2020年も新リストラ(黒字リストラ)が増えるだろうことは予想されていますが、一連の中国からの新型コロナウィルスの影響もあり、旅行観光業だけでなく中国内生産拠点の休止の煽りを受け、ここにきて多くのメーカーが業績の下方修正を発表しています。
決算後の来期計画も未だ不透明な要素があることから、更なる社員のリストラを計画する企業も出てくるでしょう。
オリンピックがあるとは言え、今年~来年が生き残りと事業再生をかけた正念場と言えるかもしれません。
そんな中、昨年から数々の話題を提供してトヨタが、以下のような発表をしました。
◆トヨタ系サプライヤーが役員スリム化に動く、グループあげてスピード経営(ニュースイッチ日刊工業新聞)
「かんばん方式」の名称で一世を風靡したトヨタ自動車とグループ系列各社ですが、既に役員体制を見直していた数社に加え新たに幾つかの会社が役員の半減や、部長などの階層との統合を進めるようです。
「経営のスリム化とスピード重視の組織」を目指す大手企業は多く、トヨタのようにグルーブや系列会社の経営層のスリム化に着手する企業は増えてくるでしょう。
マーケットの変化をどう捉えるか
経営のスピードを加速させなければならない大きな理由は、マーケットの変化への対応とよく言われます。
一昔前なら、顧客のニーズ、マーケットの需要の変化もさほど大きくなく、事業構造やサービスの形態に大幅なテコ入れは必要なかったかもしれませんが、現在は1年、半年などの短いスパンでマーケットの変化を捉えなければ対応できない状況になってきています。
例えば自動車業界で言えば、ワンボックス、電気自動車、ハイブリッドカー、など時代の要請に応え次々に開発してきていますが、一番の大きな問題はマーケット全体で「クルマ離れ」が加速していることかもしれません。
特に若者のクルマ離れは、少子化と相まって社会的な現象で語られています。
そして単純に「若者の人口が減っているから」「所得が伸びていないから」と言った表層的な理由でマーケットを見るのではなく、彼らが離れる根本的な理由をつかむ必要があります。
詳しくは、若者のライフスタイルに関する様々な報告を見ていただければと思いますが、
端的に言えば、現代の若者は「所有」することに興味、意味を感じておらず、「体験や共有」に楽しみを感じると言う価値観だということです。
例えば「クルマを持つ」ことより「何らか目的を持ってドライブに行くことの体験」に価値を感じているという事です。マイカーかレンタカーか、車種や性能はさほど関係ないのです。
同じように、一人暮らしでテレビは持たない代わりにニュース話題はSNSで、映像は動画プラットフォームeで、読書はスマホアプリで、とテレビや新聞、雑誌、家具など「所有することから利用すること、さらには共有すること」に価値を置いています。いずれマイホームの所有観も変わるかもしれません。
今後の経営の課題は「少子化だから売れなくなる、利用者が減る」のではなく「彼らの価値観合わないから買われない、利用されない」ということになっていくのです。
逆に「借りる、使う、体験する」に関しては一定の費用も惜しまない。
現在月額固定のサブスク(サブスクリプション)ビジネスが広がっているのも、その予兆の一つでしょう。
後20年、30年もすれば、今の若者たちと下の世代がマーケットの中心になります。
その時その時で彼らマーケットは何に価値を感じ、何に対価を払うのか。
それらを捉え、対応したビジネスを展開することが求められてくるのです。
さらに彼らのライフスタイルを知ることで新たな価値を生み出すビジネスが出でくるかもしれません。
従って経営のスリム化と組織のスピードアップは、単なるIot製品の開発やサービスのIT化だけでなく、ユーザーのライフスタイルどこにニーズがあるのかを捉え、単なる商品販売、サービス提供ではない新たな価値への仕組みづくりを短期間で開発するために必要な要素です。
これはメーカーに限らず、金融、流通小売り、エンターテイメント、ゼネコン、インフラ業界など全業界に当てはまると言っても過言ではないでしょう。
このように常日頃からマーケットの変化=新たな顧客層の価値観を上手く捉え、今の経営に活かそうと常に問題意識を持って世の中を観察し提案している役員、社員はリストラ対象にはならないでしょうが、反対に掛け声だけでスリム化せずスピードが出ない会社の場合は、自ら辞めていくことでしょう。
(編集部)
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