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中高年に持って欲しい問題意識

若手の優秀な社員はなぜ辞めていくのか

大手企業のリストラや中高年社員の転職など人材の流動化が加速する中、一部で20代後半~30代の若手社員達の退職、転職が増えてきています。
その年代の転職、中途採用は以前からある程度の市場があったのですが、この数年で見ると大手企業、特にメーカー、金融、製薬など急ピッチでの事業の改革・再編を求められている業種やIT関連の職種(デジタル人材)で若手人材の転職が加速しています。

もちろん業種自体の変動するマーケットに対する危機感、上司層のリストラや社内部門再編など、内外の不安を感じた若手が先を見越して行動というのは以前からよくあることでしたが、現在は現場で責任あるポストや権限を与えられそれなりの報酬もある人材(その会社にとっての優秀な人材)さえも次々に辞めていく現象が起きています。

今なぜ現場第一線の主力と言われる20代後半~30代の若手層が会社を辞め、次々と転職していくのでしょうか。

大きな理由として考えられるのが二つの問題意識です。

一つ目は、現時点の自分の会社や職場、仕事内容、働き方に対する問題意識です。
「この事業の方向性はおかしい」「この組織体制はおかしい」「評価の基準がズレている」
など、自社の事業展開、組織、人員構成、人事評価などに対する不安や不満に対し、
「こうすればいいのに」と言う自分が望む姿との現状に大きなギャップを感じ、事あるごとに問題提起しても受け入れられないケース。
また同じような強い問題意識を持ち会社を変えていこうと考えるメンバーが社内に少ないこと。
さらには問題提起や改善提案さえできない「事なかれ主義の風土」などに諦めや呆れ。
これらの理由で結果的に外を向いてしまうという事です。

優秀な人材であれば、このような場合多くの会社は引き留めにかかりますが、同様の問題意識と根本的な解決に触れないまま、ポストや昇格昇給など条件提示で留めようとする場合も多く、逆に反発されるなど裏目に出ています。
もともと日々の仕事の中で高い問題意識と課題解決能力、実践力を持つ社員は優秀だと言われていましたが、そういう人材ほど、報酬・待遇の条件面や会社内でのポジションなどの個人的なことよりも事業全体のこと、その会社の将来を考えている傾向が強いのです。

かつて国内大手航空会社が経営危機に陥ったときに、再建を任された新しい経営者が、末端の全社員からの声を聴き、課題を浮き彫りにし一大改革のもと短期間で黒字化した話は皆さんご存知だと思います。いかに現場社員の問題意識、課題の救い上げが会社を変える力を持つかの一例だと言えるでしょう。

「若手の優秀な人材から辞めていく」と嘆く企業は、彼らが持つ問題意識とその理由や背景など根本的な課題を現場から救い上げる形で解決する方向に向かわない限り、人材流出は続くことになります。

そして、もう一つの問題意識は、会社や仕事とは関係ない個人的な問題意識です。

中高年の問題意識

内なる問題意識

若くして辞めていく優秀な社員達に共通して言えるのが、「自分自身のキャリアプラン、キャリア開発についての意識」が非常に高いということです。

何年先には、どんな仕事をしていたいか?
どんなことが出来るようになっていたいか?
明確にイメージできないまでも、先の自分の姿(仕事や働き方)を考えながら今の仕事に取り組んでいるということです。
ですから常に彼ら視点は会社内よりも社外にあります。
社会の変化、市場、ユーザー、人々の生活仕様がどう変わっていくのか等に常に関心を寄せ、人脈を広げ、情報を集め、そんな中から興味関心が湧くテーマ、自分が先々やってみたいことを日々考えています。

このことは彼らに限らず、現代の若者に共通する考え方の一つかもしれません。一社の会社に滅私奉公や終身雇用など考えも無く、転職=スキルアップ=ステップアップが当然の考えです。
現に国内上位大学の就職人気ランキングに上がる企業は、時代の先端を行き事業化スビートが早く柔軟性の高い企業や高度な経営技術を持つ企業が多く、さらに大学生の殆どが「知識、スキル、専門性を学ぶために入社したい」「そこで長く働くつもりは無い」「ステップアップ、転職が前提」と言っています。
仕事や会社と個人の関係を極めてドライな関係で考えており、どこが自分を客観的に見ることができているとも言えるでしょう。

自分のキャリアアップ、スキル能力アップを考えながら仕事をすれば、自ずと成果は上がり、結果的に「優秀な人材」と評価されます。
自己の上昇志向があり本来はその会社を成長させていくことのできる人材が、実は会社内上昇志向が低く、飛び出してしまいがちというのは皮肉なものです。

中高年の問題意識

若手で優秀だった自分のメンバーの送別会に何度も出た方。
内心は残って欲しいと思いながら、彼らの将来の為だと明るく見送った方も多いでしょう。
そしてそのたびに、残ったメンバーで担当事業をどうやりくりするかに悩み、仕事量が増えるメンバー、目標が上がるメンバーとのマネジメントで胃が痛い思いをした方も多いことでしょう。

優秀な若手人材の退社転職は、残ったメンバーに少なからず影響を与え、外を向く社員、自分のキャリアを考え始める社員を次々に生み出します。
さらに1人の優秀な若手の退社が他の若手退社の連鎖を生む話もよく聞きます。これから入社する新人たちに至っては、さらに人材流出激しいでしょう。

しかし、そんなことの繰り返しが何年も続いて自分自身に何が残るのでしょうか。
中高年の問題意識は「会社のこと」「事業、部門のこと」「自分の評価のこと」だけなのでしょうか。

今、中高年の方にこそ「自分の内なる問題意識=これからのキャリア、働き方」が必要だと思います。
人生100年と言われ、70歳、80歳まで働ける世の中になり、終身雇用も危うく再雇用も見込めないと言われる中、彼らと同様に
「何年先には、どんな仕事をしていたいか?」
「どんなことが出来るようになっていたいか?」
という事を考え、情報を集め、人脈を広げ興味関心を見つけていくことが重要なのです。

40代の方は50代の自分の仕事や働き方を、50代の方は60代の自分を仕事や働き方をイメージしてみる。
遅い、遅くないではなく、そういう問題意識を持って次に進むことが、充実した毎日につながるのではないでしょうか。

(編集部)

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