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大手企業から中小企業への転職者がつまずく些細なこと

中小企業の経営者の方のお話を伺うと、大手企業から転職して入社された方の中には、現場の社員達から「何それ?」「何で?」と疑問に思われるケースが多々あるようです。
些細なことなのかもしれませんが、その疑問がその人の不信につながり、挙句の果ては、「あの人の下ではやっていけない!」と、お互い関係がギクシャクし、せっかくの再就職も短期間での退社を余儀なくされるケースも多いとか。

これが繰り返されると「大企業出身者は使えない !」と。現に多くの中小企業経営者はそう言っているのです。

専門以外は無知なケース

転職の際の就活では、職務経歴書など専門のアドバイザーを交え、立派なものを作成されるる方がいます。
もちろん面接にこぎつけることが重要なので、多少盛って書くことはあるでしょうし、それを見た中小企業の経営者も多大な期待を寄せて面接に至るのかもしれません。

例えば「経理」と言う経歴ひとつをとっても、大手企業の経理マンと、受け入れ側の中小企業の求めるものには違いがあります。
大手企業の場合は経理部門だけでも最低数十名はいます。しかも経理の内容も、社外向け、社内向けなど再分化され明確なルールと業務の流れが存在します。完全にIT化されてパソコン操作ですべて完了する仕事も多いでしょう。
ですから長年その部門で働いていると、大企業の経理の中のある部分にかなり詳しく精通していきます。
知識やスキルは「狭く深く」身についていくのです。

一方の中小企業では、会社経理は会計士や税理士のアドバイスを受けながら処理していく所も多く、関係書類など紙ベースのものも多々あります。さらに管理部門の責任者(部長)を求める企業には、経理だけでなく総務や人事まで総括して対応する部門も多いのです。
つまり「浅く広く」を求めるわけです。

営業の仕事でも同じです。
中小企業では、テレビCMも無ければ、展示会でのデモがあるわけでもない。見本サンプルや商品紹介豪華パンフレットがある訳でもない。そんな中で商品をセールスしていきます。
当然のように会社の看板、名刺の肩書で商談は決まりません。
大手企業のように、単一商品・製品の販売や大きなパイプのあるルートセールスと言う仕事と異なり、幅広い商品知識やマーケットの知識と、どんなお客様でも対応できる高度な営業スキルが求められるわけです。
単純に営業のスキルの点で言えば、本当は大手より中小の方が高いのかもしれません。

さらに大手企業の人だから何でもできるだろうと言う期待もあります。
やっていた業務にはやたら詳しいが、それ以外は知らない。
売っていた自社商品には精通しているが、それ以外のものには全く興味がない。

これらのギャップが、相互に上手くいかなくなる要因の一つなのです。

画像はイメージです。写真提供PIXTA

ビジネスツールとオリジナルツール

一般の中途採用で事務職、営業職の募集の資格に多いのが、「ワード、エクセルなどビジネスツールの出来る人」と言う文言。
どの企業でも用いられるよくあるビジネスツールです。
その他、メール(メーラー)ゃスケジュール管理など多くのビジネスツールが活用されており、精通しているかどうかが採用の際のポイントな場合もあります。

ところが、大手企業はそのようなビジネスツールを自社開発している場合が多いのです。
システム関係の子会社が開発したアルファベットの「●●●●」といった名称の自社ツール。
経理などは当然ですが、顧客管理、売上管理からスケジュール管理に勤怠管理、会議室予約、社内文書管理、稟議といったものまで、イントラネットで確立されているのです。
コピー一枚もツールを通して、コピー部門がやる会社もあります。
業務効率化で開発されたので非常に便利なのですが、それに長年慣れ親しむと、一般的なツールが全く使えないと言う事態になります。

中小企業でもオリジナルツールを使ったり、パッケージソフトをカスタマイズして活用しているところも多いですが、イントラネットのツールはまだまだと言う所は多いのです。
文書はワード、表やグラフはエクセルで、プレゼン資料はパワーポイントで、社内のパソコンはwindowsで、共有するのはGoogleで、のような会社はたくさんあります。
転職する側のスキルで言えば、「表計算からグラフが作れない」「グラフ入り資料を作れない」「画像入りのプレゼン資料を作れない」では話になりません。
今の高校生にも劣ります。(小学校高学年からパソコン教育ですから)

転職した先で「●●●●は無いの? 」「あれは便利なのに」「面倒くさいことやってるな」なんて言ってしまっては、
「何それ?」「じゃあ貴方が作れば?」と言われかねません。

大事なことは自分がどうするか

部門の業務にしても、使っているツールにしても、不満を言っていても何の解決にもなりません。
郷に入らばなんとかで、その会社で必要とされる知識は勉強する必要があるし、ツールは使えるようにならなければいけません。
危機感を持っている中高年の中には、いち早くオフィスツールのスクールに通ったり、通信講座を受けている人も出て来ています。
参考記事 : [転職に向けたスキル・資格]学んでおきたいスキル⑴ ビジネスソフト(Word、Excel等)
たとえ一からであっても、学ぼうとする姿勢と実践が、新しく出会った社員たちの不信を信頼に変えていくのです。
大事なのは、転職先が現在どのようになっているかを正しく認識し、どのように工夫すればさらに効率的になるのかを考えること。
その上で、商品開発や新規事業、改善や効率化の方向を打ち出たり、転職者自身が先頭に立って変えいくことなのです。
「何年か先に、かつて自分がいた大企業みたいになればいいな」と思いながら。
中小経営者は、大手企業出身者のノウハウだけでなく、そういう取り組み姿勢も、強く求めているのです。

(編集部)

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