新する。
  • 資格を有しているのであれば、その知識を元に現実の業務に応用していくやり方を提示する。

いくつもやり方はあるでしょう。

新たなメンバーとの仕事で大事なのは、自分が「知っている」「できる」ことより、「知り方を教える」「できるようにしてあげる」ことです。
「自身が●●をやってきた」ではなく「誰でもできる●●のやり方を知っている」方が需要であり、それらを周りに教授していくことができることが大事なのです。

中高年の転職で求めらる専門性は、色々な捉え方があると思いますが、これらの要素はどの企業も共通して期待している部分であるのは間違いありません。
転職先の企業は、専門性を持つ貴方個人の活躍より、その専門性を現在の会社に広めていくことに期待しているのです。
何故なら、全てその企業の成長、発展に寄与する大きな要因だからです。

(編集部)

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