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仕事と家庭と人生のバランスの取れた生き方

【東京都 Hさん 40歳 システム関連会社勤務 → 転職活動中】
各種エンジニアを始めとする技術職は、ある程度のキャリアを積むと必ずと言っていいほど管理者と言う立場を求められます。技術者として視点と経営側に立つ視点、全く異なる二つのどちらに進むのかが求められます。どう考えて如何に行動するか。ある転職活動中の方の声をお届けします。

40代 技術職の転職

社会人になって十数年。苦労はあったものの、働くという事に違和感を覚える事なく40代を迎え、現時点の業務にも大きな不満はありません。入社したての頃は、まだ具体的な目標を立てることもかなわず、まずはプログラマとしての仕事を覚えるために業務に没頭しました。仕事を覚えてくると、上流工程やお客様との折衝などを任されるようになり、結果として収入も増えたため、満足感もありました。そういった経験を積んでいき、40代に入った頃には人材育成やマネジメント、経営者視点が必要となる責任のある業務も任されるようになり、また違った仕事の面白さを感じるようになりました。
個々の要素だけを見るとやりがいもあり生活にも不満はなかったのですが、それでも「転職をしたい」と思うきっかけがあり、悩んだ結果、現在転職活動をしています。
その経緯についてお話をしたいと思います。

見えなくなったキャリアパス

まず結論から言ってしまうと、転職を決意したのは、自分が目指したキャリアパスが、今の会社では見えなくなってしまった事で不安を抱いてしまった事が原因でした。

画像はイメージです。写真提供PIXTA

私の所属する会社はいわゆるSIerで、開発案件を受注するのが主な売上に繋がります。そういったなか、基本的な会社の方針として、責任者は経営者としての視点をもつよう強く求められ、毎週売上や経費などの細かい数字管理と報告を求められるようになります。そのため責任者の多くは、その報告書の作成に多くの工数をとられるようになるのです。
これは開発部門も例外ではありません。営業職だけではなく、どの部署においても同じで、どのように売り上げを確保するのか、経費を減らすのかに労力の多くを割くことになります。時には売上のために隣の部署とも争う事がありますし、売上が達成出来ない月は厳しく上司から問い詰められます。
確かに経営者としての視点でいえば、そのやり方も間違いではないと思いますし、結果も出しているため一つの正解なのかもしれません。
安定した経営は会社としての安心感にも繋がりますし、今のまま業務をこなしていれば定年まで無難に過ごせるのだと思います。
しかし、それが本当に自分のやるべき仕事なのか、やりがいを感じる事ができるのかと考えたとき、そうだとは思えなかったのです。
私自身はプログラマからシステムエンジニア、プロジェクトマネージャと経験を積んできました。今までの経験に少なからず誇りはありますし、今後もそのスキルを活かして仕事をしていきたいと考えています。
ですがそういった技術的な経験はほぼ活かすことのできないキャリアパスしかない今の会社にいる以上、出来ることは限られています。
現状の課題を伝え改善を試みた事もありますが、古い体質の会社という事もあり、風土を変えるには至りませんでした。今まで売上を目標としてしまっていたため、投資要素の多い案件やリスクのある案件にどうしても及び腰になってしまうのです。
例えば新しい技術を取り入れようとすると、そこにどのようなリスクがあるか見えないため、学習コストが掛からず、リスクもある程度見えている既に身につけた技術を使って開発をしようとします。これでは新しい技術を身に着けられず、緩やかに衰退していってしまいます。
しかしこのリスクを説明しようとすると「新しい技術で売上が向上するのか?」という説明が求められます。当然保証できるものではありませんし、技術を知らない人たちが責任者になっているため、感覚的に伝える事もできません。
しかしエンジニアとしては、新しい技術への好奇心ももちろんありますし、ビジネスとしても最新の技術を追いかけなければ、お客様へアピールする事もできません。特にお客様から「この技術を使って欲しいが対応可能か」という提案を頂いた時に、難しいと答えなくてはならない時には、技術職としてはとても口惜しい気持ちでした。
このようにある程度の規模の会社になってしまうと、ルールや社風を変えるコストは尋常ではなく大きくなってしまうのです。

