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ゼネラリストではなくスペシャリストと言うけど

中高年の働き方に関する話題は、増え続ける大手企業のリストラや一連の老後2000万問題などの影響を受けたからか、ビジネス関係の雑誌やニュースサイトで多く取り上げられ始めました。

その中で共通しているのが、中高年の再就職・転職に際して何らかの専門性を持つべきだという内容です。
実際、転職を扱う多くの人材エージェントは「専門性が無ければ転職は難しい」と語り、
ある大手企業のトップは、現従業員に対しても「これからはゼネラリストではなくスペシャリストの時代」「ゼネラリストはもはや要らない」とまで明言しています。

しかし、「よし、自分の専門性をさらに磨いて他社、他業界でも活躍できるようになるぞ」と言う方はごく少数で、「今更そんなこと言われても!!」と戸惑う方の方が圧倒的でしょう。

規模拡大、縦割り組織内での小ユニット制を善しとし、大量採用、年次別バランス雇用を続けてきた大手企業にとって今までは、社内や業界の知識を持つマルチプレーヤーや管理職が重要だったことは間違いありません。
したがって入社以来、何らかのスペシャリティを身に付けたくても、短い期間(3年ぐらいの単位)での部門移動、拠点移動などを余儀なくされ(メンバーシップ型雇用)、そのたびに新しい部署で一からスタートを繰り返し、優秀なゼネラリストであることを求められてきた多くの中高年にとって、今さら「専門性を!!」と言われても困惑するのは当然です。

“中高年の専門性”と言うテーマについて、具体的な内容については今後もこのサイトで取り上げていきたいと考えています。
参考記事
■ 中高年の転職 問われる「専門性」ということの本質
■ 40代50代中高年サラリーマンの転職の為の資格取得について

本当にスペシャリストの時代が来るのか

大量人員削減、リストラを行う企業は、これからはスペシャリストを求めると公言していますが、スペシャリスト軍団だけで本当に企業は成長していくのでしょうか。

その為には、従来の組織体制や業務自体の改革、量より質を重視する仕事、そして何と言っても人事制度や評価の大改革が必要です。
スペシャリストを企業内専門家としてだけではなく、業界内のエキスパートとして育て評価し、それ相応のポジションと役割りを与えていく。
部長、課長と言ったポストによる昇格昇進を廃止し、専門性に特化した評価を元に人材を活用する。ある種のヒエラルキー組織を、フラット型、アメーバ型の組織に。
これらを本当に変えていくことが出来るのでしょうか。
さらに管理部門などバックアップセクションはどうするのか、など課題は山積みです。

個人のキャリア形成の意味で言えば、欧米型の雇用が確かに効率的です。
決まった部門、ポジションで経験を重ね専門性を磨いていく働き方。
確かにグローバル企業で国際間競争で勝ち抜くためには、事業戦略に沿った形での即戦力人材確保が重要なファクターです。国内企業でも今後そういう流れになるでしょう。

しかしながらこの考えを本格的に導入していくには、新卒一括採用の廃止、個人と会社との契約、実践的でない専門研修制度の廃止、それに業績連動型一律賞与(ボーナス)などの廃止、そして何と言っても「一方的に解雇できないと言う日本の労基法」まで変えていく必要があります。

余談ですが、日本の住宅ローン(毎年少額返済で残り退職金で一括払い)や、買い物のボーナス払いと言う概念は、従来の日本型経営で働く人をメインに考えられています。
専門性を重視してのジョブ型採用がメインになれば、そのようなライフスタイルのファイナンスの概念まで変えていかなければなりません。

従来の日本型経営がこれからの時代に合わないのは周知の事実ですが、企業がスペシャリスト、専門性をうたうのならば、このように足元の大きな改革を実践しなければ実現できません。
そして本気で変えていくためには、会社一社の問題ではなく、官民一体となっての大改革、個人と会社の関係の考え方の大きな変革が必要になるのではないでしょうか。

何と言っても残念なのは、この手の改革を担うのが、新たに入ってきた経営のプロ・専門家ではなく、究極のゼネラリスト達(日本型経営で出世した役員たち)ということです。

当面は、日本企業がよくやる付焼刃的な、スペシャリストとは名ばかりの「ちょっと詳しい管理職」がまだまだ増えるだけのような気がします。

(編集部)

【このテーマに関連する記事】
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