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2019年 上場企業「希望・早期退職」実施状況から見えること

東京商工リサーチ 2019年10月9日のレポートによれば、2019年1月-9月に希望・早期退職者を募集した上場企業は27社に達し、
対象人数は1万342人と6年ぶりに1万人を超えたとのことです。
(参照:東京商工サーチ2019年 上場企業「希望・早期退職」実施状況)

表向きには希望・早期退職者ですが、ご存知のように体のいいリストラという事になるでしょうし、この希望・早期退職者以外にも、事業部門再編や縮小の煽りを受け、将来的縮小部門に異動した方やグループ関連会社・他事業子会社への強制的出向した方、更には非上場の大手企業の早期退職者まで含めるとその数は実際の何倍もいることでしょう。
もちろんその大半がどの企業も足並みを揃えたように「40代、50代」なのです。

そして10月から年末にかけてもさらに増えていくと予想されていますが、今年のリストラは、過去のものと少し様相が異なるようです。

業績好調なのにリストラ

当機構のこのサイトでも何度か言及してきましたが、今回の特徴の一つは業績が好調なのにリストラを行う企業が出てきたこと
従来ではあまりなかったケースです。
グローバルな舞台で競合と戦うためには従来の事業形態では刀打ちできず、新たなビジネスへの方向転換や他分野への新規参入などにスピード、柔軟性を持って推進していくために、従来の価値観では無く創造性豊かな若い専門性を持った人材の活用にシフトしていくと言う流れです。
経団連自らが終身雇用、定年制度の限界を訴え、若手社員の対外的な学び・リカレント教育を推進し、さらには優秀な外国人採用や高度な専門人材の高額報酬での採用など、戦力となる人材の在り方は着実に変わりつつあります。
「業績好調なのにリストラ」の流れで今後さらに成長する企業が出でくれば、他の企業も右に習えで、多くの企業が同じ方向に進むのは間違いありません。
今回の発表では、電機電子機器メーカー、製薬、流通やアパレルなど業績低迷の企業が主となっていましたが、業績好調なのにリストラする企業の割合は今後さらに増えていくことが予測されます。

希望・早期退職

繰り返される中高年のリストラ

もうひとつ特筆すべきは、希望・早期退職者の一社当たりの数の多さです。
2002年 ITバブル崩壊、2009年 リーマンショックの際にも、多くの企業でリストラがなされましたが、今回の発表では、一社当たりの人数が過去に比べ多いという事です。
1社あたり平均で400名弱。過去の2~3倍の数なのです。
今年はニュースでも大手電機メーカーや金融、製薬会社が1000人単位でと言う話は幾度となく流れました。
このサイトの記事「少子化・人口減少問題と企業の社員年齢再編成の為のリストラ」でも触れましたが、人員構成上バランスが悪く人件費の高い40~50代のボリュームゾーンを一気にスリム化していくという流れです。

さらに、政府が義務付けた高齢者雇用・雇用延長も影響してきます。
定年年齢を65歳未満に定めている企業は、65歳までの定年の引上げ」や「65歳までの継続雇用制度の導入」さらには「定年の廃止」のいずれかの措置を実施しなけばならず、例えリストラをしたとしても、残った社員の雇用継続を余儀なくされ、高齢者に対する人件費の課題は残り続けるわけです。
(参照:厚生労働省:高齢者の雇用)
高い人件費のボリュームゾーンのスリム化は、何も今年だけに限ったことではなく、既存の若手社員達もある程度の年齢になれば、その企業に依存しない働き方の選択を余儀なくされることでしょう。

人材の循環

そして過去のリストラ期と大きく異なることに、新卒の採用は止めていないことが上げられます。
新卒はある程度の規模で採用し、さらに若手中途の採用は積極的に行っているという事実があります。

このように、今回の流れは、ITバブル崩壊やリーマンショックの時のような、企業の業績維持、利益確保のための一時しのぎのリストラではありません。

これからは間違いなく「専門性の高い若手社員の継続的に採用し、ある程度の年齢になったら社外へ目を向かせ、転職、希望退職などの選択を問うていく」と言う人材活用に向かうでしょう。

ジョブ型雇用で代表的な欧米の成長企業でさえ、積極的な専門的人材の高額報酬での採用の反面、毎年評価の低い一定層はカットしていると言います。

新しい水を入れても、ちゃんと出口から水は流す。
これから企業は更なる成長の為には、この人材の循環について確実に取り組んでいくのではないでしょうか。

(編集部)

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