“新リストラ”なる言葉が出てきています。
このサイトでもいくつか紹介していますが、端的に言えば
「黒字で事業拡大している企業が、急に40代、50代以上の社員に希望退職を募る」という、従来の業績不振による業務や人件費の縮小からくる人員削減「いわゆるリストラ」とは全く異なるものです。「黒字リストラ」と言う呼ばれ方もあるようです。
この新リストラは数年前から一部企業で行われ、徐々に拡大してきており、今年に入ってからは大手有名企業の発表が続いていることはご存知のことと思います。(参照 : 2019年 上場企業「希望・早期退職」実施状況から見えること)
近々(2019年11月現在)でも、
・ファミリーマート 社員1割の希望退職募集 出向者を含む40歳以上800人対象(毎日新聞)
・味の素、管理職の希望退職募集 50歳以上から100人(ITメディアニュース)
などまだまた増え続けています。
経営不振を受け、苦渋の決断の末に割増退職金などを提示し、ある程度絞った社員に打診すると言う「その場しのぎ的な従来型のリストラ」とは違い、かなり計画性の高い人員調整であるとも言えます。
働く社員にとって不安なのは、その理由(業績不振、事業撤退など)が解らないまま希望退職者の募集が突然始まると言う事態が起き始めていることです。
「大手だから、業績好調だから、リストラの心配ない」とは、今後言えなくなってくるのかもしれません。
新リストラの背景
企業が業績好調でも、人員調整を行いリストラ計画を立てる背景には色々な要因があります。
80年代、90年代そして失われた30年と呼ばれる平成の時代を生き抜いてきた企業が、バブル崩壊、ITバブル、リーマンショックなどを通して学んだことは、従来型のマーケット・顧客拡大に順ずる企業の規模拡大路線の見直しや合理化、スピードある業態の変化の重要性です。
またインターネットやITの普及によるより効率的経営の追求や、少子化を迎える国内市場の縮小、顧客の価値観の変化、海外マーケットへの進出など、企業を取り巻く環境へ対応する成長戦略と言う名の「生き残り戦略」を重要視して来ています。
有名な例でいうと
・金融・損保生保が従来の業務から新商品開発へ
・自動車メーカーが自動車販売からモビリティ社会の分野へ
・百貨店・大手流通がネットサービスへ
・携帯キャリアが販売から5Gに関連する新たな移動体通信ビジネスへ
・家電メーカーは製品の製造販売からIot開発へ
・大手ゼネコンが介護の分野へ
各業界ともマーケットのこれからを見据えた動きは既に始まっています。
その流れに沿わないであろう社員の整理削減は、経営戦略的な効果が業績の良し悪しに関わらず非常に高いとみているのです。
本来、メンバーシップ型の総合職採用を続けている大手企業は多くが、就社した優秀な学生を教育し、色々なセクションに配属して適性を見ながらポジションを用意していくのは、単に転職させない目的があったのも一つです。
結果的に何も専門性の無い、マーケットの価値が高くなく、その企業の仕事でしか通用しない社員を大量に生み出し、現在ではそのことが足かせになっているのは皮肉なことです。
さらに人材の流動化がますます激しくなる現代において「人材系のビジネス」の台頭も要因の一つです。
あえて黒字の企業にリストラの提案をしている人材系の会社も少なくありません。再就職先の斡旋による成果報酬のビジネスですから、玉は多いほうが良いと言うことです。
労基法上特別な理由のない限り解雇できない企業にとって、早期退職希望者の面倒を見てくれる外部パートナーとしての人材会社は何かと都合が良いのでしょう。
受け身の姿勢からの脱却
このように「大手だから、業績好調だから安心」とは誰も言ってられない時代が来ています。今後、企業の効率化、合理化かがさらに進み様々な業種で新たなリストラが進むでしょう。
この新リストラ時代への対応、特に対象となる中高年サリーマンに対しては、各所で「生き抜き方」「生き残り術」などが指南されています。その多くは
「転職した後も現在と同等のお金を稼ぐ力」
「他社でも通用するスキルを磨く」
「専門性を身に付ける」
など、同様のことが随所でアドバイスされているようですが、その中身が何なのかについては残念ながら細かく言及されていません。もちろん人によってそれぞれ違う内容なので、一概に同じように説明できないだろうと思います。
一方、企業によっては年代別にキャリア研修を積極的に開催したり、適性検査なるものを実施し、向いてる職業や強み・能力を提示するケースもあるようですが、
いずれも「我が社にはずっと居れません」と言うメッセージの一つですから、単純に鵜呑みにできないものです。
それに研修も検査もあくまで「授業、テスト」であり、自分はあくまでも受講者でしかないのです。
来たるリストラに備えては、例えば
・ネットや参考書で色々知らべること。
・転職に役立つスキルや専門性を磨くために何らか勉強すること。
・人材会社のコーディネーターに相談し、自己のPRについて学ぶこと。
いずれも、やって無駄なことは一つも無いでしょう。
しかし、それらも「自分自身が相変わらず受け身の姿勢」なのではないでしょうか。
受験勉強をして高校、大学に入る。
面接、試験をパスして会社に入る(何をしたいかは二の次で、入ることを目標に)。
入った後は、待ち受けるカリキュラム、仕事、セクションをこなす。
そして、仮にリストラ対象者になっても人材会社に再就職先を委ねる。
もしかすると、ずっと受け身の姿勢でいたことが、リストラ対象者になった原因かもしれないのに。相変わらず就社することばかり考えて待ちの姿勢でいるのではないでしょうか。
今こそ自分の仕事、働き方、生き方に能動的になってもいいのではないでしょうか。
だれも答えを教えてくれませんし、正解は無いものです。
自分の本当のキャリアは、あくまで自分で創っていくものです。
令和の新リストラの時代。
今までの自分を見つめなおし、本当にやりたいこと、自分が輝けるところ、
やっていて時間が経つのを忘れるぐらい熱中できる仕事って何なのかを考えてみる。(キャリアオーナーシップ)
再就職対策を色々考える前に、本当に進みたい道を考えてみること、さらに今まで同様に受け身の姿勢でいないことが重要だと考えます。
(編集部)
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