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コロナ影響下、早期希望退職者の転職について

コロナ禍の中、予想されたように企業の倒産やリストラが発表されていますが、
中でも上場企業の早期希望退職者募集の流れは昨年を上回る勢いです。

2020年上半期(1-6月)上場企業「早期・希望退職」実施状況(東京商工リサーチ)

上半期発表の41社は昨年1年間を上回り、リーマンショックの影響があった2010年上半期以来10年ぶりの高水準で、募集人数も判明分だけで7千人を超える人数です。
7月に入って既に4社が公表しており下半期はより増えるでしょう。
アパレルや流通、外食・小売りなどコロナ禍の直接的影響が大きい業種はもちろんですが、それ以外にも、ITデジタル化の波、マーケットや顧客の価値観の変化を受け、本業が不振に陥っている企業が出てきています。

■シチズン時計、希望退職550人募集(日経)
■オリンパス、カメラ事業を売却へ 84年続いた歴史に幕(CNN)

いずれも、時計、カメラの歴史ある名門企業ですが、スマートウオッチ、スマートフォンの台頭により需要が減少。シチズンに至っては若者の時計離れも影響を受けています。
オリンパスは以前も全世界で大量のリストラ(2700名規模)を行っており事業再編を繰り返してきましたが、ついに売却と言う流れのようです。
レナウンもそうですが、そもそもの本業が時代に合わなくなる不振から、事業縮小、売却が加速し、結果的に大量の早期退職者の募集は増加していくと思われます。

一企業内専門家の転職は難しい

昨年の黒字リストラでもそうでしたが、早期希望退職の対象は相変わらず人経費の高い中高年層です。
特に「40歳以上の社員」対象が多く、企業側も再就職支援を打ち出しています。
再就職エージェントなどを活用し支援していくのでしょうが、中高年の就職はやはり厳しいと言うのが現実のようです。

今回話題になっている業種、アパレル、精密機器メーカー、自動車関連メーカー、外食・小売りで早期退職の対象となった中高年人材は長年の経験や知識の積み重ねがあり、その業界、業種、あるいは技術に精通した方が多と思います。
同業界内、同業種内でそれなりのポジションを用意すれば活躍できる知識やスキルを持った方も多いでしょう。

画像はイメージです。写真提供PIXTA

しかし言い方を変えれば、そこでしか通用しないものでもあります。いわゆる「一企業内の専門家」と言っても過言ではありません。

所属している業界、業種、企業が、マーケットの変化、ネットやデジタル化の影響を受け、じり貧になっている状況にあって、残念ながら同業界や同業種への転職、同じ仕事内容や給与などの同等の処遇の希望が通るはずがありません。
そもそも募集自体が無いでしょう。

金融業界がIT関連の技術者を募集し、大手百貨店が投資信託を販売し、県や市など公共がDX関連技術者を採用し始める現在、これからは求められる人材は同業の経験ではなく、他業界、他業種での知識・スキルのある人材です。

冷たい言い方ですが、発表した企業も再就職エージェントも、とにかく再就職させれば良い、どこかに入社さえさせれば良いという考えが多いのです。その後、どんな仕事をしているか、処遇になっているか、退社しているかなどは関心がありません。

今回対象となり、転職活動をされる方は、そのこと充分に踏まえて、他業界、他業種で活きる自分の知識・スキルは何なのかを考え幅広い視野で転職、転身を考えてもらえればと思います。
自分はどんな仕事が出来るのか。
一企業内で培った知識やスキルは他に転用できないものか。
一つに偏った専門的な知識やスキルではなく、それらの経験からくる自身の汎用性のあるポータブルスキルは何なのか。
そして足りないものを学ぶにはどうしたらいいか。

本業不振やコロナの影響での退職は、精神的にも辛いものがあるかと思います。
しかし、これからの自分の働き方を真剣に考える良い機会かもしれません。

【あとがき】
参議院議員の橋本聖子氏。彼女は冬のオリンピックでスピードスケート女子全種目の5種目に出場し、全ての種目で日本記録を更新し入賞を果たしたことで有名ですが、次の夏のオリンピックで自転車の代表選手として出場し、史上初めて冬・夏両方のオリンピックに出場する快挙を成し得ています。
全く違う競技でトップになれたのは、必要な下半身の筋肉、筋力の鍛え方が共通であったからだと言います。
まさにポータブルスキルの顕著な例だと思います。

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