老舗企業の転換期
大手企業の希望退職者募集のニュースが連日のように発表される中、精密機械の老舗、オリンパスがグループ全体で950人程度の早期退職を募集すると発表しました。
募集人数的には大型なので注目の話題になっています。
参考■オリンパス、国内で950人削減へ 早期退職を募集(日経)
対象は40歳以上勤続3年以上の正社員、定年後再雇用者、無期契約社員です。
オリンパスと言えば、精密機械の業界では勝ち組企業とも言われていましたが、不振の映像事業を売却し、現在の主力である内視鏡や治療機器など医療分野に集中していくようです。
募集期間は2021年2月1日~19日で退職日は3月31日と、例によって短期間で行われます。
対象層の社員の方は自身の今後の身の振り方など不安な年末年始を迎えることでしょう。
一般の方にはオリンパスと言えば一眼レフカメラなどで有名ですが、三年前のニコンの時と同様、デジタルカメラの低迷も背景にあるのかもしれません。ニコンの場合は、希望退職に1143人応募と想定を上回りましたが、オリンパスはどうなるでしょうか。
前回の「希望退職募集に応募が多い現状」記事でも触れましたが、企業の新たな事業分野へのシフトに不安、不満を抱える社員達が多数抜けていく可能性もあります。
技術やヒット製品で一時代を築いた老舗企業には、マーケットや市場のニーズを捉え、将来的成長分野へシフトする転換期が必ず訪れます。
平成不況、経済の低迷、そして今回の新型コロナウィルス感染による影響から、今後本格的に大きく舵取りを行い、そのための体制や人員構成を見直す企業は増えてくることでしょう。
事業の転換と人材
マーケットや市場のニーズを捉え、将来的成長分野へシフトする転換は今までも繰り返し行われてきました。
豊田自動織機が自動車に着手したのを皮切りに、いくつもの企業が事業分野、事業内容を変え経済を支えてきました。
有名なところでは、帝人、クラボウ、カネボウなどの紡績会社がバイオや化粧品に。JT日本たばこは医薬品、食品へ。日本電気や富士電機は通信分野、コンピュータ事業へ。など元々は全く違う事業だった会社が、技術の延長にある全く違う分野、市場で大きく成長したケースは多いのです。
但し、それらの事業の転換は、従来は新企業開発室から部門、新会社設立などゆっくりと時間をかけて行われてきています。
もちろん人材に関しても同様に、社内移動と再教育はもちろんの事、外部からの新規職種採用など時間をかけ戦略的に展開されてきました。
しかし昨今の状況では、短期間での希望退職者募集と言う「中長期事業計画と言うよりも急激に悪化している不採算部門の縮小による当面の利益確保のための策」としか見えないケースが増えています。
会社存続のためにやむを得ずと言う部分もあるかと思いますが、将来を見越した事業転換策を時間をかけて行わなかったツケは、経営陣に不安、不満を抱く優秀な社員、若手社員の離脱と言う事態を招いてしまいます。
瞬間的な人件削減は利益確保が出ますが、優秀な社員が抜けた社内は不満、不安で雰囲気も低迷したり、そのままじり貧になる会社も多いのです。
事業転換や新分野へのシフトには、人材の教育、適材適所の移動や配属、専門職の新規採用、そして新たなマネジメント体制の強化など様々な人材戦略が必要です。
その昔、オリンパス、ニコンなどと同様にカメラ関連で有名な富士フィルムは、ご存知のように新型コロナウィルスに対応した製薬で話題になりました。
「企業は成長している時こそ次のことを考え着手しなければならない」と言う言葉は昔からありす。
この状況に於いて、希望退職募集が無い社員の方、また募集があっても対象とならなかった社員の方も、
自分の会社は将来的にどの分野にシフトしていこうとしているのか?
マーケットやユーザーの嗜好は変化しているのに、従来の事業だけで成長をうたっていないか?
働き方改革に乗り遅れていないか?
そして、経営層はメンバーが変わっているか?
など自分の会社を外から客観的に見て、自分の行く先を考えてみて欲しいと思います。