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ゼネラリスト混迷の時代へ

前回記事「高度人材の確保に於ける新入社員の高額報酬と中高年の課題」で、ソニーが新卒に初任給730万と言う話題に触れ、個々の専門性やスキルに重点を置いたジョブ型採用が増えてくると予想しましたが、間髪入れずにこんなニュースが

NECは新卒1000万、NTTは1億円 研究者待遇、世界基準に
(※参照 日経ビジネス)

AIを始めとする先端技術者の獲得に、ソニー、NECなどメーカーだけでなくついに通信技術の本丸NTTも動き出しています。
その年俸なんと「1億!!」
つい先日、日本のサラリーマンで年収1億円越えが何人いるかを東京商工リサーチが発表し(報酬が1億円以上だった役員は457人)、前年度より増えたと話題になっていたのが、随分陳腐な話題に聞こえます。
記事にもあるよう人工知能(AI)のトップクラス技術者・研究者であれば、GAFA各社は2億2000万、オラクルは6億6000万を提示していると言いいます。この分野では当然と言えば当然の流れでしょう。
世界基準で考えれば、思い切って1000万!!と提示しても無視されそうですが、仮にこの流れに乗って、実際に日本の企業に1000万級の新卒、1億円越のトップクラス技術者・研究者が何人も出で来ると日本の技術系の採用、雇用自体が大きく変化してくるのは間違いありません。

記事にもあるように、優秀な新人を高報酬で採用することに合わせ、社内の優秀な技術者の給与水準の見直しも必要です。
ただし「若手を対象にしたもの」と言うのが企業の10年先、20年先を見越した制度改革であることが伺えます。

リストラと高収入技術者採用の意味するもの

NECと言えば、ご存知のように昨年6月に2019年の4月1日までにグループ社員3000人を削減すると発表し、2000人超の希望退職者と400人が所属する関連子会社の売却など話題になっていました。
そんな折に、今回の新たな報酬制度の話。
NECの新野社長は、研究以外でも顧客企業向けのシステム開発についても国際競争に勝てるコンサルティング人材の育成に力を入れていくと語っています。

既存社員の削減、人件費の抑制と専門性の高い若い人材の高報酬での採用。

一見して相容れないようなニュースも、業績の良しあしに関係なく、技術革新とグローバルな競争、企業の将来を踏まえると企業が人材や雇用に関する方向性を変えていく流れが垣間見えます。
かつて日本のメーカーと言えば、昇進や給与面は文系優位と言われ、本社役員など営業系、管理系上がりが多いと言われていました。
技術職は研究部門、技術部門のトップ、研究所長や工場長が昇進最終地と言われ、その報酬も全社一律の給与制度の上にありました。
しかしその考え方も大きく変化していきます。
マネージャー、課長、部長と言ったポスト上の昇格ではなく、スペシャリティを評価しての高額報酬による契約の形が益々増えてくることでしょう。

ゼネラリストはどうする

若手の技術者採用、雇用形態や高額報酬の話題が続く中、残念ながらゼネラリストの話題は全くと言っていいほどありません。
リストラと業態改革の続く金融業界では、「もはやゼネラリストは要らない」と言う声も聞かれます。
入社5年程度、20代の若手社員たちは、仕事を通して、また業界の動向を見ながら、伸ばしていきたい自分の専門性を見極め、自己啓発やリカレント教育(社会人向け大学)など様々な学びの場に動き出しています。
その会社で上のポストを目指すことを目標とせず、退社しても社会で通用するスキルや専門性を磨くことに重点を置き始めているのです。
銀行では若手行員の離職が増えてきているという話は、その表れの一つでしょう。

問題となるのは30代後半からのゼネラリスト中高年組です。
もはや上に空きポストは無く、会社からはいつ早期希望退職の話があってもおかしくない。
今はそんな話が無いから大丈夫だとたかをくくっていても、時間は経って、いずれそのような境遇になるかもしれません。
早期退職のターゲットになった多くのゼネラリストたちは、「まさか自分が」と皆さん口をそろえて言います。

「来年の自分、3年後、5年後の自分は一体どこで何の仕事をしているのか?」
自分の将来と働き方を本気で考え、シミュレーションし、必要だと思う行動は、今からでも遅くないと思います。

(編集部)

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