テレワーク 浸透しない現状
再度の緊急事態宣言を受けテレワーク7割を掲げていましたが、その実施率は伸びない状況のようです。
朝夕の通勤タイムはそれなりに電車も混雑しており、密を避け社員の健康を守るためのテレワーク推進はどこか形骸化しているのではと感じざるを得ません
テレワークと同時に進められた社内の衛生管理の徹底に関しても、職場の消毒や出社人数の制限、ソーシャルディスタンスを遵守したデスクの配置などに於いても、長期間に渡る疲労感や慣れもあり、緩んでいる企業も多いと聞きます。
そのような中、経団連が行った調査では、大手企業においてテレワーク実施率は9割となり、医療介護や交通機関の運転手などのエッセンシャルワーカーや製造現場従事者を除く職種においては約65%の出勤を軽減しています。
7割とはいきませんが、昨年の緊急事態宣言の経験から、徐々にテレワーク、在宅勤務に対する準備をしてきた企業が増えてきてたのは確かなようです。
一方の中小企業では、従業員30~99人の小規模企業のテレワーク導入率は半数以下(47%)と低く、未だ半数以上の企業がテレワークを一度も実施したことが無いという現状です。
実際に勤務する従業員からは、不満の声も数多く上がっており、設備投資、労務管理だけでなく、経営層、管理者層の意識が課題のところも多いようです。
企業は大小問わず、テレワーク導入に当たり課題となっている「非正規社員の出勤」「コミニュケーション」「設備、セキュリティ」そして「人事評価」、なによりも「経営層、管理者の意識」など、今後様々な形で解決していかなけば生き残れない時代になることでしょう。
テレワークの目的と個人の生産性
昨年、新型コロナウィルス感染の拡大で急に話題になったテレワークですが、もともとは2016年の働き方改革の目玉の一つとして発表されたものです。当時の社会問題でもあった「育児・介護」などを行う会社員の問題もあり、より働きやすい勤務制度の一つとして提案されました。
それが、本来の目的とは別に、コロナの影響で通勤時や会社での「蜜」を避けるための方策として一気に加速してきています。
コロナの影響で、世界中各国でもテレワーク、在宅勤務は急激に広がったのですが、欧米に比べ日本では特に「生産性が低くなる」と言う問題が多く指摘されています。完全ジョブ型の雇用が中心で、個人の専門性や職務、勤務時間を明確にし契約する欧米では、テレワークや在宅勤務にスムーズに移行できるのは当然かもしれません。
働き方改革の本丸は「個人の生産性の向上」です。テレワークもそれを目的としたものであり、出社とのベストミックスを実現する方向で導入されるものでした。
しかしチームで連携して仕事をしたり、足りない仕事をカバーしあったり、業務量過多による残業など、遅くまで長時間働くこと、みんなで仕事をすることを評価とし、職務をこなせるよう新人から育成する雇用システムを継続してきた日本型経営は、結果的に個人の業務の明確化、専門性、責任と裁量の範囲、成果評価などをおざなりにし、さらに年功序列型人事や終身雇用など、会社依存の自立できない多くの社員を生んできました。
そのような経営環境に於いてテレワークでコミニュケーションや評価が課題になるのは当然のことでしょうし、個々人の生産性の向上を図る事は至難の業かもしれません。
以前の記事「テレワーク 加速と二極化について」で紹介したように、実際にテレワークを上手く導入で来た企業の多くは、働き方改革の推進、ワークライフバランスの向上、業務生産性の向上、オフィスコストの削減、BCP(事業継続性)対策、リクルーティング対策と捉えています。
今後企業は、個人の職務、業務の明確化と共に責任の権限とその成果評価などを根本から見直し、従来の日本型経営、採用、人事制度を大幅に改革し、テレワーク、週休などの勤務制度に手を付けて行かなければなれませんし、実際にそういう動きが出てきています。
そして個人もまた特定の企業に長期依存することなく、ジョブ型雇用、テレワーク、地方移住など多様化する働き方を前提に、自身で専門性の向上、キャリア開発、キャリアチェンジを実現していくことを求められると思います。