5年後、10年後を考える

改善を試みた結果、先述したような技術の衰退や、競合他社に対し劣位となる事による失注、それに伴う営業との確執など多くの課題が見えて来ました。どこかの部門が率先して変革をしなければこの改善は難しく、あるいは私が会社にいる間に改善をする事すら難しいという事も理解してしまったため、不安を抱えたまま仕事をせざるをえませんでした。出来るだけ仕事に影響の無いようにと意識はするものの、やはり以前のような仕事に対する姿勢とは変わってしまったのです。
家族を養う必要もあるため、規模も大きく安定した企業で働き安定した収入を得る。確かにそれも大事ですが、私自身はこの先ずっとこの仕事を続ける事ができるだろうか、不満を抱えたまま耐え続ける事ができるだろうか、そう考えました。
もしこのまま仕事を続けると、この会社でしか通用しないスキルが身につきます。仮に5年後や10年後に後悔したとしても、そのようなスキルしか持っていないうえに年齢的にも仕事を変えられるような状況ではなくなってしまいます。
そういった事を考えた結果、家族ももちろん大事ですが、自分自身の思いも等しく大事だという考えに至り、転職を決意したのです。

決意して最初にしたこと

人生を変える決断でもあるため、まずは妻に話をしました。
元々会社の懸念なども話していた事もあり、その先の事も考えた結果であるという事を伝えると、全く反対される事なく背中を押されました。今の仕事を続けるメリットとデメリットを明確にし、転職をする時の前提などをきっちり伝えていた事が大きかったようです。
やはり妻は家の生活を支えているため、収入や家族のライフスタイルの事は考慮しているという事を具体的に伝えたのが良かったのかもしれません。
両親からは、大手企業から離れるという事についての不安は念押しされましたが、妻同様、具体的に説明し理解をしてもらいました。
家族がいる場合、仕事を変えるというのは自分だけの事ではありません。心配しているかもしれませんし、誤解が生まれてしまっているなどといった事も考えられます。周囲も含めて不安を解消しなくてはいけないなと感じました。

転職活動を始めて

実際に転職活動を行うにあたって一番重要視した事は「慌てない」という事でした。いくら将来に不安があるといっても、今すぐ何かが変わるわけではありません。自分が転職して解決しなければならない事は何か、妥協できる事は何か、そういった事を明確にしたうえで考えなければ、今よりも辛い環境になってしまう事だって起こりうるからです。
自分の考えをまとめ転職サイトに登録し、エージェントの方にその旨を伝えました。様々な提案を頂いて検討をしていくのではなく、自分の思いに近いものだけに注力したかったのです。というのも、転職を検討し始めた時はエージェントを通さず転職情報サイトを見ていたのですが、情報量が多過ぎて目を通すだけでも負担になってしまいました。これでは本末転倒です。
またエージェントを通してでしか見ることの出来ない案件もあるため、情報の精査はプロの方にお任せして正解であったと思います。

転職とは

同様に転職活動をしている方とお話する機会もありましたが「現状の課題」があり「何をしたいか」が明確になっている方が多かったです。つまりそれだけの理由があれば、転職を考えてもおかしくありませんし、それが出来るだけの環境が今の時代にはあるという事です。
一昔前は、転職自体が恥ずかしい事だというような風潮すらありました。情報も少なく、相談できる人もいませんでした。
しかし今では情報はいくらでもありますし、転職自体も非常にポジティブに捉えられるようになったと思います。むしろより自分にあった仕事についた同僚を祝福するような風潮すらあります。
自分の人生は自分だけのもの、などと言うつもりはありません。同僚や家族、お世話になった先輩や可愛がっている後輩もいるかもしれません。
それでもやはり、その中心にいるのは自分自身なのです。決して自身をないがしろにする事なく、様々な可能性を追いかけてみる事で得られるものもあります。
同じように悩んでいる方がいたら、今の自分の状況を見つめ直し、整理をし、考え、必要であれば転職という道もあるのだという事を忘れないで欲しいと思います。


【質問1】Hさんにとって、仕事とは?
人生はジグソーパズルを組み立てていくようなものだと思いますが、その中の1ピースだと思っています。それが欠けては成り立たないですが、それ単体でも成り立ちません。何かを犠牲にして得られるものでもありません。仕事を含め、何一つ欠くことの出来ない大事な1ピースだと思います。

【質問2】キャリアオーナーシップについてどう思いますか?

何かをきっかけにして意識が出来るようになるとは思いますが、そのきっかけに気づけるかどうかが大切だと思います。突発的に身につけられるものでもありませんし、知識だけでどうにかなるものでもありませんので、日々の中でそういった事を考えるクセをつけるようにしておき、いつでも引き出せるようにしておくと良いと思います。