はたして新人の頃に、今の自分が想像できただろうか?
20年先にこんな仕事をしていたい、こんな立場に居たいと夢を持ちそれに向かって邁進することはイイことだと思うが、その間に得た経験が、今や全く別の形となって現れていることを実感している。
私が前の会社でマネジメント職に就いたのは30才を過ぎたころ。大手企業によくある新任マネジャー研修に参加した時は、こんなにやらなきゃいけない事があるの? とげんなりしたことを覚えている。
自分自身の事でなく、メンバーやチームの成果、業績で自分を評価されること。
特にメンバーの育成に関しては、「なぜあんな奴らの昇給・生活まで自分にかかってるんだ!!」など不満を感じたり。マネジメントは経営側に立つことの意味を理解せずに、どこか自己中心的であったのかもしれない。
そうは言っても、自分の評価を上げるためには、プレーヤーだけでなくマネジメントをしっかりやるしかなく、メンバーの育成、チームの活性化などに力を入れた。
チームの目標設定から個々の戦術、実行管理や評価、自分のクライアントへの対応だけでなく、週の三分の一はメンバーの誰かと話をしている状態であったと思う。
自分のクライアントには勉強の為と言ってメンバーを同行し、またメンバーのクライアントには、上司としてのご挨拶同行するなど、行き返りの電車やカフェで色々な話をした。
しばらくすると、優秀なマネージャーと言う評価を頂いたが、メンバーの部門移動希望で、具体的に「●●さんのチームに行きたい」と私の名前が出るなど、残念ながら「下に慕われ、上からは疎まれる型」のマネジャーになっていたようだ。
転職を考える
下に慕われるが、上からは疎まれるマネジャーは、正直辛い。
特に年功序列で上がっている上長から見たら、嫉妬の対象となり、自分の居場所を脅かす存在でもある。その疎ましさもあってか、強制的な私のメンバーの移動(優秀なメンバーを抜かれ、そうでない問題社員を送ってくる)や、チームのさらなる目標のUPなどに現れる。
ストレスも多く、抜け出したい、転職したいと考えるようになっていた。
元々クライアントの広告関連のビジネスで、広告関係の企画や提案営業、制作物のプロデュースなどが好きであったので、そちらの方面で転職を考えていた。
事業推進の責任者、部下の育成やマネジメント、査定・評価などはもう勘弁と言う考えであった。
転職活動は本格的にしたわけではなく、取引先関係、仕事関係の延長から、IT業界の中の広告企画関連の仕事に転職をした。
転職してわかったこと
IT業界、特にWEBの業界はここ30年の業界。経営層、中堅クラスは他業種からの転職者も多く、人材の流動は激しい。
業界も企業も新しいこの世界では、人材育成、人事制度、マネジメント面が不十分なところが多く、経営者の悩みもそこが一番である。
転職して一番感じたのは、戦略的な人材のマネジメントの欠如だった。
事業の急成長に伴い、とにかく人を採用する拡大路線。一方で残業や休日出勤など労働環境面の課題。
プログラム、ディレクション、デザインなど専門スキルを問う仕事は多いが、それぞれにキャリアパスを考えて無く、このままでは役職の無い給与の高いベテランだらけになるのが目に見えていること。
経営目標はあっても、現場への落とし込み、個人のミッションとの結びつきがなく、さらに評価に結び付いていないことなど、課題だらけであった。
そして転職後の会社でそこを問題提起したところ、経営者より全面的改革に関する依頼が来たのである。
求められるもの
ネット広告関連の企画、サイトのディレクションの現場第一線の仕事で入社したはずだったが、半年後には、新体制、組織作成とメンバーの昇格や移動、目標管理ツールの導入、新人事評価制度を推進する仕事に変わっていた。
その手の仕事は苦手でしたくないとあんなに思っていたのに、いつのまにか人と数字のマネジメントの仕事をしていた。
中小で若い社員の多いIT業界は、メンバーの育成次第では急成長を見せる。
組織改革、制度導入に当たっては、全メンバーと個別に面談をして、彼らの要望を拾い、その意見も全社に共有しなが進めた。20才も年が離れているメンバーもついてきてくれた。
また新規事業の立ち上げや、「人、もの、金」を使ったプロデュースは、クライアントビジネスとの共通点も多く、それなりに対応できたことも大きい。
自分の価値
中高年で転職する際に、「できれば現在の仕事の延長で」と考える方は多いと思う。長年培った知識や専門スキルを活かせる仕事に就ければそれにこしたことは無い。
しかし、転職先の業界、会社規模、そして経営課題が見えたとき、自分が本当に力になれることは別のことかもしれない。
自分の思いとは別のことで評価されている場合がある。自分の強みを他者から言われ気づくこともある。
私の場合これからは、人と事業のマネジメントみたいな役割が増えてくるのは間違いない。
それは、「やりたい仕事だったか? 好きなだった仕事か? 」と聞かれれば、必ずしもYESではない。
でも「できる仕事」であり、好きになっていく仕事であると思っている。