早期・希望退職募集、業種の二極化
現在、コロナ禍における緊急事態宣言の解除や段階的緩和、ワクチン接種人口割合の上昇、国内観光客の一部復調、人数制限でのイベントの開催、そして東京オリンピック開催の話題などもあり、何となくですが、景気が少しずつ戻りつつある感じかしています。
実際に、日本銀行による6月の短観(全国企業短期経済観測調査)によると、海外経済の回復に伴う輸出の増加、円安継続を受け、大企業・製造業の景況感は大幅な改善が続くとの予測も出ています。
■景況感、大企業製造業は2年半ぶり高水準 短観民間予想(日本経済新聞)
そんな中、6月3日、上場企業の早期・希望退職募集人数が1万人を超えたと東京商工リサーチの調査で発表されました。
これは昨年の1万人越えより約3カ月早いペース(昨年は9月)で、募集した企業も昨年の同時期33社を大きく上回る50社ということです。このペースで行けば2009年リーマンショック同様の状況になるのではないでしょうか。
参照:■早期・希望退職募集、業種が二極化 (東京商工リサーチ)
調査発表の中で注目すべきは、二極化ということ。
発表にある二極化とは、新型コロナの影響により直接的、間接的に業績が低迷し赤字化した企業でのリストラが中心の業種(コロナリストラ)と黒字経営の中で経営構造改革のためのリストラ(黒字リストラ)を実施する業種に分かれているということです。
ご存知のように昨年春からの新型コロナウィルス感染の影響で、不要不急の外出を避けた自粛、巣ごもり、在宅勤務など人々の行動パターン、生活様式の大きな変化を受け、アパレル・繊維製品、サービス(観光)、運送、外食など新型コロナの影響が直撃した業種で募集が相次いでいます。
アパレルなどはコロナ以前から募集が頻繁に行われており、同様に年々経営環境、業績が悪化してきた電気機器などメーカーもここ3年で人員整理を行ってきています。
一方で、数年前より行われてきた黒字リストラも、昨年以降もやはり継続しており、特に製造業において進められています。自動車関連、電気機器など、黒字であっても経営の構造改革のもと人員整理、早期希望退職者募集が行われています。
コロナの影響を直に受ける赤字企業と、事業構造の見直しを行う製造業の二極化。
今後も、コロナが落ち着いたとしても、変化した生活様式などの影響もあり、外食、交通インフラ、観光関連などはまだまだ厳しい状況を強いられそうです。また延長、延長できている政府の雇用調整助成金の特例措置もいつまで継続するか解らず、雇用維持が重荷になるのは否めません。
そして黒字リストラに代表される製造業においても、収益強化の為の不採算事業、製造拠点の見直し、そして業務のIT化、DX導入による人員の再編成などまだまだ改革はつづくと思われます。
全体的には、コロナを機にこれまで遅々として進まなかった企業のデジタル化やIT化、DXなど技術革新への動きが急速に加速され、事業形態の見直しや業態の転換、商品・製品・サービスそのものの見直しが随時行われ、人材活用と再編成のもと、リストラは続いていくのだと思います。
自社はどうなのか
直接的、間接的にコロナの影響を受けていなくても、市況やマーケット、ユーザーのニーズがコロナを機に大きく変化していく中で、少ながらず自分の勤める会社はこれからどうなるかを考えていく必要はあります。会社依存の人生から、自分がある期間働く「場」としての会社の一つと言う考え方が重要です。
会社の経営状況だけでなく事業そのものに対し、例え現状は問題なくとも先々はどうなのか。
現在の会社で、新たなビジネス、多角化などがスタートしているのか。次の一手は議論されているか。
さらには、テレワーク、在宅勤務、副業解禁、週休3日、転勤の廃止といった「働き方の柔軟性」は検討されているか。
社内のペーパーレス化、デジタル化、DX導入や、サービスへのAI導入など進んでいるか。
そして何よりも、年功序列的な人事制度、等級制の見直しや、社員の年齢構成の是正は進んでいるか。
現在働く「場」としての自社はどうなのかを一度よく考えてください。
もし、「事業が利益が出ているから無理せず現状のままでいい。」「働き方改革、デジタル化は周りの企業、同業他社を見ながらゆっくり進めればいい。」といった感じなら危険かもしれません。何年か後に気づいた時には大変な事態に、、、と言う感じかもしれません。
巣ごもり需要で過去最高益を出したゲームメーカー
昨年大きく飛躍したネット物販会社
テレビCMで頻繁に露出しているビジネスクラウドの会社
コロナの影響でも業績が好調な多くの会社に共通しているのは、
働き方の柔軟性、多様性があり、業務はデジタル化され、独自の新たな人事制度を導入しており、何よりも好調な時こそ、強い危機感をもって、社員一人一人が次の一手を考え続けているのです。
残念ながら自社はそういう危機感が無い。危機感は煽るけど行動していない。
と感じているなら、皆さん自身が何らかの行動をする必要があるのかもしれません。
貴方を一生面倒見てくれる会社は無いのですから。