上場企業全体の6割が減収減益
上場企業の2021年3月期の業績予想の開示が新型コロナウィルスの影響で遅れていましたが徐々に開示され、予想通り厳しいものになっています。
参照
■上場企業の純利益36%減、減収減益6割 21年3月期予想(日本経済新聞)
全体の落ち込みは、上場企業全体で赤字となったリーマン・ショック時の09年3月期以来となっています。
記事にあるように一部(2割)の企業を除き、8割の企業が、減益、減収となり、減収減益両方に至っては全体の6割を占めています。
増収増益の一部企業も、ステイホーム・外出自粛・リモートワーク等の影響からのものが多く、従来の事業計画通りの成長とは言えない部分もあるのではと思います。
これらを受け、多くの企業が今後「不採算事業からの撤退」「設備縮小や全体的コスト削減」など増益と企業体質の強化を目指し、抜本的な構造改革をいち早く進めることでしょう。
人材(人財)をどうするのか
不採算事業からの撤退、コスト削減となると必ず出てくるのが社員(人員)に関する問題です。
かつてのNEC、富士通のように何千人単位での早期退職希望者などを募集したり、損保ジャパンのように別事業へ配置転換をする企業も出てくるかもしれません。
一方で、「資金が続く限り、雇用は守る」と社長が宣言した全日空のように売上80%減少し厳しい経営状況の中でも、次のステージに取り組む企業も出てきています。
参照
■「会社はもつのか」 ANA・JAL、窮地脱却へ奔走(日本経済新聞)
いずれにしても、不採算事業の撤退だけでは解決にはならず、新規事業、新たな関連事業に取り組む方針です。
JALの赤坂社長も「需要の谷間の期間に余剰人員を上手く活用して航空以外の事業を作っていく」と語っており、窮余の策として仕事が減った客室乗務員を観光商品の開発部署などに希望制で配置転換しています。
しかしながら余剰人材の配置転換には様々な課題が生まれます。
欧米企業のように不採算事業人員を簡単にレイオフし、新規事業の為に別の人材を採用したり、新事業の会社を買収することが難しい日本では、全く違う業種やサービスに既存の人材を回さざるを得ない事情があります。
一般顧客向けサービス業に製造職、技術職の人材を登用したり、AIやITを活用した新たなデジタル化サービスにアナログな経験しかない社員を配置したり。
既存の事業の専門的知識はあるが新たな分野では全く知識もスキルも無い社員達をどのようにして戦力化していくかが重要になります。
そして単に研修をすれば良いという問題でもなく、仕事に取り組むマインドの醸成などカウンセリングが必要な社員も多く出て来ます。
不採算事業の撤退とコスト削減、そして構造改革はこれからの大きなテーマですが、その裏には既存社員の意識改革、新規事業でのいち早い戦力化が求められるのです。
企業に属しながらも、危機感を持って自己啓発や学びに取り組む社員をどれだけ生み出せるかが鍵となります。
働く社員側も、配置転換をある種の左遷として捉えるのか、自己のキャリアアップの為の新たなステージと捉えるかで、その後の働き甲斐も大きく変わるのではないでしょうか。