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遅れる公務員、管理者層の意識改革

国家公務員志願者減少と地方公務員志願者増加

昨年末に『国家公務員の志願者が年々減少している』というニュースが流れ、少子化の影響だけでない国家公務員の魅力、イメージの低下が話題になりました。
そして先月、公務員試験の申込者数などその詳細が人事院より発表されました。
参考:キャリア官僚志願者14.5%減 過去最大、働き方影響(日本経済新聞)

2021年度の国家公務員採用総合職試験の申込者数は1万4310人。前年度比で2420人減小。5年連続の減少で総合職試験を導入した12年度以降で最大の減少幅となっています。

その理由、背景として考えられているのが国家公務員の労働環境の問題です。
『霞が関ブラック体質』とも揶揄され、深夜や休日に及ぶ長時間労働が問題視され、学生に敬遠され始めているようです。確かに国家公務員は現在のコロナ禍における各省のスピードを求められる対応や、国会議員の質疑への対応など日夜問わず急務で激務のイメージがあります。
しかし国の政策を司る仕事としてのステータスは高く、ハードワークであっても国家公務員総合職・官僚への人気は依然高いものでした。
それがここ数年志願者減少する(仕事として希望する若者が減ってきている)事態になってきているのは、単なるブラック体質のイメージだけではないようです。

昨年末に現役の官僚に関するニュースが流れました。
20代官僚の退職、6年で4倍超 河野氏「危機に直面」(日経新聞)

霞が関、各省庁が「いわゆる若手が抜けていく職場」になりつつあると言う内容です。
退職理由としては
「もっと自己成長できる魅力的な仕事に就きたい」との回答が男性49%、女性44%。
「長時間労働で仕事と家庭の両立が難しい」は男性34%、女性47%というものです。
働き方改革、個々人の自己実現とキャリアを推進する政府にあって、官僚自体の仕事が魅力的でなく、個人のワークライフバランスに沿わない環境であることが浮き彫りになっています。
ブラック体質のイメージ、そして、魅力的でない仕事、20代若手官僚たちの退職。
優秀な学生であれば敬遠する仕事、環境であるのは当然のことです。

しかし一方でこんな話題も。
参考: 地方公務員の人気が“一気に”復活。就活生の3割「コロナ禍で公務員の志望度が高まった」(businessinsider)

コロナの影響から多くの企業が新卒採用を手控えた影響からか、地方公務員の人気が上昇しています。就活生の約3割が「コロナ前と比べて公務員への志望度が高まった」と回答しており、市区町村の公務員の人気が一気に高まっているようです。
地元志向、安定志向が背景にあるのでしょうが、地方自治体は地元産業、中小企業の支援、都会からの移住者支援や高齢者対策など課題は蔓延しています。
若手公務員が地元の為に如何に成果ある活動を実現できるかが今後の課題になることでしょう。

問題の根っこは企業と同じ

国家公務員のブラック体質イメージ、若手官僚の離職増加からくる、国家公務員志願者の五年連続減少しており、働き方改革が浸透しない組織、労働環境になっているそもそもの原因は、ひとえに『管理職の意識』です。
現在各省庁にて管理職になっている人材は、がむしゃらに働き、力技でポストを手に入れた人が多く、ハードワークは当たり前の価値観を持っている人が多いのです。
早出残業は当たり前。コロナ禍においてもテレワークを推進できなかった省庁が多いのは、この管理職の意識に起因していることもあるでしょう。

これは働き方改革を本質的に推進できない大企業にも共通する要因です。

『変えられない昔ながらの働き方』『過去の成功体験からくる価値観』に縛られ、自ら変えることのできない管理職が、抵抗要因となっています。
当サイトの「脱ハンコ・ペーパーレス化への課題と働き方」でも書きましたが、時代の変化、求められる働き方に対応できない原因の根っこは『経営層、管理層の意識』。過去の成長、成功体験に基づくそれらの考え方は、子供の頃からパソコン、ネットに親しみ、無理無駄を避け効率的に物事を進めてきた若い世代、仕事が全てではなくワークライフバランスを重視している世代には全く通じないのです。
自ずと「理解、共感、納得」より「指示、命令、報告」中心のマネジメントが横行し、結果的に時代遅れで人気のない職場、企業となってしまうのです。

現在、大企業の経営層は、新たなニーズに対応した商品やサービス、時流の変化に沿った経営、社員個々の働き方などを全面的に見直さなければ、売上は減少し、企業として生き残れない事に危機感を感じ、様々な施策を展開し始めています。そして同時に管理職在り方を見直したり、余剰な中高年人員のリストラに着手しています。
しかしながら公務員、省庁や自治体、公的団体などには競合や倒産も無く、組織の存在に対する危機感を持ちにくいのが現状です。顧客サービス、ペーパーレス化、デジタル化、IT促進、働き方改革など全てにおいて遅れている原因は、そのような危機感の欠如が起因しているのかもしれません。

人気が高まる地方公務員の地方自治体組織も同様に、管理職の意識一つで今後が決まります。
政府では霞が関の管理職のマネジメント研修をやっていくと言う話もありますが、手法やスキルではなく、意識改革の教育を期待したいところです。

一方で政府は今後、国家重要案件の一つであるデジタル化促進の為に、技術系の公務員の人材確保補に今後力を入れていくと発表しています。
民間志向強い理系学生、人事院が初の採用イベント…技術系公務員の人材確保へ(読売新聞) 
『デジタル人材枠』なるものを設け積極的に採用していくようですが、組織づくりはどのようにするのか、スキルや専門性に応じた報酬をどうするのか、働き方、IT環境などもどうしていくのかなど、多々疑問は残ります。

そして何よりも「誰がその組織をマネジメントするのか」が気になるところです。

デジタル人材、技術職の現代的なプロダクトマネジメントを熟知した人材を外から登用すれば良いのですが、もし他省庁から異動してきたベテランの管理職だったりすれば、日本はまだまだデジタル化後進国のままかもしれません。