従来の管理職はいらない
多くの企業で、事業転換、構造改革が進み、社員個々人の働き方を変えていこうとする中、大きな課題となるのが、新たな人材構成による組織再編成、そしてそのマネジメントです。
その中でも特に頭を痛めているのが、『管理職、管理者』をどうしていくかと言う問題。
従来の管理職は、昇進ポストとして用意されたものがほとんど。大企業によくある縦割り組織では、細かく役割分担された組織一つ一つに管理者、管理職を用意し、その組織の業績や人の『管理』をメイン役割とし配置しています。
一方で成長拡大路線が見込めなくなった企業の多くが、組織拡大停滞によるポスト不足に直面し、いわゆる『管理職扱いポジション』や『部下メンバーのいない』を生み出している現状もあります。
※■参照:中高年の再就職を難しくしている大企業病 Part 2
特に、年功序列、等級人事制度による昇格昇進が深く根付いた旧日本型経営の企業の多くでは、事なかれ主義、無事これ名馬、と言ったネガティブな慣習が蔓延し、形ばかりのマネジメント研修しか行わない為、「働かないおじさん」「パワハラだけの上司」と言った言葉が生まれる原因にもなっており、早期希望退職の真っ先に募集対象になるのも当然なのかもしれません。
また、このところ話題になった企業の不祥事、みずほ銀行のシステム障害や、三菱電機の不正検査の問題も、元をただせば、上ばかりを見て、現場の問題、課題を直ぐに上申しない管理職や組織風土が起因していることは確かです。
参考
■みずほFGのシステム障害に見る大企業病の弊害
■三菱電機、「35年不正」で社長辞任の懲りない体質(東洋経済ONLINE)
更には、昨年より急激に普及したテレワーク、在宅勤務によるオンラインミーティングや、成果評価への変更、業務の可視化などの流れに、上手く対応できない管理職が続出してきており、管理者、管理職の仕事、役割を見直していく企業が増えてきているのです。
そして、これからジョブ型雇用や副業解禁、週休3日、など話題になっている働き方に関する制度が進めば、中間管理職の存在意義、企業における明確な役割りが問われます。
「現在の管理職はほとんど要らない!!」と言う識者、経営者の声も聞こえているのです。
これから求められる管理職
「会議、朝礼で挨拶」「報告を受けて、承認、否認」「人事考課」と言ったよくある管理職のルーチンは、メンバーの働き方の変化や、DX導入によるツール活用により、極力少なくなります。さらにテクノロジーの進歩により、業務効率は更に高まり、労働時間や雇用人数は減っていくのが当然ですが、一方で管理職の仕事は逆に増えていると言う話があります。
それは何故でしょうか?
それは従来のマネジメントの仕事(本当のマネジメントではなく報告連絡の中間役)から抜け出せず、本来必要のない仕事まで「自分の仕事、役割だ」と認識し、続けているのが原因です。
報告書や資料、会議のやり方はじめ、そのこと自体が部門経営にとって必要かどうか、そのプロセスの必要性を考えずに、ただただ以前の習慣のままにやろうとする。
気に入らない報告書資料があれば、自分の好みで作り直しを指示する。
昨年の緊急事態宣言の中、捺印の為の出社や、資料作成の為に部下への出社を強要した管理職は話題になりました。こうした管理職は、仕事をしているフリをしているだけ、何も生産していないのです。
今後求めれる管理職は、「ポストとしての管理職ではなく、専門職としてのマネージャー、スキルとしてのマネジメント力」です。
これからの時代、企業に求められるものは、個々の生産性の見直し、生産性UP、業務の効率化など、スマート経営、スリム経営を実現する体質の強化です。
政府の言う働き方改革の第一弾も、労働時間の適性化、残業時間の削減でした。
そのような中、マネジメント層に求められるのは、単に残業をさせない管理術ではありません。
例えば
- 徹底的に業務を見直し、無理無駄を省き可視化する。
- 人に仕事を任せる属人的な考え方から、その業務、仕事に対し一番専門性の高い人材を配置する。
- その書類、報告書は必要なのか、何の確認が必要なのかを考え、ITツールを活用しメンバーへのリアルタイム共有を促す。
- 打ち合わせ、会議、ミーティングの必要性を問い、参加メンバーの適性化を図る。
- 自分の判断、承認が必要かどうか、場合によっては代理を活用しメンバーを育てる。
同じ業績、ゴールに向かって、最適化された組織と業務の推進体制、メンバー構成を実現するマネジメント。
業態変換は元より、組織再編、新規事業においても全て求められることです。
言葉でいうのは簡単ですが、実際に実行するには、かなりのパワーと自制心、そしてそれ(事業マネジメント)を自分の専門的な仕事としていくと言う強い意識が必要なのです。