中高年の転職、再就職が厳しいと言われる要因には、専門性、能力、年収、待遇・処遇などの条件に於いて、求める企業と本人との間にミスマッチが起きると言うことだけでなく、そもそも転職者自身が長年勤めた会社で醸成されてきた価値観や考え方、その上での働き方といったものが、転職に当たって応募先からは相容れない部分が多いからです。
「大手に居た経験を十分活かして欲しい」
と言う受け入れ側の本来の想いが、なぜ
「大手に居た人は使えない」と言う評価になってしまうのか。
そこには、所謂「大企業病」なる問題があります。
大企業病とは、実際にそのような病気や明確な定義は無いのですが
社員は不要な仕事を作り出し、細分化された仕事をこなすようになる傾向がある。
日本の大企業においては分社化とアウトソーシング、グループ会社同士の社員の派遣などが流行し、余剰資金のプールが多いが、売り上げに見越した利益を追従するまでには行かず資金が枯渇してくる企業が多い。
また、欧米と異なり、日本の労働基準法による解雇制限があることから社員をすぐさま解雇できないという特有の事情もある。(wikiより)
と紹介されています。
かなり赤裸々で辛口な内容ですが、日本の大手企業の多くが何らかの大企業病にかかっており、その状況を自社で認識していながらなかなか改革できずに結果的に業績の頭打ちや悪化、経営の危機状況に至っています。
例えば日本の産業を牽引してきた自動車、電化製品などのメーカー、そして半導体などのそれぞれのサブライアーが、新進気鋭の海外の企業に苦戦する状況になっているのは、単に技術力、開発力だけでなく、この大企業病が起因している部分も大きいでしょう。
そして労働基準法による解雇制限も大きな要因なので、早期退職者制度、退職金加算など中高年(特に45才以上)を削減していく流れは、今後もさらに加速していくと思われます。
このような状況を把握していながら、なぜ大企業病を克服できなかったのか?
これはひとえに「業績が安定していた・その規模が大きかった」ことが大きいでしょう。
業績の安定は、経営側、働く社員の精神的な安定を生みますが、逆に、新しい事業へのチャレンジや少しでもリスクを伴うことへの抵抗感も生まれます。
事業計画のスローガンに「チャレンジ」と言う言葉はあっても、実際にその方針に沿って行動することのモチベーションは出てこないのです。
「少々の赤字でも大丈夫でしょ」
「まあ我が社がつぶれることは無いでしょ」
「どうせ自分一人チャレンジしたところで何にも変わらない」
「逆に目立つとつぶされる」
こんな気持ちで働いていた中高年社員が、いざ早期退職、転職活動となった時、そういう考え方が無意識のうちに行動や言動に出てしまう。
大企業病は、そこで働いていた社員に対しても大きな弊害をもたらしているのです。
「大手に居た人は使えない」と多くの中小企業の経営者が言うのは、
「大企業病にかかった会社に居た人は使えない」
「大企業病にかかっている人だから使えない」という事なのです。
ただ裏を返せば、大企業に居ても、
「大企業病にかかっていない人・大企業病の症状が客観的に解っている人は充分使える」という事でもあるのです。
(編集部)
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