40代50代の管理職の派遣
自ら積極的に動く人。あるいは転職を余儀なくされる人。
中高年人材の流動化は今年も益々進むと予想されますが、今後のワークスタイルとして注目されているものに「派遣」があります。
派遣と言えば、事務系、製造系の期間限定労働者のイメージが強く、この記事をご覧の方にも自分の部署で派遣社員を活用していた方も多いと思いますが、近年注目されているのが「管理職の派遣」です。
組織の課長、部長が「派遣で来る」と言われると、なかなかイメージしにくいと思いますが、実際に導入している企業も増えてきているようです。
元々、派遣の職種に管理職は一部あり、営業系や現場監督管理者系の仕事が多かったのですが、近年では特に大手企業の課長級だった人材が登録し、中小、ベンチャー企業へと派遣されていると言います。
大手課長クラス経験者の派遣に求められる専門性の多くは、ずばり「マネジメント力」です。
特に中小企業からすれば、当サイト「大手企業からの転職者に中小企業経営者が求めるもの」でもご紹介したように今後の事業展開や成長に関して、ビジネスを知る貴重な戦力として期待している部分が大きく、マネジメント力ある管理職に参加してもらう事に魅力を感じています。
しかし経営幹部、マネジメント職の直接雇用となるとそれなりにリスクがあります。「中高年の再就職を難しくしている大企業病」でも触れた通り、大手企業出身者を採用したものの使えない人材が多々いるからです。
したがって一定期間の派遣契約という形態は、受入側には何かと都合がいいのでしょう。
もちろん登録者もそれなりにマネジメント経験があるので、派遣先に求められる成果を踏まえ、割り切って働けるメリットがあります。それに風土、慣習、人材レベルなど派遣先の独自の課題にそれほど振り回されなくて済むのも利点です。
トヨタの課長級の異業種派遣
個人での仕事派遣とは別に、企業自らが「中高年の派遣」を推し進める話も出てきています。
トヨタ自動車は今年1月より、課長級の「基幹職」社員を他社に出向させる取り組みを始めたと報じられました。
出向先はグループ企業ではなく異業種やベンチャー企業にも拡大。対象となるのは基幹職の中で若手にあたるグループ長約7300人で、受け入れ企業と協議しながら各部署ごとに出向先を決めていくようです。
異業種または異職種での仕事をある程度の期間経験することは、業界全体の課題である環境変化に対応した人材づくりの一環だと言えるでしょう。
官公庁が、若手職員を一般企業に出向させ民間のビジネスを学ぶ経験を積ませる話や、大手金融が取引先に出向させる話はありますが、今回のトヨタように、超大手企業がある年代の管理者層を幅広い業種に派遣するケースは珍しいです。
今後他の企業にもこの人材育成手法は広まっていくかもしれません。
管理職派遣の課題
今後増えるだろう管理職の派遣ですが、いくつか課題も考えられます。
派遣会社登録型の働き方では、派遣契約期間は受入側の意向が強いという点もあります。
派遣で来てもらった管理職に、新規取引先の開拓や部門改革、人材育成などをお願いしたが、なかなか思った成果が出なければ即契約終了と言う事も考えられます。
仮に高い成果を出したとしても「はい!!ご苦労さん」で契約終了もあるでしょうし、派遣法で3年たったら社員採用義務化という壁もあります。
さらには派遣会社登録による紹介では、報酬体系が時給です。
高い時給で月収100万近い派遣もあるようですが、そもそも事業のマネジメントや人材育成などの量で測れない仕事に果たして時給でいいのかと言う問題もあります。
また上記トヨタのような企業からの出向型にも課題はあります。
「トヨタの看板がない武者修行」のような言われ方をしていますが、そもそも本人が「異業種への出向、派遣」に何を求めるかと言うキャリア開発意識や、受入先企業の研究、自ら発揮するスキルの把握、終了後の本人・派遣先両者のフィードバックの仕組みなど、うまくマッチングし成果が上がる出向でなければ意味がありません。もちろん派遣先企業のメリットも考えなければなりません。
それにトヨタなどの大企業の縦割り組織での経験や常識が、異業種、ベンチャーでは全く通用しないケースは多く出てきそうです。
おりしも終身雇用が難しい発言をし、中途の若手専門職の採用を増やしているトヨタですから、課長級の異業種派遣は、そのまま転職を促す手段だと思われるかもしれません。
就社型ではない働き方の派遣には何かと不安を感じる方も多いでしょうが、所属先を限定せず、専門性の高い仕事として割り切って働くのには都合がいいワークスタイルです。
あわてて次の就職先を探すより、色々な業種、色々な会社、色々な人材を学び、マネジメントのスキルアップに活かす期間と考えればトライする価値はあると思います。
(編集部)
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