新しい記事のお知らせ

日本型雇用とジョブ型雇用の両立

銀行がジョブ型雇用を導入

4月に新たな期を迎え、現在多くの企業が新たな方針を打ち出す中、未だに賛否両論ある『ジョブ型雇用』が徐々に浸透してきています。
メーカーを中心として一部進んできていたジョブ型の雇用ですが、ここに来て業態転換待ったなしと言われる金融業界においても、ジョブ型雇用の導入が検討されています。

三菱UFJ銀行が来年、2022年春に入行する新卒社員から、能力によって給与水準に差をつける制度を導入するとのこと。ITと融合した新たな金融サービス「フィンテック」の進展で、金融工学やデジタル技術に精通した専門人材を対象として、新卒でも年収が1000万円を超える可能性もあるということです。
終身雇用、年功序列、労働組合など典型的「日本的雇用」、転勤、異動などのキャリアステップの代表例のような銀行が、その根幹にメスを入れることで話題になっています。
参照:三菱UFJ、1年目で年収1000万円も…新卒採用に「ジョブ型雇用」は成功するか(Sankeibiz)

言うまでもなく「ジョブ型」とは、人に仕事をさせる発想ではなく、仕事(業務)に必要な人材を獲得し配置するという発想です。
経団連によるとジョブ型雇用とは「特定のポストに空きが生じた際にその職務(ジョブ)・役割を遂行できる能力や資格のある人材を社外から獲得、あるいは社内で公募する雇用形態のこと」(経団連)定義しています。

当サイト「高度人材の確保に於ける新入社員の高額報酬と中高年の課題」でも触れましたが、専門技術を有する高度人材の新卒採用に関しては、ソニー、ヤフー、LINEなどがIT関連が高額な年収(新卒にしては)で採用するという流れが以前からありましたが、総合職中心の人事制度で対極にある金融、銀行がジョブ型雇用を導入することで、業界、業種に関係なく、取組む企業が増えてくるのではないでしょうか。

さらに新型コロナウィルス感染の影響による業績の不振や、働き方改革の流れからくる社員個々の生産性UPなどの観点から、「辞めない社員を雇用し続け、処遇し続けなければならい」と言う日本型雇用の負の側面が改めて浮き彫りになって来ています。昨年より中高年社員の早期希望退職者募集が多くの企業で行われているのも単なる業績不振からくる人件費削減策だけで無く、人事制度そのものの見直しも行われるキッカケとなっているようです。

日本型雇用、ジョブ型雇用、求められる両立

ジョブ型雇用を推進している一部企業、例えば日立、富士通や資生堂などは、制度の詳細では各社異なります。ジョブ型雇用制度は企業が求める今後のビジネス展開に沿って、求める職種や技能レベル、細かな雇用関係など制度自体も徐々に変わっていくと思います。
ただ、そのメリットは共通のものがあり、例えば、よく言われるジョブ型雇用で利点とされていることに
「採用の祭、応募者のスキルが明確なので即戦力で期待できる人材を採用でき、採用された側も仕事にミスマッチが無く継続雇用が可能」「グローバルレベルの人材獲得競争における高度人材の獲得が容易になる」「労働者高齢化が進む中で職務と処遇を一致させることが出来る」などがあります。
一方で、ジョブ型雇用には未だ慎重な意見も多く、
「新卒一括採用の状況では、マッチしないのでは」「与えられた仕事だけをこなせばよいという捉え方をする社員が増えていきそう」「業務のマンネリ化や業務内容がブラックボックス化しそう」などの声もあり、特に中小企業では、ある調査によると「業務を細かく分けられない」「業務が属人化しており、ジョブ型への移行が困難」などの意見も出ています。
この意見の内容自体が、企業を低迷させる要因であるという考え方もありますが、未だジョブ型雇用にネガティブなイメージを持つ企業は多いと思います。

確かに従来の日本型雇用にも幾つものメリットがあります。
これからは企業が、ジョブ型雇用も導入しながら
「社員に求めるスキルとそのレベルを予め想定し、その為の育成や教育、社内外での学び環境を用意し、その元で活躍する社員の成果を正しく評価し報酬、処遇に結び付ける制度を作り、全社員納得の元、運用していくこと」が求められるでしょう。従来の日本型雇用の利点と合わせ、両方の良いところを取り込んでいくハイブリッドな制度も検討されることでしょう。

一部のジョブ型雇用の導入は、その起点になればいいのではと思います。