国内最大手の三菱UFJ銀行が、成果主義の要素を強めた賃金制度の導入に踏み切りました。
金融業界はフィンテックやCMで連呼される××PAYなどに見られるキャシュレス化の波を受け、異業種の参入など競争が激化。メガバンクに限らず多くの銀行は抜本的なコスト構造の見直しが急務とされてきています。
確かに大手メガバンクや地銀はここ何年かの間に、支店の統廃合や早期退職者制度による人員の削減など様々なニュースで注目されていましたが、賃金制度に成果主義を強める話は初でしょう。
賃金制度に成果主義を積極的に導入することに関しては、ご存知のようにここ20年あまり、多くの企業がトライしてきています。しかしながら、制度自体その設計内容も様々で、「体のいい人件費カット」「年功序列型給与体系の廃止の言い訳」「単なる人件費の抑制」などのイメージや悪評もあり、上手く導入できなかった企業も多いのが現実です。
そもそも、成果主義的制度は日本的経営には合わず、雇用契約自体が欧米と異なり、導入自体に無理があると言う声もあります。成果主義をポジティブに捉え、制度設計を前向きに行う企業でさえ、仕事の評価軸設計(特に事務系、管理部門)に苦労し、目先の数字目標だけに重きを置いた歪な目標管理評価制度に振り回されているケースも少なくありません。
銀行と成果主義、一番の課題は
そもそも銀行は、投資での金利や手数料収入が中心の業務で、競合との差別化、優位性がなかなかな出しにくいビジネスです。その業務には数字、情報の正確性を求められ、ミスが許されず、個人プレー、個人独自のノウハウが生かされにくい仕事が多いでしょう。
そこに、経営とコミットした個々人の目標達成に向けての戦略戦術、プロセス管理、そしてアイデア、個人裁量権などの概念を持ち込むことは容易ではないことは想像がつきます。
三菱UFJ銀行のニュースでも「銀行業務で多いチームプレーの要素や数字に表れにくい下支えの業務をどう評価するかなど、運用上の課題も残されている」とあり、制度設計から導入、運用には時間を要することでしょう。
しかしながら、成果主義を踏まえた賃金制度の導入における一番の課題は違う所にあります。それは「評価」においてです。
評価軸、基準、項目という事でなく、評価者自身の課題です。
多くの企業が成果主義を踏まえた目標管理評価制度導入がうまく運用できずにいる大きな要因は、この評価者にあります。
評価軸に沿った正しい評価ができるか?
個人的感情をどこまでフラットにして部下の評価を行えるか? など、評価者自体の訓練を徹底して行うことが重要です。成果の評価は目標設定時、フィードバック時の評価者とメンバーのお互いの納得がキーなのですから。
銀行においては、この評価者訓練こそが最も重要なファクターになるでしょう。
ある種の年功序列で上がった上司、役員たちが評価者になり、フラットに賃金査定を行うことが出来るのかどうか、そこが一番重要だと考えます。
この評価者訓練で、100%成果主義とは言わないまでも、成果に重きを置いた制度を上手く活用し社員の戦力化、活性化に繋げている企業も多くあります。
ただしそういった企業は一方で、成果を上げる若手の台頭による上司との逆転現象、社内活性化を受けての部門再編成などで中間管理職の余剰人員化や整理を生み出しているのも事実です。
銀行の成果主義を重んじる賃金制度の見直し。
業界内競争激化、人件費抑制だけではなく、中間管理職層の役割り、存在価値を新たに問うことにつがるのではないかと思います。
(編集部)
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