前回「増える上場企業の早期希望退職」では、業績報告に合わせて早期希望退職者募集による人材のスリム化を株主総会で合わせて発表する企業も出てくるのではと予測しましたが、益々現実味を浴びてきました。
一連の新型コロナウィルス感染の影響から日本経済は停滞し、全く先が見えない状況において様々な業界で、業績不振、営業休止による解雇が始まっています。
特に、全労働者の4割を占める非正規社員への雇止めは顕著で、SNSなどで突然解雇された人々の嘆きが続出しています。
折しも働き方改革関連法での同一労働同一賃金が4月から中小企業でも始まり、重たい人件費などの課題を抱え雇止めや派遣切りを計画していた上に今回のコロナ騒動。
これからも非正規社員の方は益々厳しい状況になっていくと思われます。
大手企業は、営業自粛や自宅待機、テレワークなどが話題になる一方で、夏のボーナス減少など「それでも給料は出る、賞与がある」と羨ましい目で見られているところがあります。
中小企業と異なり、多額の内部留保などを持ち企業体力がある分だけ、不況、停滞期への強さあるのでしょうが、実は中小企業よりも深刻な局面を迎えています。
東京商工リサーチによる上場企業135社が3月期決算の業績見通しの下方修正の発表以外にも、この1週間のニュースの見出しを見ても
「日産11年ぶり最終赤字」「ソフトバンクG 最終赤字9000億」「ANA最終赤字587億、9500億調達へ」「三菱自動車3000億の融資要請」「三越伊勢丹、8年ぶり営業赤字」「大手商社丸紅が1900億円と過去最大の赤字見通し」「JR東海1~3月、純利益85%減」「デンソー前期、純利益73%減」「シャープ、賃上げ3カ月延期 業績悪化で7月」と業績の発表が連なり、
金融機関への融資案件でも「ソニー、トヨタ」などの大手を始め「リクルート、すかいらーく、日本ペイント、ブルボン」など有名企業が融資枠の増額要請をしています。
決算報告を延期する企業もあるので、これからも多くの大手企業が次々に公表していくでしょう。
仮に融資を受けたから大丈夫という事ではなく、これからの経営環境を見据えた業務の改革、人員体制についての見直しが急務となります。
ちなみに世界的に見ると、コロナ失業が止まらない米国でも「自動車のGMやマクドナルドの従業員の解雇」「ディズニーの10万人解雇」「クリーンエネルギー業界、50万人が失業か」など桁違いのニュースが出ていますが、業績不振でのレイオフが当然のように起きる欧米企業ならではです。
労基法で社員の雇用がある程度守られている日本はこれからどのように動くのでしょうか。
しわ寄せは中高年社員へ
業績悪化のしわ寄せは当然ながら社員にも被害が及びます。
コロナ失職の波は何も非正規社員だけではありません。
役員報酬、管理職の賃金カットやボーナス削減程度で止まれば良いのですが、多くの企業が今回の窮地を乗り切るにはそれだけでは済まないでしょう。
特に昨年より話題になっている黒字リストラの対象、高人件費が企業の重荷となっている中高年層に対してはコロナ影響による人員整理で当然のように早期希望退職者の募集が増加することでしょう。
人員削減、割増退職金などによる特別損失計上の話題も、以前のように企業イメージを下げることはなく逆に「生まれ変わろうとする良い企業」としてイメージがついてもおかしくありません。
リモートワークで仕事が浮き彫りになり、目に見える具体的成果を評価され、それでなくとも働き方改革の残業時間の上限規制などで、収入は減りながら部下の業務まで抱えている状態で、さらに早期希望退職者リスト入り。
近い将来、中高年社員にとってまさに窮地が訪れようとしています。
座して待つか、ピンチをチャンスと捉え、事前に何らか行動を起こすか、、、
人生100年、これからの長い仕事人生に向けて、今までのように会社に依存することなく、自らの働き方を前向きに考える良い機会だと思います。