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日本的雇用制度の限界 ~トヨタ自動車社長の発言が投げかけたもの

日本的雇用制度の限界

既に各マスコミでも取り上げられ話題になっていますが、トヨタ自動車の豊田章男社長が日本自動車工業会の会見で、従来の終身雇用に対し「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と述べ、各所で波紋を呼んでいます。

その昔、大規模な社内運動会を催すなど理想的な日本的企業として愛社精神に満ち溢れた大企業トヨタ自動車も、グローバル展開で世界と戦う中、日本企業における特徴的な雇用制度(終身雇用、年功序列)が間違いなく「重荷」と化していることを暗に示唆しているようです。
ご存知のように近年の自動車産業の急速な技術革新に対応し、世界基準の競争原理の中で展開を求められ、世界30ヶ国近くに50以上の事業体を有し数多くの外国人社員を雇用している現在、「年功序列」「終身雇用」はたまた「退職金」など日本型雇用慣行は全く理解してもらえない側面もあるのではと思います。

新卒で入社し、安い給料で高い生産性に寄与し、年次の昇給を経て右上がりに給与は上がり、中高年になって逆に生産性に見合わない高収入になってしまっても、定年までの長期間雇用契約で考えると結果的に「割に合う」と言う、高度経済成長期のサラリーマン的な働き方は、スキルと専門性が高ければどんな若手でも高額の報酬で契約するグローバル企業と戦えず、日本型雇用制度は今や経営の足かせになっているのです。
以前ある大手企業の人事部の方は、「大艦巨砲は既にイージス艦には勝てない」と表現しました。
今回の豊田社長の発言以外にも経団連の中西宏明会長も「企業からみると従業員を一生雇い続ける保証書を持っているわけではない」と話しています。
雇用慣行の見直しは、間違いなくグローバル企業から始まり、今後国内大手や上場企業へと広がっていくでしょう。

キャリアオーナーシップの必要性

社長の発言を受けて、現在のトヨタ自動車の社員、管理職の方々がどのように考えているかはわかりませんが、先に見えていた階段やレールが、途中からぼんやり見えなくなってきたのは確かだと思います。
だからこそ、自身の働く人生を長い目で考えたキャリアオーナーシップが大事だと思うのです。
キャリアオーナーシップは「自分のキャリアは自分のものであることを自覚し、自らどうしたいのか、どうなりたいのか、どうあるべきなのかを考え、納得のいく仕事、働き方を続けていくために、行動していこう」と言う当事者意識を強く持つことです。
年功序列、終身雇用などは、企業側が用意した制度慣行にしかすぎません。
今のうちに、「どのようなキャリアへ経て行きたいか、そのためには何が必要なのか。そして今何をすべきか」を自問自答し、具体的に行動に移していくことが重要です。
転職、転身、独立だけでなく、その企業に残る選択肢ももちろんあります。
その場合でも、今後変動するであろう企業の中にあって、どのようにキャリアを積んでいくのか。
間違いなく業界で求められる「対外的にも通用するスキルや専門性」の学びをどうしていくのか。
日々考えながら、少しづつでも行動に移していことが求められます。
時は待ってくれません。
気づいたら、早期退職者制度の対象者になり、次の就職先がなかなか決まらないということが無いようしたいものです。

(編集部)

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