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仕事の見える化と中高年の仕事

仕事の見える化で企業の様々な課題が解決する

ここ何年かよく話題になったり、使われたりするのが『〇〇の見える化、可視化』と言う言葉。
特に昨年の新型コロナウィルス感染の影響で一気に導入された在宅勤務やテレワークもあり、『仕事の見える化、業務の可視化』について各所で取り上げれていました。

仕事の見える化とは、いわゆる個人の積み重なる経験からくる『感(カン)』や『コツ』といった個人が持つ特有のノウハウなどを、他の誰でも理解でき活用できるようにする為に可視化することを言います。
ある社員が今まで個人でだけ持っていたために他の人には見えていなかった知識や視点、考え方などを共有し、見えるようにするという事です。
仕事を見える化することで仕事の効率化、いわゆる「ムリ・ムラ・ムダ」を無くし、時間や工程など最短で成果を上げることが、可能になると言うものです。

仕事の見える化については、その職種や具体的業務内容によって「見える化する要素」が異なり、可視化のやり方、工程も異なりますが、この『仕事の見える化』は、現在企業が抱える様々な課題の解決に役立つのです。

【業務改善、効率化、生産性向上】
何よりも役立つのが現在の業務の改善による業務効率化や個人の生産性向上です。
代表的なものでは営業があります。
営業ほど個人の経験値、カンやコツが成果に反映される仕事はありません。
クライアントへのアプローチ手法、面談、セールストーク、クロージングからフォローに至るまでの一連のプロセスにおいて、全てのメンバーのやり方を見える化することで、その会社の営業のベストスタイルが見出せます。さらにムダな内容があらわになり効率よく営業を進めることができるのです。

【戦略戦術の実践】
個々の仕事だけでなく、部門やチームの業績、成果を上げるための動きをより効率的に行うことに役だちます。
各部門、チームが目標を達成するために、どのような戦術をどのように実施しているのか。そして成果、結果を把握するために行うKPIの設計などはまさに戦略戦術の見える化です。
「各メンバー、誰がいつ何をどのようにしたのか。」
組織としての動きと成果を可視化することで、目標の設定や次の事業の推進にそのノウハウが役だつのです。
そして実際のマネージャーの行動も可視化され、マネジメントのやり方も共有されることになります。

それ以外にもメーカーの製造工程や昔から可視化されていますし、事務管理部門や経営企画、マーケディング部門などでも仕事の可視化は進んでいます。

そして、これら仕事の可視化、組織での業務の可視化は、以下のような課題にも波及していきます。

★長時間労働の削減
当然ですが、ムダがなくなり効率化することで、残業や意味のない仕事が減り、決められた時間内に仕事を済ませることが可能になります。
★休暇の取得
有休だけでなく育休(男性の育休)など、未だ取得率が低い休暇制度も、仕事を可視化することで、業務の引継ぎや停止がスムーズに行くことで制度利用が増えていきます。

★在宅勤務、テレワーク、地方移住
仕事の可視化は、働く場所まで影響します。仕事内容、求められる成果が明確になることで、出勤しなくとも役割りを果たすことが可能になります。

★採用、雇用の多様化
「何の役割を担い、具体的に何の仕事をどのようにする人」と言った求める人材に託すものが明確になることで、中途採用だけでなく副業人材、外部人材の活用など採用の幅が大きく広がります。

★組織再編成と人員整理
多くの仕事を見える化することで、新規事業、事業多角化にあたって、必要となる「人」ではなく「業務・仕事・職種」での組織編成がしやすくなります。
そして、成果が見えないムダな人材を整理、リストラすることにも繋がります。

見える化で浮き彫りになる中高年の仕事

企業が仕事の見える化を推進するに当って、一番の弊害となるのが、昔ながらの「人に仕事が付いてくる」と言う属人化した働き方です。
特に中高年の世代は、より属人化した仕事をする傾向にあり、よく言われるのが
「この仕事はあの人でなければ」「あの人独自のノウハウだから」などと、個人のノウハウに頼る仕事のやり方が浸透しています。
さらには人に重きが行くために、上司の評価も主観的で成果よりも好き嫌いで判断されたり、業務の標準化や無理、ムダの排除が上手くいかず、結果的に部門やチームに長時間労働が生まれています。
自分自身の保身から、見える化に積極的でない中高年も多く、いわゆる「働かないおじさん」呼ばわりされたりします。(参考記事 “働かないおじさん“は、実は“働くおじさん”)

そしてテレワークなども、やりたい社員は多いのですが、うまく評価できない上司のおかげでなかなか広がらない会社が多いのが現状です。
出社し毎日顔を合わせることを前提として、リアルに気がついたこと、感じたことをコミュニケーションするのがマネジメントだと言う考え方がまだまだ根強いのです。
さらに取引先へも、訪問面談ありきの前提で、オンライン活用などに上手く展開できないのも中高年管理職の意識の問題なのです。

そして大企業の管理職に多いのが、ライバルは他の部門の管理職と言う社内意識。
他と自分の差をつけることが評価につながるという感覚が未だにあり、自分のセクションの仕事のやり方などを表面化することを嫌い、情報を他セクションに共有しません。

人に仕事を任せるのではなく、業務・仕事に最適な人材を配置するという考え方。その為にはその業務・仕事を可視化する必要があります。

属人化した仕事に慣れた中高年は、その考え方を根幹から変えない限り、今後、企業に求められる管理職には就けませんし、可視化された自分の仕事が不必要と判断されるのかもしれません。