退職した背景
私は15年ほど勤めた金融機関で、念願の海外勤務を勝ち取ったものの数年で帰国命令が下ったことをきっかけに、その頃から「自分のやりたいこと探し」を繰り返し考える毎日を過ごしていました。また、海外の金融機関に勤務していた時と比較して、国内の金融機関では誰しもが効果を疑問視する毎日の非効率な会議や不透明な評価体系などへのストレスがあったのも確かです。更に、同僚が軽々しく陰口をたたく一方で更なる高みを目指そうとはしない姿勢を見たくもありませんし、年次や役職のみをかざして現在のポジションに居座ろうとするスタッフも所属させている意味が理解できません。
これを見た人はそんなことはどこの会社にもあると思われるかもしれません。ただ、私にはそんなことがとても大切で、「自分のやりたいことは本当にこんなことなのだろうか」「ここで働くことは本当に幸せなのだろうか」と自問自答しながら、日本帰国後は淡々と仕事をこなし1日1日と大切な「時」と精神をすり減らしていく毎日でした。
入社当初から、自分で決めた道で、その業界のプロフェッショナルになろうと毎日もがいたのも事実です。入社一年目から金融の基礎、グローバル社会で生き抜くための英語や会計知識、業務の効率化につながるITなどのスキルを身につけるため、毎日の仕事終わりもしくは朝4時台に起きて2時間以上は必ずカフェや自宅で勉強していました。当然ビジネスの会合や友人との飲み会後でも欠かさずにやってきました。本業の営業でも何度も賞をいただいいたことがあります。
短い海外生活の間で、表向きには「自由」に生きる自営業の方とも沢山お会いする機会があり、そんな発想や時間、精神的な自由を得られる起業家へのあこがれが芽生えていたと思います。上司や役員からの引き留めもありましたが、やはり自由を得たい一心で独立を決意しました。
金融ビジネスの変容
今、フィンテックの活用が金融業界に革新をもたらしています。5年、10年経たずして、金融機関がこれまで提供してきた業務の一部をAIや機械学習(ML)を活かしたロボットが担う時代がくるでしょう。たとえばアセットマネジメント分野の企業リサーチやリスク分析の一部、保険審査や銀行貸し出しなどの分野です。テラーや電話オペレーティングは既にロボットを活用している金融機関が出てきています。また、世界有数の投資銀行であるゴールドマンサックス証券がかつて500名いたトレーダーをわずか3名を残すのみとなっているほか、英国ではチャレンジャーバンクと呼ばれる伝統的な金融機関と同様のサービスをすべてモバイルアプリ上で提供するフィンテック企業も勢いをつけています。金融業界はフィンテックをもとに、まさに変革が起きています。中高年人材に限ったことでなく、専門性のない人にあげるポストがない時代になると思います。
このことから、今や終身雇用制が崩壊している日本で、常に次のビジネス機会を掴むべく専門性を高める必要があり、会社のカンバンではなく「どのような経験をできるのか」という視点から企業選びをする時代に突入しているのではと感じています。
言い訳して立ち止まっていても、人生の「時」は進んでいきます。そんな理由からも退社し独立することを選びました。
退社から現在までの流れ
そうは言ってもすべてを綿密に計画したうえでの独立ではなかったため、退職前後は非常にバタバタとやるべきことをこなしていました。やらなければならないこと自体、全てを把握してもいませんでした。ただ独立に向けて知らないことを自分のペースで、決して他人の悪口など口にせず、目標に向かって猪突猛進している時間はとても充実していたと、今思い返すとそう感じます。
集客面での戦略構築が全然できていなかったこともあり、現在はたとえばクラウドソーシングのサービスを通じて「financial-portal」名で仕事を請け負ってもいます。運よく大口顧客と契約でき、このまま安定的に業績をあげられれば、来年からは法人化も検討しています。
家族の説得
独立前後は子どもがいなかったこともあり、15年ほど勤めたサラリーマン人生をスパっと辞めることを上司に伝えた日に妻へ報告しました。妻はそれは驚きましたが、毎度自分の好き勝手に振り回されていることに慣れてきたのか、強く反対されることはありませんでした。妻には本当に感謝しています。今は子どもも生まれ、私は「自由」を追い求める分、「自立・自律」して家族を支えていかなければとも思います。
今の仕事のヤリガイ
フリーランスの翻訳家・ライターの仕事に限らず、フリーランスの場合、時間から仕事内容、クライアント先まですべてを自分自身で決める「個人商店」です。まさに、「本当にこの仕事は自分がやりたいことなのか」を常に考えながら、どのような仕事を獲得し、そのために自分をどのようにマーケティングしていくか、「発想」や「時間」の自由を得られたことは最大の喜びです。
当然、誰も守ってくれる人はいませんので、事業運営から案件獲得まですべてのことをこなしていくのは、口で言うほど簡単なことではないですが、そんなことは苦労ではないし、それを大きく上回る「自由」を手に入れられます。
私がサラリーマン時代に悶々と過ごしストレスや不満を抱えていた要因はこれだったのではないかと感じる毎日です。
毎日苦しくもがいていたサラリーマン時代という決してスマートでないし、もっと近道をできたかもしれませんが、人生100年時代に自由な生き方を実践できていることは、独立して本当に良かったと思います。
また、翻訳にしても記事執筆にしても、サラリーマン時代に嫌な思いをしながらも身につけた知識や経験がフル活用できていますので、自分で決めた道で猛烈に努力してみることは、本当にその後の人生に活きてくるのだなとひしひしと感じています。