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管理職受難の時代

部下のいない管理職

昨年から今年にかけて多くの企業が早期希望退職者を募集している背景に、
「新型コロナウィルス感染の影響による業績不振からくる人件費の抑制」や「業態転換、事業再編成による余剰人員の整理、配置転換」などが数多く言われていますが、募集対象が40~50代の社員、勤務10年年以上などの条件を設けているところが多く、ある年代層だけに焦点が当たっています。
以前の記事「少子化・人口減少問題と企業の社員年齢再編成の為のリストラ」でも触れましたが、労働者全体の年齢別構成比でも解るように、「40代中盤の社員が20代の若手の倍近く存在している」ことも大きな要因の一つです。

この年代の中に『部下のいない管理職』が多数存在しています。
日本型経営特有の制度(級数による職能制度、職能資格制度など)により、長年の功績から職格した例も多く、マネジメントの能力や360度評価による昇格ではなく、課長などの管理職一歩前の等級の一般職と同じ仕事をしながらも、処遇は管理職として扱われています。
※参考 職能資格制度(日本の人事部)
管理職手当は企業によってはその額が大きく、一般職と同等の仕事をしながら年収ベースで数百万近い差が出る場合もあります。
これらの部下のいない管理職が、総額人件費や能力と賃金のミスマッチの観点から見てその必要性、存在意義を問われ、早期希望退職者の候補として上がっているのです。

一般的に、企業、一つの部門、チームの管理職の理想的な割合は10%、あるいはそれ以下で充分とされていますが、上場企業の中には、20%あるいはそれ以上の管理職比率の会社もあります。公表しておらず、実質30%以上の企業もあると聞きます。
金融やメーカー、マスコミなどに多く、〇〇代理、〇〇補佐といった肩書で、代理や補佐業務をすることなく、一般職の延長の仕事、マネージャーーではなくプレーヤーとして働いているという事です。

部下のいない管理職の方の多くは、希望退職の対象として見られ、下のメンバーからは不満が募り、居場所が無くなると言う辛い立場ですが、そのような彼らを生み出したのは企業の責任でもあります。成長拡大を前提とした組織論、人事制度、そして年功序列の処遇を、平成不況の中でも変えられず、刷新できなかったことが一番の要因です。

遅ればせながら、働き方改革の元、早期退職ブログラム、キャリア開発研修に着手し、管理職比率を下げている企業も出てきたようですが、そもそもの年功時列の人事制度の改訂や、総合職を20~30代で専門職にシフトさせるキャリアパスの制度などを積極的に導入しなければ、根本的な解決にはならないでしょう。

そもそも管理職はいらない時代へ

比率を徐々に下げ、いびつな年齢構成を是正しつつある管理職ですが、そもそもその管理職自体が必要ない時代に突入しています。
企業の多くは平成の終わり頃から、次の経営を見据えてITの導入や業務のデジタル化が準備しており、さらに今回の新型コロナウイルスの流行によって、リモートワーク、在宅勤務が余儀なくされたことにより、より業務の効率化・見える化に拍車がかかりました。

その結果、「人を介する報告、連絡、承認」などの業務が不要になってきています。
デジタル化、社内共有クラウドなどの活用により、上下間のヤリトリ、現状把握がリアルタイムで行えるようになり、トップの方針をメンバーに伝える、現場の問題点を上に報告する、その為に会議を開くなど、旧来から日本企業に多い管理職の中間的役割り仕事(?)の意味が問われ始めているのです。
また、働き方改革の一つである労働時間の規制により、会議、報告書作成、捺印業務など、無駄の排除とペーパーレス化、デジタル化が進んでおり、不要な仕事を生み出すと言われる管理職そのものの存在意義が問われるようになってきました。

現在は、従来型の組織の管理よりも、新たな事業の立ち上げや組織のスリム化や統廃合、専門職、外部協力者のコントロールなど、求められるマネジメントは変わってきています。

これからは間違いなく、職能資格制度により昇格した中間役割多型マネージャーではなく、事業マネジメントのスキルを持った特別な人材としてのマネージャーの活用に方向転換し、もしかするとマネージャーの外部からの登用も増えてくるかもしれません。
誰もがマネジメントを出来ると言う考えは無くなり、現在の管理職には益々受難の時代となってきているのです。

企業の管理職比率が10%を切る時代がくれば、同期入社の9割は管理職にはなりません。
そのことを踏まえ、企業に在籍しながらも、20代30代で自己の次のキャリアをどうしてくのかを考えるのが当たり前の時代になってきているのです。