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新卒の職種別採用と『新卒配属ガチャ』

新卒職種別採用が広がる

いよいよ来月4月から、新卒の入社が始まります。
前回の「違う職種に転職 / 求められるキャリアチェンジ」で、もともとやりたかった仕事でなかったため、希望していた職種に就くために転職する若手社員が増えていると紹介しました。
以前は、新人なら希望する職種や部署に就けないことは当然。新卒は一律に現場職であったり、色々な部署で長期間研修であったり、新卒ならとりあえず営業、販売といった会社も多くありました。
しかし近年の若者達は、就業観の大きな変化、つまり一社終身型ではなく専門性を磨き、スキルアップ、キャリアアップの為なら転職、キャリアチェンジもいとわないと言う考え方が主流になり、就社意識から本当の意味での就職意識へと変わりつつあります。
仕事を聞かれると会社名を答える日本人が、職種で答える欧米的働き方に近づいているのかもしれません。

一方の企業の方もそのような状況を踏まえ、新卒採用を総合職、事務職といった曖昧なものではなく、明確に職種別で行い始めています。

代表的な大手企業では、ソニー、パナソニック、日産自動車、デンソー、島津製作所、三菱マテリアル、村田製作所、オムロン、東芝、富士ゼロックス、日本IBM、などのメーカー。
資生堂、花王、ライオン、サントリーホールディングス、ヤクルト、伊藤園、山崎製パン、伊藤ハム、日清製粉などの日用品食品関連。
NTTデータ、LINE、アマゾンジャパン、ソフトバンクなどIT通信系からコナミ、スクエアエニックスなどのエンターティメント業界。
そして第一生命保険、アクサ生命など保険や、NHK、読売新聞社も。
業界や事業内容に関わらず多くの企業で『職種別新卒採用』が始まっています。

職種別の新卒採用は、大学での学業や専攻、専門性を問われることも多いため、難易度が高いと言われていますが、一方で人気が上昇するという現象も起きており、ソニーやサントリーホールディングスが、就職人気ランキングで上位に復活したのは、この職種別新卒採用の影響が大きいと言われています。

企業にとっては、入社後のミスマッチを未然に防ぐという狙いもあるでしょうが、専門性が高い新卒であれば即戦力となる可能性が十分あります。
当サイト「高度人材の確保に於ける新入社員の高額報酬と中高年の課題」でも触れましたが、以前からソニー、ヤフーなどがAIなどに強い人材など新卒でも高額な初任給で採用すると公表しており、専門性の高い学生の人気は高まっていました。
また従来の専門分野の知識、スキルなどの新人研修の教育コストが削減できる効果も期待できるわけです。

未だ変わらぬ企業の新卒配属ガチャ

個人のキャリア、専門性の追求、など働き方改革によって企業の人材観を変えざるを得ない状況にあって、未だ従来の資質重視のメンバーシップ型採用、ジョブローテーションを中心とした育成という日本型経営を変えられない企業が多くあります。
産労働人口の減少、社員の確保がより難しい時代にあるにも関わらず、古くからの慣習、価値観に縛られており、入社後のミスマッチを部署異動や人事で何とかしようとしたり。
結果的にコストを掛けて育てた優秀な人材が抜け、専門性高い中途採用のコストがまたかかると言う悪循環です。
メンバーシップ型雇用による仕事のローテーション、配属や長い時間をかけた育成は、一般企業だけでなく、政府、官公庁のデジタル人材不足など顕著な例かもしれません。
もちろん現在、働いている中高年の方の多くがこの経験をしており、学生時代の専攻、専門が今の仕事に大いに活かされているという人は少ないでしょう。

このような企業の多くで、若手社員が使っている言葉に『新卒ガチャ』『配属ガチャ』という言葉があるのをご存知でしょうか。

新卒で入社したが、希望の部署、仕事に就くことができる新人がいる一方で、例えば
□希望している部署とは全く異なる部署に配属される
□地元勤務で入社したはずなのに入試、別の地方勤務になる
□インターンの時と仕事内容(話)が全く違う
といった仕事内容や勤務地の問題に加え
□仕事しない上司、評判のあまり良くない上司の下に
□働き方改革をうたっているのに残業が多い
また最近では
□テレワーク、リモートワークでできる仕事なのに出勤が前提

など、自分の思いと全く異なる状況や、何があるか解らいため、ソーシャルゲームの課金ガチャと似ていることから『新卒ガチャ、配属ガチャ』と呼ばれています。
昔のように、何事も経験、勉強のためという考え方ではなく、単に『アタリ・ハズレ』で判断しているのです。
参照:新入社員を苦しめる「配属ガチャ」発生の背景(東洋経済オンライン)

企業側にとっては総合職の名の下、色々な職場や仕事で成功体験を経験し、ゆくゆくゼネラリストになるためのキャリアパスを用意しているつもりでしょうが、現代の若者のキャリア志向はジョブ型であり、企業に依存せず、転職、キャリアチェンジを考え、仕事を通じて自身の市場価値を高めようとする考え方なのです。

今後、この『新卒の職種別採用』は確実に増えていきます。

『ガチャでハズレが出た!!』と言われないためにも
企業はその方向に舵を取らなければ優秀な人材は確保できません。
同時に学生も、「とりあえず大学に!」から、将来の仕事を考えた上での専攻と、就活におけるより詳細な企業研究を求められる時代になっています。