出勤者7割減要請と企業の苦慮
今月26日に4都府県に緊急事態宣言が出たと同時に政府は、産業界に出勤者7割減を改めて要請しました。
■西村再生相、テレワーク徹底呼び掛け 経済界に、菅首相も協力要請(jijiドットコム)
過去二回の緊急事態宣言時では要請はしたものの全体で3割減程度しか実現できておらず、西村経済再生相は経団連首脳などに
「出勤者数7割減。これで抑えられなければ、さらに強い措置も」
と今回はさらに厳しく求めたと言います。
テレワークの導入に関しては日本生産性本部の調査によると、1都3県では昨年5月で41.3% 今年の1月は32.7%とそれなりの実施率を残していますが、テレワークの実施率が高い大企業が1都3県に多く立地していることが要因で、それ以外の地域では10%台のまだまだ低い実施率です。
出勤者7割減はテレワークだけでなく、在宅勤務などを取り入れ全体の3割しか出勤しない状況になれば良いのですが、一週間(5日勤務として)の出勤でみると今年の1月段階で、3日以上出勤が全体の45%もいます。西村経済再生相の言う「さらに強い措置」は何を意味するかは解りませんが、どう見ても出勤者7割減は難しく、強い強制力がない限り無理な数字だと言わざるを得ません。
■参考:日本生産性本部「第4回 働く人の意識に関する調査 結果レポート 」より
確かに、昨年春の最初の緊急事態宣言時は、新型コロナウィルス感染の状況もまだまだ把握できておらず、手探り状態で一斉に在宅勤務、テレワーク、休業を行ったこともあります。
しかしそれなりに感染の状況が解ってき始めたことや、自粛疲れや、何よりも経済、ビジネス停滞の危機感から、出勤での仕事を余儀なくされていることは否めません。
在宅勤務やテレワークの向き不向きなど企業の中での試行錯誤の末、現在の状況(出勤減3割)になっていると思います。
一部大手企業では、出勤数7割減を実施しているところもあり、損保ジャパンでは東京本社への出勤者を8割減、第一生命でも本社出勤7割減を厳守、日立は都内で7割減などが発表されています。
ただ職種別にみると、テレワーク実施率は管理部門の仕事、専門技術職、事務職などか圧倒的で、販売、サービス、生産系の仕事に至っては10%も満たない状況です。
そして製造業、特に生産現場や接客業、運輸業など現場に社員がいないと成立しない業種にとっては、交代出勤や休暇などの措置はあっても全体で出勤者7割減は到底不可能な数字なのではないでしょうか。
政府もザックリとした出勤者7割減ではなく、業種業態あるいは職種によって変えるような細かな規定を設けてもいいのではないでしょうか。
企業、働く側が求められるモノ
一方で、新型コロナウィルス感染の影響に関係なく、在宅勤務、テレワーク、地方移住などは元々『働き方改革』で推奨されていたものです。
厚労省も企業向けにテレワークに関するガイドラインの改定を行っています。
■テレワークガイドラインの改定等について(厚生労働省)
企業側に強制力はありませんが、良質なテレワークを本格導入の際に指針となるものです。
出社せずとも、安心して働ける環境で実際の業務に即した形で仕事が出来るようになることを前提とし、「不必要な押印や署名、会議の見直し」「勤務時間の管理」「テレワーク環境のチェック」など細かな指針が出されており、昨年より本格的に始まったテレワークに関する企業側、働く側の不安、不満など声を反映したもので、テレワークを妨げる古くからの業務慣習の見直しを推奨しています。
ただ中小企業においては、テレワーク環境設備やそもそもの業務のIT化に関する費用の問題なとが大きく、実施が難しい状況です。
さらに在宅勤務用の個人の設備(機器、デスク、通信環境)やその費用に関する課題もあります。
だからといって今のままで何となく進めていたのでは、働き方の観点から時代に取り残されてしまう会社になりかねません。
コロナ終息後も多様化した勤務制度は変わらないでしょう。
テレワーク、在宅勤務、地方からの参加など勤務体系だけでなく、副業での委託契約、個人事業主化など、企業と個人の関係も働き方は様々な形で多様化していくのは間違いありません。
そのことを前提に、企業側はジョブ型個人契約、副業・兼業解禁、他社副業人材の活用、個人事業主化、在籍型出向、そして新たな評価などの雇用制度と、テレワーク、在宅勤務、地方移住などの柔軟な勤務制度、環境の用意。
そして働く側は、何を(成果を出すスキル、能力)持って、どこに(一社or複数企業)対し、どこで(働く場所)、どのように(勤務状態)して、働いていくのかを考えなければならない時代になってきます。
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