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高度人材の確保に於ける新入社員の高額報酬と中高年の課題

専門性を問われる時代に突入

少し前から、特定の技能を持った人材には新卒でも高い年収を払う会社の話題が増えてきていましたが、そんな中、こんなニュースが

ソニーが新卒に「初任給730万円」、最大のカベは中高年社員の嫉妬!?
(※参照 ITメディア)

IT業界の技術職採用では、近年特別な技能を有する社員を優遇する採用が展開されてきているのはご存知でしょう。
特にAIなどに強い人材の獲得は激化しており、有名なところでは、ヤフーがエンジニアスペシャリストの初任給を通常の5割以上高くし、またLINEでは高度な技術を持つと認められた技術職は入社時の年俸を通常よりも172万円引き上げ700万円を提示しています。
今回のソニーのニュースではその考えを、新卒からでも対応させたことが注目されているポイントです。日本の昨年の大卒初任給(平均21万弱)の数字を見ると、ソニーの730万と言う額が如何に高額かが解ります。
それでも世界ではグローバル企業の大卒新人は5万ドルが当たり前、シリコンバレーに至っては入社時年俸10万ドルが下のクラスと言われており、AIなどの最先端分野の技術進歩や顧客ニーズの変化に応じたビジネスが広がっている現在、専門的スキルを有した人材であれば新卒であっても、このように高い評価とそれに見合う報酬を出す企業は間違いなく増えていくでしょう。

一方で、経団連の中西会長が「終身雇用制や一括採用を中心とした教育訓練などは、企業の採用と人材育成の方針からみて成り立たなくなってきた」と発表。
2019年4月に経団連で開催された『採用と大学教育の未来に関する産学協議会』に於いても「新卒一括採用で入社した大量の社員は各社一斉にトレーニングするというのは、今の時代に合わない。」という意見が共有され、
今後は、日本の長期にわたる雇用慣行となってきた新卒一括採用に加え、ジョブ型雇用を念頭に置いた採用も含め、学生個人の意思に応じた、複線的で多様な採用形態に、秩序をもって移行すべきとの認識で、産業界側と大学側が合意した。
と報告されています。
もちろん、企業に何人就職(就社)させるか、といった今までの大学側の価値観も大きく変わってきており、在学中に自己適性を見極めたり、専門能力を高める方向に向っているのです。(※参考:当サイト記事 教育と実践 時代はジョブ型採用・雇用に向かう)

新卒一括採用が全くなくなり、新卒・中途の概念が一気になくなるとは思いませんが、
大学側が社会で活躍できる専門性を高め、企業側が新卒の一律の採用、教育、共通給与体系を変え始めると、自ずと企業全体の雇用制度についての見直しが必となります。
既にジョブ型雇用(採用)と謳われているように、従来の年功序列、終身雇用を前提とした雇用(メンバーシップ型)から「仕事・職」を前提とした採用に移行してくのではないでしょうか。
もちろん欧米のようなジョブ型に100%切り替えは難しいでしょうが、安心して働ける日本型雇用の良さも残しながら、折り合いを付けて行く流れになると思われます。

中高年社員の課題

その際、課題になるのが上記のニュースにもあるように「中高年社員の嫉妬」です。
「俺より給料が高い奴が出るのはケシカラン」といった中高年社員の感情的な反発が壁になると言っています。
時代は変わり、企業の人材に対する考えも変化している現代においても、自らの経験や過去の働き方が軸となり意識を変えられない中高年が阻害要因となっているのです。

本来、中高年、管理職層は、特別な技能・スキルを有し、会社の将来に大きく貢献するだろう人材に高給を払う事を理解し、そのような人材を上手くマネジメントし業績向上に寄与することを求められている存在であることを自覚し、業務に取り組む姿勢を求められているはずです。
「入ったばかりの新人に高給はいかがなものか」
「彼らを上げるなら、自分はもっと上げろ」
といった感情論だけで反発していても、技術進歩や顧客ニーズの変化に対応できないまま会社自体が衰退していくのが見えています。
そしてそのような意識の中高年層は、若手社員達から『ブラック上司』『老害』扱いされかねませんし、変革しようとする企業からすれば、早期退職者候補という事になるのです。

中高年転職の人材コンサルタントの話によると、大手企業の中高年(30代後半から40代)で1000万前後の年収だった方の転職の際の給与は、一部上位層(ヘッドハンティングクラス)を除くと平均給与は600万程度が目安なようです。
中小企業からの求人でも500万程度のものが多く、残念ながら何らか特化した専門性を持たない大手企業の中高年社員の市場価格はその程度と言う認識なのです。
今後は、「その企業に於ける自らのポジション、評価、そして報酬」と言う考え方から、「業界、マーケット、さらには産業界における自分の市場価値と価格」を客観的に考える意識が重要なのです。

(編集部)

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