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“働かないおじさん“は、実は“働くおじさん”

話題のワード「働かないおじさん」

このコーナーでは、これまで中高年サラリーマンを取り巻く企業や社会の動き、働き方の変化など厳しい状況について言及してきましたが、最近「働かないおじさん」と言う呼び名が話題になりました。
今回は、彼らを応援する編集部としてこの「働かないおじさん」に対する考えをまとめます。

この言葉はニュースなどでも
“働かないおじさん”なぜ増加 相次ぐ40代早期退職募集(FNN PRIME)
「働かないおじさん」はなぜ働かないか(PRESIDENT WOMAN)
会社にすがる「働かないおじさん」 もう逃げ切れない?(朝日新聞Digital)
職場にいる「働かないおじさん」たち 大手企業の若手社員が赤裸々告白(マネーポストweb)
“働かないおじさん”こと「50G」も日本型雇用システムの被害者?40代以降も生き生きと働けるためには(Blogos)
「働かないオジサン」は、日本にしかいない?「一体感」を求める経営が招く弊害(東洋経済Online)
「働かないオジサン」はなぜ職場に増殖するのか?(ダイヤモンドオンライン)

など各所で取り上げられており、「#働かないおじさん」なるハッシュタグも登場し、
ツイッターのトレンドワードになったりと何かと話題です。
ニュースやツイッターのコメントを見ると、
「何もしない高給取り」「給料泥棒」「仕事中はネットサーフィン」「やたら休憩が多い」「就業時間は社内行方不明」
など、様々な事象(悪口)が赤裸々に書かれ、容赦なく叩かれているという印象です。

さらに今回の「働かないおじさん」と言う呼び名には、上記のニュースにもあるように大手企業早期退職希望者の増加や働き方改革、日本型雇用の限界、70歳定年延長などの現在の社会状況も加味され語られています。

このように「大手企業が発表する早期退職希望者にリストアップされる人は“働かないおじさん”である」と認識されつつあるのです。

実は昔からいる「働かないおじさん」

最近になって話題になっている「働かないおじさん」ですが、実は昔からいました。
今の働かないおじさんと呼ばれる40代50代のサラリーマン達が、20代の新人若手だったころから、必ず会社には働かないおじさんは存在していました。
当時も「何もしない高給取り」「歩く人件費」など下のメンバーから揶揄され、社内老害扱いされていたのは事実です。
かつて「窓際族」「リストラ部屋」「追い出し部屋」と言う言葉も話題になったのはご存知でしょう。
働かないおじさんの下で、不平不満を漏らしていたメンバーも20年経って同じように働かなくなる。
実はこれが繰り返されているだけなのです。

働かないおじさん

年功序列、終身雇用、右上がりの人事・給与制度で成長してきた日本の多くの企業では、
メンバーシップ型採用と縦型組織などの影響からポスト不足が生じ、必ず「名ばかり管理職(あつかい)」ポストに就く社員が生み出されてきたのです。

余談ですが、以前は大手企業で名刺の役職に「参与・参事」などの肩書もあり、どの役職なのか解らなかったり、「●長補佐」や「●長代理」はもちろんのこと、「●長心得」と言う何とも曖昧な役職もありました。
その企業なりに考え、ポスト・待遇を用意し、本人の社内でのポジションを明確にする相称でしょうが、外部から見たら、何をする人か、どこまで権限のある人か全くわからないものでした。さらに部付のプレイングマネージャーと言う名の部下がいない管理職も昔から一定層いたのです。
現在、企業は高度経済成長期から平成不況に入り、数多くの危機を迎え、体質改善を余儀なくされて来ており、「窓際族、追い出し部屋」の維持や、さらには「参与・参事・〇長心得ポジション」を用意することさえままならない状況になってきたのは確かです。
ちなみに上記の東洋経済、ダイヤモンドオンラインのニュースはいずれも数年以上前のものであり、企業でも社会でも「働かないおじさん」は、今に始まったことではなくここ10年徐々に問題視されてきた経営課題なのです。

実は働くおじさん

しかし、働かないおじさんと揶揄される現在の中高年サラリーマン達は、実は「働く・働ける」おじさんであり、場を用意すれば「活躍するおじさん」でもあるのです。

そもそも彼らは、将来会社をしょって立つ人材として採用された資質の高い社員なのですが、大企業の持つ日本型雇用の負の側面に翻弄された社員達でもあるのです。

  • 中高年になると現場第一線から離れ、中間管理職としてのキャリアパスしか用意されていないこと。
  • メンバーシップ型で採用され、職務、勤務地を転々と変えさせられ、特出した専門性を身に付けられないこと。
  • 年功序列型の賃金制度により、仕事の成果に見合わない安い報酬で働かされてきたこと。
  • 自社だけでなく、出向先や関連会社にさえポストが不足し、結果的に役職ナシのベテラン社員扱いになっていること。
  • 管理職になっても与えられた仕事はルーチンが多く、成果を出すための裁量や権限も与えられていないこと。
  • 社内での新たなキャリアアップを図るための場所、ステージが全く用意されていないこと。

活躍できるステージを用意すれば、まだまだ第一線で成果を出す能力を有している人も多く、今までの知識経験に新たなキャリアを加えれば、会社を支える存在になる可能性があるにも関わらず、そのステージや裁量・権限さえ用意されずにいるのが現状です

さらに本人たちは、実は自分のことを「働かないおじさん」であり「仕事に見合わない給与」をもらっていることを意外に自覚しています。
だからと言って飛び出して転職し、新たなステージでチャレンジするには、スキルも無く、背負っているものも多く、今一つ踏み切れない。
加えて今のポジションで、無理して成果を出したとしても、部門や事業自体が大きく変わるわけでもなく、昇格昇給の評価は無い。
結局頑張っても頑張らなくても大差はなく給料も変わらない。
など、モチベーションも下がりネガティブな感情になっていることが多いのです。

働かないおじさんを生み出す原因の多くは、間違いなく企業側、経営者側にあります。
彼ら個人の問題として片づけてはいけません。

早期退職希望者募集と言った手段ではなく、彼らを再度輝かせる、活性化させモチベートさせるステージを社内外に用意してあげることが本当に求められていることなのではないでしょうか。

今後、企業が中高年社員達の本当の意味での戦力化に取り組み、年功序列、賃金制度、人事評価制度などを見直し、キャリアのある中高年を再戦力化する取り組みをしなければ、
現在「働かないおじさんは・・・・」と不満を漏らしている若手社員達も、
いずれ同様に下から不満を抱かれる「働かないおじさん」になってしまうでしょう。

「今日の働かないおじさん上司は、明日の自分」
そうならない為に、活躍できるステージが会社に期待できそうになければ自分で見出すことが重要だと思います。

(編集部)

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