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変わる働き方 トヨタの成果主義に見る新たな評価軸

頑張った人がより報われる評価

以前の記事「人事制度は変わる」で触れたように、終身雇用、年功序列型人事制度はもはや通用しない時代に突入し、従来の日本型経営による人事制度を変えざるを得ない状況になっています。
そしてその先頭を切って改革に取り組んでいるトヨタが、人事評価においてまた新たな制度を発表しています。

トヨタの成果主義拡大「6.5万人評価」の試練(東洋経済)
トヨタ、一律定昇見直し 成果主義を拡大 21年から導入へ(日経)

現在、基本給を構成する「一律に決まる職能基準給」と「評価によって決まる職能個人給」を職能給に一本化するということです。
「職能基準給」などに見る日本型経営、大手メーカーにによくある“勤続年数、年齢による昇給制度”を全く無しにし、より個人に焦点を充てた評価にシフトしていくということです。
しかも全社員6万5千人が対象で2021年春からの運用を予定しています。

成果中心に評価する制度は既に富士通などが導入を発表していましたが、日本を代表するトヨタが制度を見直したことは、グループ並びに取引先、部品メーカーなど自動車関連業界の多くの企業だけでなく、日本の製造業全体に影響を与えるのではないでしょうか。

職能給を決定する評価に関しては上記記事を読んでいただければと思いますが、競争激化の経営環境に於いて企業としての競争力を高めるために、そのキーとなる人材の評価において“頑張った人がより報われること”が狙いです。
昇給における原資は変わらないので、評価の高い社員は配分が増え、評価の低い社員はゼロ、さらに極めて高い評価の人材は早く昇格するというもの

この“頑張った人がより報われること”は、当然と言えば当然ですが、これが出来ていない企業が圧倒的に多く、裏を返せば“頑張ってない人も評価されてる”現状から、結果的に将来経営を担うだろう優秀な社員の流出と、経営を圧迫する生産性の低い大量の早期希望退職者を生みだしているのです。

求められる能力/人間力評価

トヨタの一律の定期昇給に変わる個人の職能評価の基準に加えられたのが「人間力」という項目です。
豊田社長は、今後の新たな技術競争に於いてグループ内外の連携強化を加速させるためには、「社員の人間力」すなわち「相手を巻き込む力、人間の感性や魅力」を身に付けることが必要不可欠であると言っています。

具体的には「人間力評価」について「周囲へ好影響を与え、頼られ・信頼される力」で
・自分以外のだれかのために頑張る
・自分はできていないと理解し、学ぼう、成長しようと努力し続ける
・相手を思いやり、当たり前のことを当たり前にできる
などが評価項目です。
さらにこれに業務遂行力や企画立案力などに基づいて判定される「実行力」を加えた総合評価になるようです。
制度は運用が一番重要なので、人間力、実行力など見えづらい項目の評価、上長の考課手法など、これから課題は多くあると思いますが、単なる実績やプロセス、数字だけでない新たな評価の取り組みとして注目されることでしょう。

トヨタの新たな評価軸「人間力」
よくよく考えれば、ビジネスマンに求めれるスキル、能力のオーソドックスなものです。

教育研修などで取り上げられるテーマ、
「コミニュケーションスキル、プレゼンテーション能力、ヒアリング能力・アクティブリスニング、スケジューリングスキル、対人対応力」
そして「プロダクトマネジメント」に「課題解決能力」、そして「自己啓発」。
いずれもビジネスマンには必要な能力だと言われてきたものばかりです。
昔からよく企業で使われていた「できる人」とか「やり手」「優秀」などの曖昧な誉め言葉に近いのかもしれません。
多くの企業がこの項目を教育研修してきたことは、それらが専門的でな高度なスキルの一つだからなのです。周囲へ好影響を与え、頼られ・信頼される力は、生まれ持った性格ではなく、学んで身に付けられるものなのです。

これから求められるのは、突出した才能、詳細な専門的知識を有していることも大事ですが、従来からある幅広いスタンダードなビジネススキルを身に付け、より高めていく人材ではないでしょうか。