「我が社はマーケットの変化、顧客のニーズを踏まえ中長期的な戦略を元に…..」
会社員の皆さんなら、聞き飽きたぐらい当たり前の文言です。
大手企業なら、これに社会貢献、地域社会、豊かなライフスタイル、グローバル、などの装飾がついてオフィシャルサイトに掲載されています。
そしてその理念のもと具体的に中長期(3ヶ年、5ヶ年など)の事業計画や単年度の売上、利益の計画が立てられます。
しかしながらその事業計画自体、景気は良くなってきているものの、失われた30年と言われる間、大手企業の大半で、それ以前の売上げ・規模拡大路線から、利益に重きを置いた企業体質の強化に変換し、新たな分野、マーケットへ事業展開とその模索に費やしてきました。
IT関連などの一部を除き、倍々成長は過去のものになっており、中長期の事業計画は、業界内差別化、AIとの連動、異業種とのコラボ、新規の付加価値事業など、過去の本業拡大路線とは一線を画するものとなってきています。
「あの会社がそのサービスをやるの?」「その分野に?」 など、一見するとイメージしにくいプレスリリースはここ何年か増えているのはご存知だと思います。
事業計画と人員計画
そんな中で必ず経営の大きな課題となるのがその事業計画に順ずる人員と体制についてです。
5年後、10年後、いや2年後には、どのような体制で何の事業にどれぐらい注力するのか。
経営側の事業計画には必ず、組織編制、体制や人員計画が同時に論じられます。
長いと20年先、30年先の企業像、事業像までイメージして計画を立てるのです。
このサイトをご覧の皆様は、自社の事業計画と、どんな体制でそれを推進しいくのか、どのぐらいの売り上げ規模を目指しているのかをご存知ですか?
売上、利益計画(予算とも呼ぶ)は年次で発表されるのでご存じたと思いますが、その事業計画に自分はどう関わっていくのかをイメージできているのでしょうか。
会社の将来の事業を推進するメンバーは、間違いなく今の若手社員達です。
自分もかつてそうだったはずです。新商品、販路拡大、新規事業、新サービスなど若手時代に取り組んだ方は多いでしょう。
何故なら、その当時の事業計画に貴方自身が大事なメンバーとしてエントリーされていたわけですから。
経営側は新たな事業展開に必要とされる人材の投資には注力を注ぎます。
例えば電機ハイテク関連企業では、海外の競合と戦うために開発部門の人材を。
新薬の研究開発が生命線となる医薬製薬業界もまた同様に研究開発部門の充実を。
消費者向け商材メーカーは販路拡大よりもネット流通などIT部門の強化を。
既存事業の拡大人員ではなく、新規分野事業への人材にシフトするのは当然です。
しかし事業計画に沿った人材の拡充は、ある意味投資でもあるので、出来るだけ全体の原価は押さえたい。それが今、中高年社員にしわ寄せとしてやってきてくるのです。
厳しい言い方をすれば、今後役に立ちそうにない人材は新たな事業計画にはエントリーされず削減対象になるということです。
少々例えとしては極端かもしれませんが
「成人して社会人になって何年もたつのに、自宅に一円も入れず、遊んでいる息子」をずっと面倒見る気のない父親は多いでしょう。
まして、無職で家の何の役にも立たない息子だったら、出で行け!! 自立しろ!! と怒ります。
企業も同じかもしれません。
その企業で将来的に役に立つかどうか、居てもらう価値はあるかどうか、そのような目線で人員計画を考えるのです。
「今ではなく将来」と言う角度でです。
事業計画と自分
多くの大手企業が人材サービス会社などと組んで専門のチームを作り、内々に計画を立てます。
それは業績好調の時でもです。
先の事業展開とそれに対する人員計画、そして最低限のポスト。自ずと、百人、千人単位での人員削減の計画につながるのです。
そして社内の動揺や業界内での評判を恐れ、計画は内々に行われ、ある時期に「早期退職者募集」と言う告知がなされます。
大企業の人員削減・希望退職者募集のニュースには必ずと言っていいほど、中期計画の同時発表があるのはこのような流れからです。
業績が悪化したから人員削減と言うケースを考えがちですが、実はそれでは遅いのです。
現に業績悪化→再目標→人員削減→業績悪化→再々目標→さらなる人員削減、と言う悪いスパイラルを繰り返す大手企業もあります。
「人情のかけらもないシビアな世界」と思う方もいるでしょうが、どの企業も必ず若返りを図ります。
新卒で入社しそれなりに仕事をしていれば、定年まで働ける企業はもう無くなっていくでしょう。
時代やマーケットの変化をとらえ、常に業態改革をしていかなければ大手と言えども生き残っていけないのです。
改めて、自分の会社の向こう3ヶ年、5ヶ年の事業計画を見て
それを達成する為には会社は、部門はどうなっていればいいのか?
そして自分はそこにいるのか? (居れるのか? ではなく、必要かどうか)。
その時どんな能力、スキルを求められているだろうか?
それらを冷静かつ客観的に考え見る必要があるのではないでしょうか。
「今まで成果を上げてきた」「今頑張っている」では通用しなくなっています。
事業計画とは、将来の会社の中で自分が見えるかどうかの計画なのかもしれません。
(編集部)
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